第5話 駅前 ~18時32分着の帰宅~
大学終わり。4人で歩きながら大学の最寄駅へと向かい。予定通り15時59分発の電車に余裕で乗れる時間に駅には到着した。
「ところで、楓と宮町さんはどの駅?俺と沙夜は菰野なんだけど」
「えっと、俺は最寄り駅は川島だけど」
「私は楠だよ」
「楠?川島は聞いたことあるけど。楠?わからん。楓ー、説明を求」
柊から俺に話が回ってくる。なんか鉄道関係のことは俺に聞いたらわかる。という認識になったのだろうか。うん。多分そんな気がする。斎宮さんと宮町さんも…。なんかそんな感じなのか。笑顔でこっち見ているし…。ということで。
「楠はこの路線の終点から。乗り換えたところ。大阪方面へ。かな」
「正解ー。さすが加茂さん」
と、パチパチと宮町さん。なんだろう褒められたというのか。ちょっと恥ずかしい気もした。
「じゃ、どっかで食べるなら。やっぱり四日市まで出た方がいいかな?でも定期区間外だしなー」
と斎宮さんがスマホ見ながら言う。何かお店でも検索しているのだろうか。と俺が思っていると……。
「この駅名前に温泉ついてるけど、山の方だよな。そういうところあるのは」
と柊は山の方を見る。
そう、大学の最寄り駅なのだが。駅名は、湯の山温泉駅。どうしてこんなところに大学を作ったのか……とか初めは思っていたが。
駅前が温泉街ではないらしく。少し山の方へと行ったところに温泉街があるらしく。その最寄り駅でそういう名前らしい。
なので大学生のちょっと帰りに寄り道……というところではないかと思うが。そのうち一度くらいはどんなところかちゃんと見てみたいものだ。とか俺は思っていた。
せっかく大学近くにこのような場所があるのでね。
すると、斎宮さんがスマホの画面見せながら。
「じゃ、菰野駅の近くにパン屋さんあるみたいだからそこ行こうよ。私気になってて一度行ってみたかったんだー。どう?」
と、スマホの画面にパン屋らしき画像。店内飲食スペースありなど書かれていた。
「あっ、かわいいお店」
「でしょでしょ」
と、宮町さんが斎宮さんのスマホ画面をのぞき込んで言っている。まあこの雰囲気は……どうやら女の子2人の意見で決定しそうな感じだった。
俺が柊の方を見ると……多分同じ考えだったのか「付いて行くのが無難だな」と言っていた。
それから俺たち4人は湯の山温泉駅に入ってきたいつも通りの赤と白の3両編成の電車に乗り込んだ。
ちなみにこの路線は3両固定なのか。3両編成以外は見たことがない。
それから数分電車に揺られ……俺は初めての駅に降りた。
菰野駅に到着したのは16時過ぎの学生の帰り時間。ということもあってか。多くはないが何人か駅前を歩いていた。
駅に着いた俺たちは……。
「こっちだって」
斎宮さん先頭で駅の小さなロータリー抜けて歩いていくと……。
「あっ、俺と沙夜のアパートそれなんだよ」
と唐突に柊が言いだした。そして柊の指さす先には……うん。普通のアパートがあった。
っか。俺はそもそも、聞きたいこともあったので……。
「えっと……柊と斎宮さんは一緒のアパート?」
と、聞いてみると。ってか。宮町さんも気になっていたのか。俺が聞いたすぐ後に付け加えるように……。
「もしかして2人仲いいなと思ってたけど、一緒に住んでるの?」
とちょっと興味ありげに。宮町さんは2人の関係を聞いていた。まあ俺も2人の関係は気になっていたが……まあ聞けてなかったので。ちょっと助かった。とか思っていた。いや、なんかわからないままって。いやというか。まあ気になるからね。
すると斎宮さんが笑いながら……。
「海織ちゃん。やめてよー。一緒に住んでないから。たまたま私が3階。柊がストーカーなんだよ」
「おい。なんか傷つく言葉が聞こえた気がするが……ちなみに俺はそこの1階」
「なんかストーカーでしょ?柊って」
と、肩をすくめる斎宮さん。
「ちょちょ、沙夜。俺の印象が悪くなるから」
「まあ、たまたま一緒で、話しやすかったから。もうお友達?みたいなのかなー」
「勝手にまとめるなよ」
やらやら、短期間でもいろいろあったのだろう。多分。と俺は思っておくことにした。
そんな2人の話を聞いていると。
「あっ、あれじゃないかな?」
といつの間にか目的地に到着していたらしい。
目的地のお店に入ると……。
「おいしそー」
「香りだけでおなかすくね」
お店に入ってすぐ。トレイとトングを持った女の子2人が楽しそうにパンを選んでいる。
ちなみに俺はとりあえず飲み物と、おすすめとか書かれていたパンを選んだ。
すると柊もささっと商品を選び会計を済ませ席の方へとやってきた。
「あの2人、まだかかるかな」
どうやら女の子2人はパン選びに夢中らしい。
「男2人で何話そうか?」
「えっ?。あー。うん、そうしようか。で何を話すか…。」
「そうだなー……」
と、男2人でそんなに話が盛り上がることはないので……2人が来るまで、今日の各自の受けた講義のことを話すくらいだった。
俺と柊がなんか特に面白くもない普通の今日の出来事の会話をしていると……。
「おまたせー」
「ごめんね。時間かかって」
斎宮さん、宮町さん席の方へとやってきた。
