第136話 七夕祭5 ~追加のお仕事~

夕方。七夕祭はまだ盛り上がっているみたい。何やらこの後、少しだが花火も打ちあがるとか……何というかすごい。まあ場所だけはあるからな。高校のグラウンドとかもあるし。打ち上げる場所は困らないのかもしれない。


そして夕方になったからか、少し人が減った気もするが。まだ屋台とかステージの近くは人混みが結構あったが。


そして現在の俺はというと……。


「楓くん楓くん。海織ちゃんが消えた!」

「消えはしないと思うけど……この人だとね。どこ行ったんだろう?」

「海織ちゃん!どこ行っちゃったのー」


現在俺と斎宮さん――迷子。ではないが。海織とはぐれていた。


少し前に難波先輩より「おつかれー。ちょっと落ち着いたら一度食堂に来てくれないか?」という電話が来た。そして受付をある程度片付けてから、海織、斎宮さんとともに。会場に入ったのだが……すぐに海織が消えた。


――。


はい、今になりました。


「ほんとどこ行ったんだ?」


周りを見ても人、人、人。浴衣を着ている人も結構増えたので……さすがに目立つ海織もここでは……ちょっと目立たない様子。


「楓くーん。潰れーる。助けてー」


そして俺の後ろを歩いていた斎宮さんからの悲鳴もあり。とりあえず斎宮さんとともに、ステージ、屋台のある通りからは外れた。にしても――こんなに人が居たのか。


――すると。


「楓君!沙夜ちゃん!」

「あっ、海織ちゃん発見!」

「おー、楓。お疲れー。おお。沙夜も浴衣じゃん」

「あっ柊。居たんだ」

「居るよ。朝から俺もここに居るから!」

「朝から全然見ないから、楓くんにまかせてどっか行ってるのかと思ったよー」

「ずっと、笹の下に居たよ!」

「笹?」


俺が聞いてみると、どうやら柊は俺がパンフレットとともに渡していた短冊を飾る笹のところに居たらしいが。あまりに多くの人が来たため。開始して2時間もしないうちに準備した笹が短冊だらけ。これはヤバイ。ということで、笹を提供してもらった地域の人の家に、数人で再度笹をもらいに行っていたらしい。そりゃ交代来れないか。


「さっきね。白塚君がちらっと見えたから、捕まえに行ったんだよ」

「海織、よくこの中で見つけれたね」

「でしょ」


ということで4人が揃ったが。俺は難波先輩に食堂の方に来るように呼ばれている。


「柊は難波先輩に呼ばれてる?」

「いや、今はちょっと休憩中。昼も食べれなかったからな」

「そりゃ、お疲れ様。じゃ、とりあえず俺は難波先輩に呼ばれてるから。行かないとかな」

「あっ、そうだね。楓君行かないと。私は沙夜ちゃんたちと居るから」

「ごめん、じゃ行ってくるよ」


俺はそう言い。4人揃ったのもつかの間。すぐに1人で食堂の方に向かった。って、食堂まで行くのがかなり大変だった。屋台のところを通らないといけないのと。ステージの近くも通るため。人混みでなかなか前に進めない。結局大回りをして、駐車場側から食堂へと向かった俺だった。


「……お疲れ様です」


食堂に入ってみると……昨日一緒にパンフレットの準備をしていた学生が――伸びていた。つまり休憩中だ。


そしてその奥で、めっちゃ何かをしている難波先輩が居た。そして俺が声をかけるより前に難波先輩が俺の事に気が付いた。


「おー、加茂。待ってたぞー。受付ありがとうな。でだ。悪いがもう1ついいか?」

「はい。何でしょうか?」

「今もしてもらっていると思うが。受付のところでゴミ回収してるだろ?」

「はい。一応箱置いて、一定時間ごとにゴミは回収して運んでますが――」

「多分な。終わりに近づくともっと増えると思うんだよ。だから、悪いんだが。やっぱりもうしばらく。というか。お客さんが帰るまで受付で……立っていてもらうことできないか?」

「あ、いいですよ」

「いいのか?お前あれだろ。彼女さんも来てるんだろ?さっきここに来たやつが言ってたんだが。全く一緒に回ってないんじゃないか?っかあの受付に居たのが彼女とかマジか?」

「まあ……事実ですが。はい。大丈夫です、多分今頃友人と回ってますから」

「なんか悪いな。ホント。それに雑用ばかりで悪い。祭りが終わったら集まりもあるからそっちにはみんなで来てくれよ」


どうやら、俺と海織の話がここまで広がっていた様子……なんでこんなに広がっているのだろうか……。


「えっと……じゃ、とりあえず、受付に居たらいいんですよね?ゴミ回収しつつ」

「そうだ。ホント悪い。人が足りなくてな。がははは」


ということで、俺は七夕祭を楽しむ……というのは無くなり。再度受付に戻ることになりました。って、受付に戻ったらゴミ箱があふれていた……これはこれで、大変そうです。


ちなみに海織へはちゃんとメッセージを入れておいた。今のところ斎宮さんと楽しんでいるみたいで返事はなかったが。


俺はとりあえずあふれているゴミ箱を何とかするって――うん。食べ物のごみは……ベタベタですね。はい。先ほど先輩がゴム手袋をくれた理由がわかりました。とても助かります。


まあ掃除が嫌いではない俺。パパっと。あふれているゴミを片付ける。そして帰っていく人がゴミを捨てやすいように。テントに畳んで置いてあったパンフレットが入っていた段ボールを再度組み立て。とりあえず袋をかぶせる。今のところ見ていると可燃ゴミとペットボトルがほとんどだったので、可燃ゴミとペットボトルと箱に書いて。捨てやすいようにしてみた。すると……うん。皆さんちゃんと分けてくれるので。いい感じ。でもかさばるゴミが多いので、すぐに可燃ゴミ。ペットボトルともにあふれるため。段ボールゴミ箱をさらに追加した。


そしてその後も俺は様子を見つつ。ある程度ゴミが溜まると袋を交換。テントの裏にゴミ袋を積んでいった。


♪♪


すると俺のスマホが鳴る。ゴム手袋を外して、確認してみると。


「沙夜ちゃんとお祭り楽しんでます。楓君。お手伝い頑張ってね」


海織からのメッセージの返事と素麺食べている柊と斎宮さんの写真が送られてきていた。うん、よかったちゃんと楽しんでくれているみたいで。って、柊よ。こっち手伝ってほしいかも。とか思いつつ。帰っていく人に「ゴミはこちらにお願いします」と、言いつつゴミ回収をしている俺だった。

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