第 5 章 第三ユニバース:高エネルギー加速器研究機構(2) 2010年5月11日(火)
小平博士は、ホワイトボードに説明項目を書き出した。
1. マンデラ効果
2. 多元並行宇宙、マルチバース
3. 時間軸の記憶
4. 記憶の仕組み
5. 雷がもたらすガンマ線フラッシュ
6. 加速器がもたらすガンマ線フラッシュ
7. 地球ガンマ線フラッシュ
8. CERNとスーパーカミオカンデ
9. 極超新星爆発
10.大量絶滅
「私も2008年の9月に森くんと似たような記憶の転移のような体験をした。それで、あることに気づいた。こちらの世界とあちらの世界で、起こったことが違うこと、記憶の転移した時間によってそのことを覚えている者と覚えていない者がいることなのだ。諸君にヒアリングした結果、記憶の転移が起こったむこうの世界の時間が各々違う。むこうからこちらへの転送時間だ。
宮部くんは1970年5月。加藤くんは1978年の5月。森くんは1979年の2月。島津くんは1979年の6月。私と湯澤くんは1981年の3月。最後に、ジャヤワルダナくんは1981年の12月だ。そこでだ、諸君に聞くが、ジョン・F・ケネディはいつ亡くなった?」と小平は宮部に訊いた。
「それは確か1963年にテキサス州ダラスでリーハーベイ・オズワルドによって暗殺されましたよね?」
「そうだ。では、弟のロバート・ケネディは?」
「兄が暗殺されて、副大統領のリンドン・ジョンソンが大統領に昇格しました。ジョンソンが次期大統領も勤めた後・・・あれ?弟が大統領に・・・ちょっと待って・・・私の記憶では・・・」
「そうだろう?諸君らもわかるだろう?こちらの記憶では、ロバート・ケネディはニクソンを破って、第37代大統領に就任した。しかしだ」
「むこうの記憶もあるだろう?むこうの記憶では、ロバート・ケネディは1968年6月に暗殺されている。第37代大統領はニクソンだ。もう一つ訊く。ジョン・レノンはどうだ?宮部くん、ビートルズのジョン・レノンだよ」
「ジョン・レノンは去年、2009年に新曲を出しましたよね?」
「そうだ。加藤くんは?森くん?島津くん?」
「その通りですよ。なかなかいい曲でしたよね?」と森が答えた。
「じゃあ、ジャヤワルダナくん、キミはどうだ?」とモニタースクリーンに映っているアイーシャに小平は訊いた。
「ええ、去年、彼が新曲を・・・え?ジョン・レノンは暗殺されたのでは?・・・いいえ、生きているわよね?なぜ、死んだなんて思うのかしら?」ひどく怪訝な表情でアイーシャは答えた。
「じゃあ、湯澤くんは?」
「僕もアイーシャと同じで・・・生きているけれど、銃撃されて死亡したという記憶もあって・・・」
「そうだ。私も同じだ。ジョン・レノンは1940年生まれ。今年で70才になるが、小野洋子ともども元気だ。去年、新曲を出した。しかし、ジョン・レノンは1980年12月にニューヨークのダコタ・ハウス前でマーク・チャップマンから銃撃して死亡した、と別の記憶が言っている。これはどういうことかね?宮部、加藤、森、島津はジョン・レノンが暗殺されたという記憶はない。私、湯澤、ジャヤワルダナには、レノンはまだ生きているという記憶と、レノンは暗殺されて30年前に死んでいるという記憶の2つがある。なぜか?」
「なぜなら、宮部、加藤、森、島津は、70、78、79年までの記憶がむこうからこちらに転送されていて、80年にむこうで起こったジョン・レノンの暗殺は知らないからだ。それに対して、私、湯澤、ジャヤワルダナは、むこうの1981年までの記憶が転送されたから、こちらではレノンは生きているのに、むこうの記憶ではレノンは30年前に暗殺された、ということを知っているということだ」
「さて、こちらとかあちらの世界だとか、混乱させてすまない。これは私の仮説だが、多元並行宇宙、つまりマルチバースは存在するということだ。こちらの世界では、ジョン・ケネディは暗殺されたが、ロバートとレノンは暗殺されなかった。あちらでは3人共暗殺された。仮説であろうとなんであろうと、われわれに起こったことを考えると、別の並行宇宙がある可能性は高い。それで、われわれのこの世界、こちらの宇宙体系を第三ユニバースと仮に呼ぶ。そして、むこうの世界、ジョンとロバート・ケネディ、レノンが暗殺された世界を第一ユニバースと呼ぶ」
「小平先生、第一と第三と仮に呼ぶのはわかりましたが、第一と第二じゃないですか?」と加藤が小平に尋ねた。
「それが、後で湯澤くんから説明してもらうが、どうも第一から派生しているこの世界、第三よりも第一に似通った第二も存在するようなのだ。第二に関しては、機械の同期がうまくいっていなくてね。しかし、仮に第二も考えておこうと思って、このような順番にしたのだ」
「そこで、マンデラ効果の説明をしようと思う。まず、この『第一の落雷、第三のLHC暴走による部分記憶転移』というチャートを作っておいた。これで、今の私の説明がよくわかるだろう」と小平博士は、PCのチャートをホワイトボードに投影した。
A piece of rum raisin
目次ー小説一覧
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます