第3話 定期券 ~8時41分着の出会い~
翌日、切符を買い。駅のホームで電車を待っていると。
8時23分。定刻通り3両編成の電車はやってきた。
大学生と思われる人が何人か高校生だろうか制服着た生徒も数人乗っている。
席は空いてなかったのでそのままドア付近で電車にしばらく揺られる。
8時41分定刻通り終点の駅に到着。
入学式の時ほどではないが、ぞろぞろと人が大学、高校方面に流れていく。
ちなみに、なぜ定期券買いに行ったのに切符を買い電車に乗っていたか。
理由は単に下宿先の最寄り駅は無人駅。駅員さんがいないため定期券を購入できない。定期券を購入するためには大学のある終点のこの駅に来る必要があったから。
一応、これも事前にはわかっていた。
昨日時刻表で確認済み。運賃などのところに定期券の購入可能駅も記載されている。
今は無人駅増えたから定期券買うのもちょっと大変。
大きな駅だと自動券売機で買えるところもあるらしいが田舎の駅にそのような機械はまだなかった。
とりあえず、この電車で講義には十分間に合うというのはわかったので、改札出た後は、窓口近く置かれている紙に定期の区間やら書き。窓口へ並ぶ。
空いているかと思えばちゃんと2人並んでいた。多分大学生だろう。
みんな学校始まる前にという感じか。多分混むときはもっと混むのではないかなとか。思いながら順番を待つ。
ICカードの定期券もあるみたいだが、俺は、磁気定期券を選んだ。なんとなく磁気定期券を使ってみたかったからという理由でね。
そして順番はすぐに来た。前にいた男性が終わったようで窓口を離れる。
……のだが。
窓口横に財布が置いてある。
ちょうど窓口の人からは死角になっていたところにあったらしく。
駅員さんも気が付いていない様子。
ふと振り返るとまだ一つ前に並んでいた人は改札前を歩いていた。
駅員さんに言ってもよかったが多分あの人だろうということで、俺は財布を手に取り。
「あの、財布忘れてますよ」
と、声をかけながら男性の方へ、すぐに男性は振り向いた。
「……俺?って!あー、俺のだ!あぶねー。ありがとありがと」
と、後ろからでは明るい髪だなー。くらいしか思ってなかったが。ずっと黒髪の俺から見れば無縁の髪色である。
正面から見たらおしゃれだし。何より雑誌に出ていそうなイケメンさんであった。
というか、一瞬。やっば、なんか話しかけてよかったのかな俺みたいなのが。と、思うくらい。
住んでる世界違うのでは、という感じの雰囲気。オーラがあった。
でも、どうやら反応からして当たりではあったらしく。
振り向いた男性に財布を渡すと……。
「助かったー。ありがと、ありがと」
と軽く手を振り。男性は大学方面へとさっと消えていった。
多分俺とはもう関わらないであろう人だな。とか、思いながら俺も再度窓口へ。
無事定期券購入し。帰宅した。
それから数日後。
大学のオリエンテーション期間になり。初めての講義。
この前乗った、8時23分発の電車で無事に開始時間前に余裕をもって、指定されていた教室に入った。坂道はちょっときついので悪天候時は要検討。あと、ここ山間部だから冬とかどうなるのだろうか。とか。考えながら歩いてきた。
講義棟ではなく。4年の時くらいしか使わない思っていた場所に来ている。ゼミ棟やら言われる方にある高校の時と同じようなつくりの教室みたいな部屋に来ていた。
どうやらゼミは4年からだと思っていたが1年生でも各種連絡などするためか。
週1は今集まっている少人数での時間というのがあるらしい。
もしかしたら友達作りみたいな場なのだろうか?とも思ったが。まあそんなのはないか。とすぐに頭から消し去った。
すでに俺の周りでは話し込んでいる人など、俺と同じように1人でなんかしている人など様々だった。
まあ、個人的にはあまり好きではない講義となりそうだったのだが……。
とりあえず、メモでもできるように筆記用具くらいは、と。思い。カバンをあさる。
すると、その時また余計なものを持ってきていることに気が付いた。
「……重いと思ったら、時刻表まで入ってるよ…」
どうやら昨日の晩。読む本がなくなり。ちょっと時刻表を眺めていて……そのまま机に置き。朝、バタバタとノートやらカバンに入れたときに時刻表もセットでついてきてしまったようだ。
どうも俺はこの時刻表に好かれているのか……自分がおっちょこちょいなのか……まあちゃんと準備は前日にしよう。と思っている俺だった。
とりあえず時刻表はそのまま封印。筆記用具だけ出して講義が始まるのを待つことにした。
それから少しして、講義が始まる直前のことだった。
「あれ?あっやっぱり駅で財布拾ってくれた人じゃん。おつかれー」
隣から明るい声が聞こえてきた。
財布を拾って……というワードがなんか引っかかったので、俺がふと声の方を見ると……駅に定期券を買いに行ったときに会ったイケメンさんだった。
「あ……どうも」
と、いきなりだったから、俺はそんな返事しかできなかったが。イケメンさんはそのまま空いていた俺の横に座った。
「この教室?こんなに生徒いるのに偶然だな。俺もなんだよ。でもよかったー。全く知り合いいなくてさ。あ、俺、
「あ、えっと、
「
「あ、ああ、はい」
「なんか固いなー。まあ初めてだからそんなもんかー。俺が軽すぎるのか」
と、流れるように会話進められ……。
その時ちょうど担当の教員が入ってきて柊との会話は終了した。
それからは教員の話があり……うん。眠くなりそうな会話だったが……まあ頑張っていた。内容はカリキュラム?履修登録を各自でするように等の話などだった。
講義が終わると……。
「いやー、わけわかんねー、パソコンで登録とか。楓わかった?」
と隣から柊が聞いてきた。
「まあ、なんとなく……だけ。しばらく期間はあるみたいだから、まずは各講義出てみるかなー。って感じかな」
「楓は真面目だなー」
「そ、そうかな?」
「そうだろ。ずっとメモも取ってたし。あっ、わからなくなったら助けてくれよ」
「えっ?あー、うん」
「サンキュー」
いきなり誰かと話すことが来るとはと、ちょっとしたパニックだった俺。そもそも、こんな感じに人と話すのは久しぶりな気がする。ちゃんと返せてるかな。とか思っていると……。
さらに人が増えたのだった。
「柊ー、終わった?」
部屋の入り口からひょっこり人が登場しこちらを見ていた。というか柊を見ていただな。
見るからに癒し系というのか。ふわふわしたオーラまとう女の子が入ってきて柊の前に来た。美男美女というのはこういうことか。とか。思っていると。
「おー、
「はいはーい、ご紹介されました。
「あ、
「かも。かも。かえで。かえで。かも。うん。覚えた。よろしく!」
……今の暗号みたいな呪文みたいなの何?と、気にはなったが、まあいきなりは聞けず。
そもそもぼっちにはいきなり2人の相手とか無理です。と、脳内が言っていると……。
「楓は次なんか講義受けるの?」
と柊が聞いてきた。
「あー。えっと、とりあえず、気になるところは……って感じで一応ある」
一応講義の予定は事前に見ており。この科目は受けようというのはある程度俺は見ていたので、この後も予定ありだった。
ので、そのように返事すると。
柊は考えるポーズしつつ。
「そっかー。俺は、サークル見てこようかなー。次の時間特にこれってなかったし」
「いやいや、柊ー。まず講義決めるんじゃないの?こういう時は」
と柊が言うと斎宮さんに横から言われていた。まあ俺も斎宮さんが正しいような…。と思いつつ聞いていると……。
講義と講義の間の時間はそれほど長くなかったので、すでに時間がギリギリだったこともあり。俺は「次の講義行ってくるよ」というので2人に声をかけて別れることになった。
それから1つ講義を大講義室というのか広い教室で聞き……うん。各講義が90分なので2限受けるともう時間はお昼。お腹空いた。ってやつだ。
