第4話 合流 ~15時59分発の帰り道~

斎宮さんと、連絡先を交換したすぐのこと……。


「そういえばさ、楓」

「うん?……何?」


いつの間にか柊はお昼を食べ終えており。ごみを袋にゴミを入れて縛っているところだった。そして俺の足元の方を指さし。


「楓のカバンに入ってるその分厚い本何?もう講義で使う本買ったの?」

「あー……」


それはスマホを出すときに足元に置き。開けっ放しにしたカバンからちょうど見えていたもの。なぜか持ってきちゃった時刻表だった。


まあ、隠すのもなので……ちょっと緊張しつつ。まあ普通大学に時刻表はいらないからな。


「いや…………その……単なる時刻表……です。はい」

「「時刻表??」」


柊、斎宮さんが……まあ驚くよな。大学になぜ時刻表持ってきた?って。


「いや、ちょっと、ミスって。カバンに入れちゃったみたいで。あはは……」


俺がそう言いながら出すと意外なところから。


「あっ!これなんだっけ……えっと、あれでしょ。あれ。見たことある!」


まさかの食いついたのは、斎宮さんだった。再度ちょっと柊を乗り越えて……先ほどもこんな姿勢見たなと俺が思っていると……。


「沙夜。あれあれじゃさすがにわからないだろ。ちなみに俺は全くわからない」


乗られている柊も苦笑いしつつ返していた。


「だからあれだよ。私見たことあるよ。新しい特急だよね?実家の線路走ってたよ」

「う、うん。3月から走ってる車両で……」


と。俺が斎宮さんに説明しようとしたら……。


「それひのとりだよね」


「「「!?」」」


さすがに、びっくりした。うん。かなり。超びっくりした

いきなり2人とは、違う声が聞こえてきたからね。ちなみに柊も斎宮さんも、声の方を見て、顔をあげていた。



ちなみにだが。今出て来た「ひのとり」というのはこの近鉄の時刻表の表紙になっている車両で、近鉄の新しい特急車両なのだが……うん。その説明よりまずは。


声の主に声をかけるべきかと。思っていると。


「びっくりしたー。えっと。誰さん?」


柊の方が早く声の主に聞いていた。


「あ、急にごめんなさい」


軽くぺこりと頭を下げた女の子。

顔上げると、10人中9人、いや、10人がかわいい。というであろう美少女さんが3人の前に立っていた。


それもなぜか、すごく笑顔で。

すると見られているのが気になったのか。こちらが美少女さんを見ていると。少し首を傾け「何かな?」と目で訴えてくる感じがあり。さっと俺は目をそらせてしまったが……。


「いやいや、問題ないよ。急でびっくりしてね」


柊が美少女さん。女の子の相手をしてくれるので、変な間というのはなく助かった。


「楽しそうに、話してるなって思ったらつい声かけちゃった。私偶然その車両のこと知っていてね」

「俺は全くわからないんだが……楓。これ知ってるのが普通なのか?なんか沙夜も知ってるみたいだし」


柊に話を振られ、慌てて答える。


「あ、いや。まあ、どうだろう。そんなに多くはないんじゃないかな?知っている人は…。多分」

「私は、ちょっとどド忘れしてただけで、知ってる。知ってるから!」


柊の横からは斎宮さんは手を挙げて主張していた。


すると、美少女さんがポンと、手を合わせて。


「そういえば自己紹介してなかったね。私、宮町海織みやまちみお多分、3人と同じ1年生です」

「そうだなまず挨拶だな。俺、白塚柊しらつかしゅうご察しの通り1年よろしく」

「そうだね。まず挨拶挨拶。私は、斎宮沙夜さいくうさよです!同じく1年生。みやまち、みやまち、みお、みお。うん。覚えた!」


あー、やっぱり斎宮さんのそれ何か個人的に覚えやすいなにか?なのかな?と俺は思いつつ……。


「あ……加茂楓かもかえでです」

「白塚さんと、沙夜ちゃん。そして…。加茂さんですね。よろしく」


またぺこりと頭を下げていたので3人もつられてぺこり。


するとそのあと柊が多分疑問に思っていたのだろう。まあ実際俺も疑問だったからタイミングがあれば聞こうとしていたからね。

でもまあこの場では柊が先に聞いた。


「そういえば宮町さん。なんで俺たちが、1年生って思ったの?見ただけじゃわからないよね?みんな私服だし」


そうそう、俺もそれ疑問に思っていた。大学内、誰が、何年生とか全くわからない。

俺はとりあえず会う人みんな先輩。と、思うか。とか考えていたくらいだからね。

まあそれなら間違いではないと思ったし。自分より下はいないはずだからね。


でも、この宮町さんはどうして3人ともを1年生と思っていたのだろうかと……と俺も思っていると……答えはシンプルだった。


「だって、2人は朝の講義一緒の教室だったよ?」

「「へっ??」」


男子2名、午前中の記憶を思い出す。思い出す……。


「まあ、私窓際にいたからわからないよねー。2人はなんか話してるなー。ってちょっと目に入ったから。だから今声かけれたんだ」


うん。ホント答えはシンプルだった。単に俺たちが周りを見ていなかっただけ……らしい。っかこんな美少女さん居たのに気が付かなかったのか……と俺が思っていると……もう1人この場に居る美少女さんが……。


「私だけ仲間外れー。何でー」


と斎宮さんだけが嘆いていた。


それから、やっと本題というか始まりに。

っか、これを紳士というのか。柊は宮町さんに「あっよかったら座る?どうぞ」とか言いながら自分が立ち宮町さんを座らせていたので今は俺の横に宮町さんが座っている。

どうも女性が近くにいる経験が少ない為。緊張しながら、時刻表持ってた経緯や、その表紙の列車のことを柊たちに話したりと……言う時間になり。


っかまさか時刻表を持っていただけで。自分が中心みたいな感じで話をするとは……だった。いや結構疲れたよ。である。


俺がざっと話終えると……。


「いろいろ書いてあるね。あっこの列車も見たことある!」

「あっ、海織ちゃんさっきのページ戻って」


今俺の時刻表は初めてという女の子2人が見てみたい。と言ったので貸している。


「楓は、いわゆる鉄道オタク?」


柊がそんな質問をしてきた。ちょっと急だったのでドキリとちょっとしたが……自分でも意外なことにスラスラ話せた。この今の雰囲気がいいからだろうか。


「オタクっていうか……なんだろう?まあ好きかな?って。乗るのとかがね。他はそんなに詳しくはないから」

「俺は鉄道って単なる移動手段にしか見てなかったが……こんな電車?走ってるんだー。って、ここ普通だけじゃん。確かにこっちに来るときはいろいろな車両見たなー。とは思ったが。っか。名古屋から乗る時。危うく特急料金?なんか追加料金取られるところだったんだよ。俺んとこ走ってる電車は特急も普通の切符だけで乗れたからな」

「じゃあ……乗車券だけで特急に乗れるってことは……柊はこのあたりだと愛知の方出身?」

「おしい。岐阜」

「あー、岐阜も……名鉄か?」

「そうそう、よく知ってるじゃん。あそこ特急あるけど普通に乗れるからさ。こっちも乗れるのかと最初思って、車両の方行ったらなんか雰囲気がね。全く違った。そしたら特急券?いるとか放送かかってたし。慌ててUターンよ」


