第43話 約束 ~19時58分着自宅~

「いやー、驚いた、驚いたー。危うく。海織ちゃんに誤解を与えるところでしたー」

「……いや、その。こっちの心臓の方が、やばかったのですが……」

「あれ?もしかして、楓くんの初、抱き着き?私がもらっちゃったとか?」

「そんな、たいそうなことでは、ないと思うけど……経験はないかと……」

「ありゃ。海織ちゃん。海織ちゃん。今、抱き着いといたら?私のノーカンだから」

「気にしないよ?って、抱き着かないよ?いきなりで、ちょっと驚いたけど」

「いや、あれは、事故です。ほんと。だってー、海織ちゃんと思ったら、楓くんだったんだもん」

「まあ――私が原因なのかな?」

「……そうだと、思うけど……やろう。言ったのは、宮町さんです」

「だね。なんか2人ともごめんね」


数分前の出来事。宮町さんが、なかなか起きてこない斎宮さんに対して、ちょっとドッキリで起こそう。とか言い出し「普通に、起こしてあげようよ」と俺は言ったのだが――聞いてもらえず。


仕方なく。宮町さんに言われるがまま。ベットで、丸まったままの、斎宮さんのところへ、2人で行き。俺が斎宮さんの肩をたたく。そして声は宮町さん。って、前に、柊のところ行った時も、斎宮さんとも、こういうのした気がするが……なんか流行っているのだろうか?この2人の中で。と俺は思いつつ。やってみました。


すると、斎宮さんの反応は「うー……まだ眠いー、あと少し……」と、いう声。で、普通は、そのあとは、布団に、もぐるなどが考えられるのだが……何故か、斎宮さんはそのあと。


「眠いけど――海織ちゃんゲット!」


とか、言いながら。急に起き上がり。これは、寝ぼけていたのだろうか……まあ、結果。斎宮さんは、そのまま俺に抱きつく形になりました。結構しっかりと。捕まりました。はい。確保されました。俺が――。


「ちょ!?えっ――!?」


さすがに、俺の横で声のみ担当をしていた宮町さんも驚いていたみたい。だが、俺が、一番驚く。うん。何が起こった!?とね。声も出なかったし。

そして、斎宮さんも異変にはすぐ気が付いたらしく――。


「あれ?海織ちゃんにしては――しっかりした身体……って」


そこで、結構近い位置に宮町さんの顔……下から、見上げられるというのは――なかなか。ドキッとしますね。はい。


「わっ!?。か、楓くん!?ごめん。海織ちゃんの声がしたから……てっきり起こしに来てくれたの、海織ち――って、海織ちゃんも隣にいるー!」


なんか、そんなことが、ありました。ご近所さん。声が響いていたら、すみません。


それから、宮町さんVS斎宮さんの大バトルーーみたいなことはもちろんなく。


斎宮さんが「……抱きつきなおして、おこうかな?」と、俺から離れ、後ろにいた宮町さんに抱き着いていました。なんか、楽しそうな女の子2人の光景見ました。


それから、宮町さんが「沙夜ちゃん、寝起きだけど、すき焼きどうかな……?食べる?」と、聞くと、キラン。と、いう効果音がありそうな感じに斎宮さんがピースサインして「お肉!起きるから。ちょっと待ってて!」と、言うので――。