お昼ご飯は食堂……という考えもあったが。俺は出遅れたのか。食堂へと行くとすでにたくさんの人がいたので……。
近くにあった売店でお昼を買い。ちょっと外にベンチくらいないかなー。と探していると……。
売店や食堂からさらに奥。大学内では一番奥になるであろうところに何のスペースかはわからないが。ちょっとした芝生広場みたいになっているところがあり。ベンチが複数置かれている場所を発見した。
講義棟から離れるからか。数人の先客しかいなかったのでベンチはまだ空いている。
俺はその1つに荷物を置き座る。天気がいいので山に近い大学というのをかなり体感できた。うん。後ろはでかでかと山。緑である。山頂は岩?みたいな感じだが……。
その反対が多分駅の方だから……建物がなければ。と、もう少しここが高ければちょっとしたいい眺めとかになるのだろうか。と、考えながら、売店で購入したサンドイッチを一口。うん。美味い。外で食べるのいいな。とか思いつつのんびりとした時間を過ごした。
この後は、1コマ空いた後に講義が1つあるので、2時間弱時間が空くので……ここでゆっくりするのも悪くない。と俺が思っていると。
「おっ。楓いいとこ知ってるな」
「ホントだー。やっほー」
「……えっ?あー、柊と、斎宮さん」
ちょっとぼーっとしていたからか。こちらに来る2人に俺は気が付いていなかった。
「静かでいいとこー。ここ全然人いないね」
「隣いいか?」
俺がベンチに置いていた荷物を足元へ。その空いたところに柊、その横に斎宮さんが座った。
なんだろう?この2人に俺はあとでもつけられているのか……と。こんなに人の多い大学でこんなに接するとは。とちょっと警戒してみたりしたが……まあ多分ないだろうってことで早々に頭の中から消した。
すると……。
「たまたま売店で、楓がいるの見かけてさ」
「はじめはね。食堂行こうかー、って、柊と言ってたんだけどね。もう食堂いっぱいでいっぱいで」
「そうそう。で、楓はどこ行くのかなー。って思ったらこんないいところに。ってわけ」
「……なるほど」
はい。先ほどのストーカー疑惑。どうやら頭の中に残した方がいいみたいです。少しは。
すると斎宮さんがこちらを見つつ。
「あっ、もしかして、お昼は1人でとかの方がよかった人?」
「あっ、いや、そういうわけでは。そのまだ知り合いいないから。ちょっと歩いたらここがあった。みたいな」
「よかったー。邪魔したかなー。って」
斎宮さんも話しながらカバンから売店で買ったであろうパンを取り出していた。柊は、すでにおにぎりやら揚げ物を食べていた。
「あ、そうそう、楓」
「なに?」
そういいながら柊は自分のスマホをこちらに差し出してきた。
「連絡先聞いてなかったなー。って」
「あ、うん。そういえば……だね」
「これ、アプリのコード」
世間で、よく使われているメッセージアプリの画面だった。
一応家族との連絡で使っていたものなので、俺は困ることなく。自分のスマホを出し。ちょっと操作し……登録の画面へ。
「えっと、これでいいんだっけ?」
「お、来た来た」
「あっ。私も教えて教えて」
柊との連絡先交換を終了すると、さらに隣からも手とスマホが伸びてきた。
「沙夜、邪魔なんだけど。っか重い」
「ちょ。重いとか何さー。ってかいいじゃん。ちょっとだけー。って柊が間に居るからこうなってるの」
「はいはい」
……この2人どういう関係だろうというのもあったが。自然と距離が近い関係ではあることはなんとなくわかる。同じ高校の出身なのかな?とか思いながら。
とりあえず、無事2人の知り合いが俺のスマホ内のメッセージアプリに登録された。
さらっと2人と連絡先の交換をしたが。個人的な歴史の中では、1日に2人も連絡先を交換するということは大事件なのだが……。
まさか、3人目の登場があるとはこの時誰も知らなかった。うん。柊と斎宮さんも予想していなかっただろうな。
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