と。柊と話していると隣から……。


「私は、奈良だよー」


そこでいきなり。斎宮さんが会話に入ってきた。


「あっ、時刻表ありがとう」


斎宮さんが会話に入ってきたあと、すぐには……宮町さんが俺に時刻表を渡してきたのでそれを受け取る。どうやら見たかったところは見れたらしい。


とか俺は思っていると……。


「楓は?どこ出身?」

「実家は三重だけど、あっこの辺りではなくて、志摩の方」

「……沙夜、「しま」ってどこ?」

「えっ?えっと……聞いたことはあるんだけど…………うーん。どこだっけ?海織ちゃんパス」

「志摩だから、少し前に世界の偉い人たちが集まっていた……えっと。そうそうサミットしたところでしょ?」


と、斎宮さんが聞くとすぐに宮町さんがこちらに話しかけてきた。うん。よくご存じで。と俺は思いつつ。


「うん。そうそう」

「あのあたり海産物おいしいよねー。海も近いし磯の香りがいいところだよね」

「えっと……宮町さんもそっちの人?」


と、聞いてみる。いや、なんかスラスラ出てきていたというか。知っている感じがあったんでね。すると……。


「あっ……えっと、私は愛知の知多……知多半島ってわかる?」

「うん。カニのはさみ?っていうのかその片方だよね」


俺が返事をすると……ちょっとカニ?に疑問を持ったらしい柊が……。


「カニ?カニってなんで?っか知多って。カニなのか?あれだろ空港なかったっけ?」

「そうそう。空港あるよ。あっでもカニもあたりだと思うよ?」

「えっ。マジ?楓、解説を」


と、柊が忙しそうに俺と宮町さんを見ていた。


まあカニという表現が正しいのかはわからないが。愛知県の形を見たときに。

なんかカニっぽいというのが理由。と。俺が話すと……。


「ギブ。俺まず愛知県の形がまずわからないわ」


どうやら柊はお手上げらしい。


すると、斎宮さんが柊の横から顔を出し。


「そうだ、話は変わるけどさ。今日一緒に帰ろうよ。みんなで。みんな次で最後でしょ?あっ、サークルとか見に行く?」

「私は、次で終わり」

「あっ、うん。特にサークルは見るつもり今はないから」

「沙夜が言うなら……帰ろうかな」


と。斎宮さんの提案に3人がそれぞれ答えて……。


「はい、決まり。じゃ、講義室の前で」


うん。とりあえずパッと講義の後にみんなで一緒に帰る。というイベントが予定されたのだった。


初体験が多い1日だな。とか俺は思いつつ……。


それから午後の講義が始まった。


ちなみに……。


「一緒だったんだね」

「う、うん。だね」


うん。この可能性を考えてなかった俺だった。

今、俺の横には宮町さんが居た。


まあ、同じ講義受けているというのは別に不思議なことではない。が……心配なのはお話のお助けマンがいないこと。


柊と斎宮さんは違う講義室だったらしく。ここにはいなかった。

いきなりこんな美少女さんと一緒に講義を受けるとは思っていなかったので、かなりの緊張。もしいろいろと話しかけられて……変な返しをしてしまったらどうしようか……と俺は思っていたのだが……。


講義が始まれば話すということは、まあなかったので。気が付いたら、講義の終了時間となっていた。


講義が終わり。講義室内がにぎやかになって来ると……。


「あー、疲れた。90分長いよね」

「ま、まあ高校時と比べると長いね」

「あ、そうだ、もう沙夜ちゃんたち待ってるかな。行こう」


宮町さんに言われ。俺も荷物を急いで片付け。お昼休みに話した集合場所へと向かった。


ちなみに集合場所にはすでに2人は来ていた。


「おまたせー」

「あっ、海織ちゃんたち一緒だったんだ」

「よし。じゃあ行くか。ってみんな電車だよな?」


と、柊が言うと……そういえばそれは聞いてなかった。と俺も思ったが、どうやら全員電車通学らしい。


「楓。次って電車何分?」

「えっ、あー、ちょっと待って」


と、柊に聞かれたので、スマホ……ではなく時刻表を出して調べた。

よく乗るところは、折り目がつけてあるのでスマホで検索より早いのでね。俺はパッと湯の山線の場所を開いて……。


「今15時半だから、坂道下って行ったら。59分の普通……かな?」

「はやっ。どう見たの?」

「慣れてると時刻表の方が早いんだな。すげー」


と、柊と斎宮さんに言われた。


で、まあそんな感じで話しながら4人で駅に向かいながら歩いていく。


前では、柊と斎宮さんが話しながら。それを聞きながら後ろを俺と宮町さんが歩く。

よくある普通の帰り道なのだが。

俺にとってはかなり新鮮な時間だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る