第141話 試験前 ~家から出れませんでした~
3回目のこの時期がやってきました。はい。試験の事です。
すでに前期の科目はほとんど講義を終了し。試験範囲などの発表もすでにされている。また、俺はレポート試験の科目はすでに終わらせてある。発表があってからすぐに海織とともに作成、印刷まで終えてレポートは提出の日を待っている状況。
その他の試験対策もほぼ終わっている。持ち込み可能な科目はノートを再度まとめたり。テキストは試験に出そうなところは探しやすくするために折り目や印をしたりした。
ちなみに持ち込み可能科目でも。テキストやレジュメが全てが持ち込めるわけではなく。一部科目では自筆ノートのみ持ち込み可能。という科目もあるので、そのような科目はテキスト、レジュメに書かれている文書や用語をノートにとにかく書き写すなどを数日前まではしていた。
していた。ということはすでに俺は終わっているということ。
あとすることといえば――持ち込み不可の科目の暗記くらい。
と、思っていたのだが、現在の俺は全く違うことをしている。しているではないか。させられていると言った方が正解か。
カキカキ……。
「あっ、ねえねえ海織ちゃん。今度は京都行こうよ。京都」
「いいねいいね。私は嵐山とかゆっくり見たいなー。修学旅行の時に行ったんだけどね。なんかバタバタしていたのしか覚えてなくてね」
「あー、確かに。私は社会見学?だったかな?それで京都は行ったんだけど、確か日帰りだったから。なんかあんまり覚えてないや。清水寺は覚えてるけど」
「ゆっくり見たいよねー」
「うんうん」
カキカキ……。
「あっ。この前楓くんと行ったここもよかったよ」
「そうなんだ。ふむふむ。私も連れて行ってもらわないと」
「楓くんは優しいからすぐ連れて行ってくれるよ」
――カキカキ……。
……そろそろ説明が必要だろう。まず現在の場所は俺の部屋。いつもより室内の人数が多い。正確にいえば、普段は1人……ではないか。週5くらいで海織が来るから……普段を2人とすると今はその倍。4人がこの部屋に居る。
そして4人のうちの2人。女の子2人はいつものお方です。はい。海織と斎宮さんは、先ほどから俺の後ろでおしゃべり中。本棚から時刻表など、俺の持っている本などを勝手に出し。いや、ダメとかではないのだが……ここのお2人さん俺のものは普通に使います。はい。まるで自分の家、部屋に居るようにくつろいでいる最近です。今後の予定だろうか。楽しそうにおしゃべりをしている。
うん。そういえばなんか久しぶりに時刻表が開かれているかもしれない。俺最近見てなかったからな。うん。
……えっ?残り2人は何をしているかって?先ほどから、音だけ入っていると思うが……こんな状態。
カキカキ……。
カキカキ……。
そろそろ腱鞘炎になるかな?とか思っているんだが。そんな簡単にはならないか。
現在男性陣は必死にノート作りをしている。試験の際に持ち込みができるノートに試験に出そうなところ。そして俺が講義中にメモしていたことを――誰かさんのほぼ新品のノートに書き写している。
「あっ、見てみて。かわいい。癒されるー。あー、ラッコ見たくなってきた」
「カピバラならすぐに見れるんだけどね」
「あー、だねー。着せるだけだもんね。でも……今は邪魔しちゃ悪いよ」
「楓君にそっと着せるとかもありだと思うよ?」
何か今後ろから変なことが聞こえた気がするのだが……気のせいだよね。うん。気のせい。俺は何も聞こえなかったから手を動かす。疲れた……。
「にしても柊。馬鹿でしょ。出席取らないからって、ほぼ先月講義出てないからノート白紙って」
「仕方ないだろ?七夕祭マジで大変だったんだから」
結構ガチで。というのだろうか。ここ2時間くらい俺のノートと、海織。斎宮さんのノートを見つつ。試験対策ノートを作っている柊が久しぶりに声を発した。この作業を開始してから本当に焦っていたのか。めっちゃ必死に柊はノートを写していたから久しぶりに声を聞いた気がする。
「にしてもなぜ一部講義は前半の講義もノートがほぼ白紙なのでしょうか……七夕祭ってそんなに前からバタバタしてたっけ?」
柊が顔をあげたので、俺は聞いてみる。
「ま、まあ、いろいろあったからな。でも、楓がほとんど一緒の講義で助かるわー」
「後でどんなお礼が来るのか楽しみにしとくよ」
えっと、どうやって説明すればいいのだろうか。とりあえず……試験発表があってからしばらくして――「楓!ノートヘルプ!」とかいう柊からのご連絡が来た。そして、七夕祭でバタバタしているのを知っていたから。そのあたりの1回2回の講義のノートが欲しいのかと思って、その時は「了解」と言ったのだが……。
現実はもっと大変だった。大学の講義は出席を取ってない科目も一部ある。つまり試験の結果がすべてという科目。たとえ講義に出てなくても試験がよければ単位ゲット。みたいな感じなのだが……まあ、普通の人は講義に出てノートをまとめていると思うが。何をどうしたら。はじめの1回2回しかノートが無いということが起こっているのか。俺ははじめわからなかった。うん。全くわからなかった。
結局「これはヤバイ。とにかくヤバイ」と柊が何度も言ってきたので、現在俺の部屋にて勉強会。違う。ノート作りの会が行われている。
ちなみに、海織は普段からこの部屋に居るからまあ居る。斎宮さんは柊が何かしているから付いてきた。という感じか。
海織と斎宮さんは部屋にはいるが手伝ってはいないため。先ほどから楽しそうにおしゃべりをしている。俺は……うん「1人じゃ間に合わん」言ってきた方がいたため……朝からノート写しを手伝っている。普通コピーしたらいいじゃん。って思うかもしれないが。試験の時の決まりみたいなところに。自筆ノートのみ。って書いてあることが多いので――チェックしているのかは知らないが……まあそのため、俺が書くのを手伝っている。
個人的には覚えるのには良いかと。とかはじめは思っていたのだが……うん。結構腕がしんどい。
「あっ、見てみて、ひつまぶし。あっ、手羽先も美味しそう」
そして後ろのお2人さんは、時刻表やら何かを見つつ。先ほどから美味しそうな話をしてくるので……うん。お腹も空きます。
ちなみに、斎宮さんは試験対策ばっちりとか言っていました。はい。
「食べ物の写真見ていると、お腹空いてくるね。あっ、そうだ。お昼何がいいかな?」
「おっ、海織ちゃんが作ってくれるの?」
「うん。楓君忙しそうだからね」
「……ホント忙しいです。まだ半分以上あるんだけど――」
「楓ー!俺は……疲れた」
「おい。休むな。誰のノートだよ」
その後、海織がお昼ご飯を作ってくれて4人で食べる。昼食後も俺と柊は必死にノート作り。女の子2人は途中仲良くお昼寝をしていました。うん。とても差が激しい部屋の中でした。
……何とかその日のうちには終わったのだが……うん。お助けってめっちゃ大変。はい。腕が痛い。けど復習した感じになったから良しかな。とか思いつつ。夜、柊と斎宮さんを見送った俺と海織でした。
……うん?海織が残っている?これが普通ですよ。はい。あまりね「そろそろ帰ろうね?」みたいな感じに言うと……海織が何故か積極的にくっついてくる。ということを最近はよくしてきましてね……はい。こっちも大変なんですよ。
とりあえず試験前のとある1日でした。
あっ、今日は部屋から出ませんでしたね。はい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます