第18話 F to M
「フランコ?」
あんなにもたくさんあった機材がほとんどなくなっており、机の上には1冊の本と手紙らしき封筒が置いてあった。
私は悪いとも思いつつ、部屋の様子を見て、申し訳ないと思いつつも封筒を開ける。中には便せんが入っており、彼の字で書かれていた。
『親愛なるミロへ
まず、こんな手紙を残して突然いなくなることをお詫び申し上げたい。本当にすまない。決して抜け駆けをしようとかそういったつもりはない。少し僕も追われていてね、そいつらがこの町を嗅ぎ付けたという情報を耳にして、彼らに捕まる前に次の町へ行こうと思う。』
ひとまず、彼が無事と言うことがわかって私はほっとし、胸を撫でおろす。
『というか、僕は君と研究を高めるのはこれからだ!と思っていたから、本当に残念だと思っている。君も残念だと思っていたら、と申し訳ないような、嬉しいような・・・なんてね。』
私もフランコと研究を重ねたかったと残念な気持ちになる。
『さて、君が提案してくれた「愛」が無から創造する力という発想だけど、その発想は僕の数十年を否定するというか・・・はっきり言ってびっくりした。
そして、否定をしようと思ったけれど、なんていうんだろうな。
僕は「愛」を研究することはできないと思う。いろいろと・・・遅すぎた。』
「遅過ぎなんて・・・ないよ、フランコ・・・っ」
私は悲しい気持ちになった。
『僕は愛する相手を失った。一人は最愛の女性、そうしてもう一人は最愛の娘だ。僕は二つの愛を失った。そのとき自分の一部のが失われるような気がしたよ。そして、ずーっと、ずーっと僕は何かが自分には足りないと感じながら、生きてきた。その心の足りないものを埋めようとしていたら、錬金術に出会い、没頭しているうちに・・・追われる身となってしまった。そして、いつも焦燥感に駆られて、心をすり減らしてきた。
そんな中、僕はミロ、君に出会った。
君と出会って、久しぶりに心が穏やかになるのを感じたんだ。
ありがとう、ミロ。
僕の話を目を輝かせて聞いてくれて。
ありがとう、ミロ。
僕と一緒に真理を学んでくれて。
君のために何かをできていたとしていたら、それは君の言葉を借りるのであれば、僕は、君を愛していたんだ。
な~んてね。
君が君の愛を求めるように、僕は僕の愛を求めに行こう。ただ、これだけは言っておく。これは君が教えてくれたことだ。過去はあくまで過去でしかない。未来を見るべきだと。だから、僕は歩みを進めるよ。さようならミロ。親愛なるわが同志よ。
フランコより』
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