第 2 話 第二ユニバース:殺害(2) 1983年7月28日(火)

 絵美が日本から離れる日が迫ってくる。しかし、意外に平気に思われた。だって、最初じゃなかったから。洋子は、去年の2月、モンペリエに行ってしまった。そりゃあ、洋子は絵美と違う。だけど、洋子は、僕にとってやはりかけがえのない女性だ。その洋子が、美佐子のドタバタがあったけれど、去年、僕の前から消えてしまい、7月に戻ってきて、いつもと変わらない。まるで、2月から7月、前みたいに会わないことが長かろうと、でも、同じだった。


 僕は驚いた。僕と絵美が食事していた。帝国ホテルのレ・セゾンだ。僕がメニューを見ていると、メニューに影が差した。僕は注文を取りに来たレストランの人間かと思って、「いま注文を考えているところで・・・」と言いかけた。目を上げると洋子が立っていた。「今晩は。同席していい?絵美さん?」と洋子が絵美に言う。絵美は「もちろん。どうぞ。ね?明彦、いいわよね?」とニヤッとして言った。「なにがどう・・・」と僕は状況がわからない。

「明彦、驚いた?」と、絵美が言う。

「どうして、洋子がここにいるんだ?なぜ、絵美は知ってるんだ?」と絵美に訊いた。

「それは私が話すわ」と洋子が言う。「まずね、明彦は私のことを絵美さんに話したと言ったわよね?それで、昔から・・・そうね、3年前から絵美さんの話は聞いていた。それで、今回、私、モンペリエから帰国してきたけど、絵美さんはニューヨークに行ってしまう」


A piece of rum raisin

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