俺と、宮町さんはリビングへ移動。なんか、寝室の方と、洗面所側でバタバタしている感じはあったが――しばらくしたら「OK!お肉ー」と、斎宮さんやってきました。

斎宮さんが準備できる時間がわかっていたのか。宮町さんは、そのタイミングとほぼ同じくらいに、いいすき焼きの香りを、リビングに充満させていた。


「お肉ー!海織ちゃん食べていいの?良いお肉に見えるけど」

「うん、量はあまりないけどね」

「いやいや、十分。においだけでも、ご飯食べれそう。って、海織ちゃんホント、なんでも、作れるね」

「確かに、宮町さん、なんでも作れるよね。見てたけど、レシピとか見てないよね?」

「2人ともー、褒めてもお肉増えないからね?」


そんなこんなで、すき焼きに、ありつけました。

っか、ホント、香りだけでご飯食べれそう……だった。


「卵は、大切だねー。すき焼きには、必須」

「うん。お肉と、卵合うからね。まあ、1人だと、すき焼きしないから、久しぶりかな」

「あ、確かに、海織ちゃんのおかげで、豪華なお正月だよ、ほんと」

「よかった。お肉来たけどどうしようかなー。って思ってたんだよね」

「っか、ホント、お金払わなくていい?なんかもらってばかりのような……」

「いいよいいよ、私が買ったんじゃないからね。余るより全然いいよ」

「もしかして、海織ちゃんのママさん。こうなることを予想して……」

「それは――ないと、思うけどね」

「いやー、わからないよ?海織ちゃんが、1人だからって、お正月に、楓君を連行するまで、予想済みとか」

「だ、だから……連行って」


女の子2人は、何か盛り上がっていますが。話しつつも、箸が止まることはなく。お肉が消え、鍋も空に。ごちそうさまでした。

片付けは、食べてばかりの客人2名。斎宮さんと、俺で片付けました。


「あー、ずっと、お正月ならいいな」

「食べて、寝て、になりそうだけどね」

「ほんと、あー、太る」

「いや、斎宮さんも十分細いから」

「ダメダメ、すぐお肉になるから」

「……そうかな?」

「そうだよー」


と、斎宮さんと、片付けながら話していると。


「楽しそうだね2人とも」

「な、海織ちゃんの彼氏さん取ったりしてないからね?誤解のないように」

「あの、誰のこと言ってる?」

「楓くん」

「いやいや、付き合ってないからね?」

「そうだよー、沙夜ちゃん。仲良しなだけだよ」

「いやいや、夫婦でしょ」

「違いますが……」

「見てるこっちが幸せになるよ?」

「沙夜ちゃーん?」

「えへへー」


まあ、なんか楽しく?時間は過ぎていきました。

そして、夜。


「長い間、お邪魔しました」

「今日も、泊ってもよかったのに、2人とも」

「いや、さすがにね。宮町さんも、ゆっくりしないと」

「美味しいご飯がなくなるのは寂しいけど……あまり2人の仲を邪魔するとね。って、楓くんは残ったら?」

「俺も連行されてきて、家ほったらかしだから。帰ります。はい」

「楓君も連行って言ってる……まあ、そうだけどね。じゃ、また来てね。気を付けて」

「うん。じゃ、またねー。海織ちゃん」

「お邪魔しました」


俺と斎宮さんは宮町さんところから自分の家へと帰るということになった。

うん。やっとというのか。かなり長い間宮町さんのところにいた気がする。楠駅。19時34分の名古屋行き普通に乗り近鉄四日市へ。現在その車内。


「あー、楽しいのは、あっという間だね」

「まあ、そうだよね」

「楓くんは、もう1泊。それか、ずっといたらいいのに」

「斎宮さん、俺のことなんだと思ってる?」

「海織ちゃんの旦那」

「違うから」

「周りが、見たらそう見えると、思うけど?で、私は――ちょっかい出す友人?」

「楽しそうだね。斎宮さん」

「うん。でも、今回は、邪魔してごめんね?」

「いや、邪魔って。そんなことないから」

「でも、絶対、海織ちゃんは、2人で、過ごしたかったんだよ」

「いや……そんなこと」

「あるよー。お詫びしないとね……あ、そうだそうだ。思い出した」

「うん?」

「楓くん、夏に、言ってたこと覚えてる?」

「—―夏?」


何の事だ?と考える俺。うん、パッと浮かぶことは……だった。


「そう、夏」

「いや……何のことでしょうか」

「水族館見たじゃん」

「水族館……水族館……あー、もしかして、これも、連行されて行った。賢島かしこじまとかの、時のことでしょうか?」


うん、ちょっと記憶が蘇って来た俺だった。


「そうそう、で、帰りに、水族館あったじゃん。春休みに、なったら、あそこ4人で行こうよ」

「いいと思うけど……なんで、2人がいない時に?」

「ドッキリ作戦的な」

「……普通にしようよ。みんなで計画とか」

「私は、柊を連行するでしょ。で、楓くんは、海織ちゃん連行するの。2人には、行先秘密で」

「計画も、楽しみという言葉は――」

「秘密が楽しいんだよ。で、楓くんに、お得意のダイヤ計画してほしいんだ」

「それこそ、みんなで合わせて――」

「シークレットシークレット。楓くんが、時間ある程度組んでー。2人に、この日のこの時間帯空けて、って、言って、連行するの」

「連行……好きだね」

「楽しいことは、大好きだよ?だから、楓くん。ちょっとそのうちでいいから、調べてくれない。あっ。朝は、ゆっくりがいいかなー。あ、でも、私この前乗った、伊勢志摩ライナー。また、乗りたいなー。あー、でも、出来れば、泊りで、温泉……いや、大浴場あるところとかも……」

「—―斎宮さん。注文多くない?まあ、一応、ざっとは、そのうち見とくけど」

「うん。お願い」


19時47分電車は、近鉄四日市到着。

ちょっと急ぎの乗り換えで――19時50分の湯の山温泉行の普通電車に乗り換え。19時58分。斎宮さんと車内で別れ、俺は1人で伊勢川島駅へと降り立つ。その後はいつもの道を歩いて――自分の家へと到着したのだった。


――1人は……落ち着く。

というか――やっぱり、1人の時間も大切。宮町さんたちといる時も、居心地が悪いとかは全くないが。1人のこの居心地は、これは、これで、いいものがある。っか、このまま寝れそう――。

いろいろあった、2日間。たった、2日間だったはずなんだが。いろいろありました。ほんと。そして、寝ます。おやすみなさい。


あ、宮町さんに、無事着いた事だけ連絡して、寝ます。はい。

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