そこからは、突然というのかにぎやかというのか。それぞれのこと話すみたいな感じで、あっという間に時間が過ぎていった。
っかあれだな。女の子が入ると話が盛り上がったというか。男のみの時と明らかに雰囲気が変わったな。うん。
ちなみに俺はというと……はじめは、なんか来ちゃったが。どうなるんだ?とか思っていたが。後半からそれなりに会話にも入れ。楽しいおしゃべり?みたいな時間だった。
それから2時間くらいいただろうか?俺たちはパン屋さんを後にした。
「いやー、話した話したー。また話そうねー」
「うん。楽しかった」
今は俺の前を斎宮さん。宮町さんが歩いている。っか。すぐ仲良くなるんだな。とか思いながら後ろをついていくと……。
「そうだ、楓。楓」
「うん?」
柊が話しかけてきた。
「楓はサークル入るのかなー。って思って」
「あー。うーん。今は……入らないかな?」
「そっかー。じゃあサークルめぐりは……沙夜入るかな?宮町さんはどうなんだろう」
と、柊はしばらく俺の隣でぶつぶつといっていた。そういえばちょくちょくサークルの話を出している柊。何か入りたいサークルとか興味があるのあるのかと思っていると……。
「じゃ。またねー。海織ちゃん」
と前から斎宮さんの声がした。
そうか、柊と斎宮さんはここが家か。と俺が思っていると……。
「もう着いたか。じゃ。楓に宮町さん。また明日。あ、楓サークル行く気になったら言ってくれよ。一緒に行こう」
「あ、うん。まあ気が変わればね」
柊が別れ際にそんなことを言ってきたので一応答えたが……うん。本当に今日はいろいろな経験をする日だ。本当に。と俺は思っていた。
こんないきなり誰かと大学終わりに寄り道というのか。お店に来て話して帰るという未来は入学式の時には予想していなかったからな。いきなりなんか世界が変わったというか。ちょっとしたきっかけ?で変わったのだった。
……。
……。
……。
あれ?ちょっと待て。柊と斎宮さんさんがいなくなったら、この後はどうなるんだ?確か今は4人で歩いていて…。4引く2は……2じゃないか?と俺が思っていると……。
「じゃ、駅行こうか。加茂さん」
「あっ……はい」
うん。そうなるわな。ということで俺は宮町さんとともに、菰野駅へと向かった。
菰野駅まではすぐだったので、先ほどまでの事というか。お店での事を話していたら駅へと着いた。
そして菰野駅で時刻を確認して……次の電車は。と駅に掲示されていた時刻表を見てみると…。
「18時は……22分だね。ちょっと前に行っちゃったかー」
駅の時刻表を見ていると宮町さんがつぶやいた。まあうん。ちょっと次の電車まで時間があるという状況だった。
菰野駅には、人が数人と少なかったがベンチは空いてなかったので俺と宮町さんはホームの先まで歩いていき。空いているところで立ち止まった。
にしても、いきなり宮町さんと2人になるとは……まあ大学でもなったが。何を話したらいいのか。とか思うと全く会話が浮かばなかった。さっきというか。駅まではなんか。話題がなくとも何となく話せていたのだが……今は話題がね。無かった。というか何を話したらいいのかわからなかった。
すると宮町さんが話しかけてきた。
「ねえねえ、加茂さん」
「えっ?あっ。何……ですか?」
うん。急に緊張してきたよ。と俺が思っていると……。
「加茂さんって、言いにくいよね?」
「……はい?」
何を言われるのかと思ったら……いきなり苗字のダメ出しだった。というか呼び方?うん?これは何だ?と俺が思っていると……。
「あっ、その悪いとかじゃなくて。なんか加茂さんだと。他人みたいだなー。って。さっきから呼んでて」
「あー、まあ、どうなんだろう?今までは加茂。とか普通に呼ばれてたから。あまり気にしてなかったけど」
「そうなんだ。うーん。でも、加茂さんもかわいいけど。動物みたいで」
「ど、動物?」
ちょっとたとえが独特では?と俺が思っていると。
「でも私は楓の方がいいかな。ねえ。楓君でいい?」
「えっ……あーまあ、呼び方はご自由に……どうぞ」
「やった。じゃあ楓君。これからよろしくね」
「こ、こちらこそ…?」
と、ホームでなんかそんな話していたら電車がやって来た。
電車に宮町さんと乗り込むと……席が空いていたので2人で並んで座ったが。俺の降りる駅はすぐなので……。
菰野駅から電車に乗って……すぐ。18時32分に電車は俺の現在の家の最寄駅。伊勢川島駅に到着したので俺が降りる準備をしていると……。
「また明日ね」
と、宮町さんが声をかけてきたので。
「あ、うん。じゃあ」
車内で簡単に挨拶をし。俺は宮町さんと別れた。
俺が駅のホームに降りると。すぐに発車ベルが鳴り。電車のドアが閉まり。電車は発車していく。
やっと今まで通りの1人。うん。1人となった。
いや、なんかもう。ほんと。何度も言うが。いろいろありすぎる1日で明日になったら、実は夢でしたとか。ありそうな……などと俺は思いながら改札を出たのだった。
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