第81話 春休み2 ~07時59分発大阪難波行き特急~

「おはよう。宮町さん。今日すごく気合入っているというか――いつも以上におしゃれというか。なんか俺普通でごめんなさいというか……」

「そんなのことないよ?私普通だと思うけど?」


そんなことを言いながら自分の服装を確認する宮町さん。

いやいや、そのめっちゃ似合っていると思います。はい。


「そして、泊りでの旅行の割には宮町さん荷物が少ないというか。コンパクトにしてきたね」

「動きやすいように極力荷物は減らしたかな?この鞄もリュックにもできるから荷物が増えた時に便利なんだよ?」


手に持っている鞄を前に出す宮町さん。ホント泊りなのにコンパクト……。


「あっ、ちなみに俺の持ってる鞄も。一応紐を変えたらリュックにもなるっての持ってきたけど……リュックで使ったことないんだよな……できるかな?」

「おー。さすが楓君合いますねー」


近寄ってきて俺の鞄見ている宮町さん、いやいや、そんなに見てもまだリュックには変えませんよ?


「合いますねー。っていうか。まあ。うん。とりあえす、全体的に今日の宮町さんすごいね」

「すごいって。なんか変な楓君。まあほら、もうすぐ電車来るからえっと……何号車だっけ?」

「えっと。先頭だったと……」


そんなこと話しながら、事前に買っておいた特急券に書かれている車両の停止位置に2人で移動する。


あと――触れようか悩んだのだが。宮町さんはなぜかすでに。俺の横にぴったりとくっついて、腕になんか捕まっています。


――そういえば「これはデートだよ。楓君。そう。体験たくさんしたから試験みたいな?」だったかな。なんか謎なことを言っていたような……ちょっと急に言い出した感じだったから何言ってるんだろう?って感じで、はじめちゃんと聞いてなかったんだけど……あっそうか。だから服装を褒めた……?のかなさっきの俺。感想は言った気がするが。ってあれはどうだったんだろうか。もしかして試験だとか言っていたから……採点に入ってる?もっとちゃんと褒めとかないとご機嫌斜めになる?とかなんか思っていると。


「あっ、楓君朝ご飯だけど。とりあえず売っていたの適当に買ったから。あとで好きな物選んで。あっ、飲み物は紅茶で良かった?両方紅茶にしちゃった」

「飲み物は大丈夫。ごめん、なんか買ってきてもらって」

「いいのいいの。こっちは私担当だから」


紙袋を持っている宮町さん。昨日話している時に出発がこの時間だから「朝ご飯どうしようかなー」という感じに多分俺がつぶやいたら「あっ。私早く着くから。駅のところの喫茶店だっけ?カフェ?で買っておくよ」と言ってきたので。その言葉に甘えました。はい。


少しして、近鉄四日市07時59分発の大阪難波行きの特急。アーバンライナーが入って来た。


朝だからか結構人が乗る。宮町さんが前を歩いて――。


「あっ。楓君ここだよ」


宮町さんが先に座席に入っていく。

俺もそれに続くように入って座る。周りを見るとそれなりに席は埋まっていた。


「事前に特急券買っておいて正解だったかな?」

「だね。やっぱり朝は結構混むからね。それにこの電車なら大阪に10時くらいかな?には着くからね。観光とかでもちょうどよさそうな時間だから」

「私たちは途中で降りちゃうけどね」


話していると。四日市駅を電車が出発した。

すると少しして宮町さんが――。


「あっ。そうか」

「どうしたの?」

「いや、席が海側だから。楓君が好きな大楠が見にくいなー。って」

「ホントよく気が付くというか。宮町さん覚えているよね」

「去年お正月に近く行っただけになっちゃったよね。楓君あれから行った?」

「行ってないかな。電車からは見た気がするけど……行くとなるとな。定期区間内とかなら行きやすい感じがするんだけどね」

「って、楓君今通過中だよ」

「えっ?」


と、宮町さんに言われて振り向くと、ちょうど大く……。


「ありゃー。電車」


宮町さんが言ったように名古屋方面の電車とすれ違う。すれ違うとまた少しは見えたが。すぐに見えなくなった。


「……こうやってあっという間だからね」

「春休み中に行こうか。まだまだ休みはあるからね」

「……宮町さんどんどん予定考えてくるね」

「もちろん。年末年始は風邪でダウンしちゃったからね――」

「こちらもですが」

「まあ、でもああいうのもたまにはありだよ。楓君。まずはこの4日間楽しもう」


楽しそうな宮町さんです。はい。そして、特急の座席はテーブルがあるので、テーブルを出す。すると隣で。


「あっ、おしぼりもらわなかったかも」

「じゃ、持ってくるよ。多分洗面所のところにあるから」

「ごめん。ありがとう。楓君」


俺は出したテーブルを一度戻して立ち上がる。揺れる車内の中をデッキの方に移動する。近鉄の特急列車には入り口付近や洗面所のところにおしぼりがあるので、2つもらってくる。って、ちょっと柄が変わった?と、思いつつ。席に戻る。


「はい。宮町さん」

「ありがとー。便利だよね。車内で普通におしぼりが置いてあるって」

「だね。一応自販機もあるし。あー。今はどうだっけ?前は車内販売している特急車両もあった気がするけど。今日乗る観光特急以外にも」

「時刻表に書いてあった気がする……どこかのページでそんなこと書いてあったような……えっと」

「宮町さんがいつの間にか時刻表をめっちゃ読んでるというのか。見てるよね」

「なんか楽しいよ?いろいろ書いてあって。これは楓君のおかげだね。時刻表を持っていた」


などと話している間に電車は津駅に到着した。


「もう津駅だね。話してるとあっという間だね」

「まだ20分くらいだけど、特急だとなんかどんどん移動している感じだね。って忘れてた。朝ご飯食べようか」

「あっ。そうだね。そのためにおしぼり取ってきてもらったんだよね」


それから車内で朝ご飯。宮町さんが買ってきてくれたのは――紅茶と。一口大のサンドイッチが入っているパックだった。選んでというのは中身がいろいろあったから。


「こういう物の方が食べやすいかなー。って」

「だね。車内だとこういうの便利だね。食べやすいし」

「楓君何食べる?私まずたまごもらいまーす」

「じゃ、ツナもらおうかな」


それぞれが食べたいものを食べていく。


なんか今のところは平和です。本当に普通にお出かけの移動中でのんびりしているという感じで。まあ、車内は結構人が乗っていたので、ざわざわとしていたが。まあそこまで気にはならなかった。というか、ここ2人もずっと話していると思うので。


「このあたりからトンネル多いよね」

「結構長いトンネルがあるからね。だから1人だと寝てる区間かな」

「私が眠くないから。今日は寝るの禁止だよ?寝たらこうやって起こすから」

「ちょ、くすぐったい。って、いやいや、寝るとは言ってません。はい」


宮町さんがなんか横腹を突っついてきます。これはなに?寝るなと?いやいや寝ませんから。ホント。くすぐったいです。


そんな感じで外見ながら、あーだこーだ話しつつ。名張駅を出発すると。


「あっ。そうかこの特急は沙夜ちゃんの実家がある駅は止まらないんだよね」

「そうだね。名古屋からの電車は。基本とまらないかな?榛原には」

「また遊びに行きたいなー。おばあちゃんも来てって言ってたし」

「うん?それは――斎宮さん経由で?」

「えっ?違うよ?おばあちゃんから直接、メッセージ交換してあるから」

「……なるほど」


今ってホントみんなと言っていいくらい。スマホとか使いこなしてますね。はい。すごい。っか宮町さんがどんどん交友関係?広めている。


「楓君は沙夜ちゃんのおじいちゃんとまたオセロじゃないかな?」

「ははは……前は結構したからな」

「今度は何か楓君が持って行ってみたら?」

「え?えっと、遊びを?」

「そうそう。トランプとかでもいいかもよ?みんなでできるし」

「なるほど」


などと話しているうちに乗換駅。大和八木駅に09時22分到着した。


「到着っと。えっと、下のホームだっけ?」

「そうそう。橿原方面」

「よし。行くよ楓君」


電車から降りると今度は自然と手を握って来た宮町さんに引っ張られていく俺。宮町さん。急がなくても乗り換え時間まだあります。ありますから。って結構しっかりと握られています。はい。俺逃げると思われているのだろうか……と、思いつつ宮町さんに追いつく。俺がちゃんと隣を歩くと――。


「うん。よろしい」


と、教官が居ました。 

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