第12話 異形の館
バンッ、バンッ
私は、ハンスに貰った地図を頼りにこの町にやって来たという錬金術師の家を訪ねた。自分の町ではあったが、いつもエヴァレットに任せていたので、まるで始めてきた町のように戸惑いながらもようやくその家にたどり着いた。
———錬金術の原則は等価交換である。
私は自分が作ったカラクリの入った手編みのカバンをぎゅっと握って家主が出てくるのを待つ。
ギィイイイイッ
しばらくの間使われていなかったとは言え、立て付けが悪そうな扉が大きな音で動く。私は最大限の笑顔を作ろうと顔の筋肉に力を入れる。
ドアはわずかに開くと男がこちら顔を半分だけ出す。
「何の用だ」
歳は大分上。30代・・・もしくは40代だろうか。扉の奥には、彫刻のように目鼻が整った顔の男がこちらを見ている。
「あの・・・はじめまして。私はこの町で
私は頭を下げながら、持ってきたカラクリを差し出す。
「これは・・・なんだ?」
興味を持って貰えたと思い、顔を上げるが、彼は疑った顔をしている。
「これはマッサージ機です。目が疲れたり、足が疲れたときにこちらの機械を使えば緊張をほぐすことができます」
彼はゆっくりと手を伸ばして品を受け取る。しかし、片方の手はドアノブから話すことなく、片手で品を見定める。
「入れ」
そう言って、ドアを開けてくれる。
「失礼・・・します」
ちょっと異質な匂い。けれど、私と同類の匂いがした。
「わぁ・・・」
光り輝く鉱物や液体が丁寧に置かれており、天秤やガラスの容器に液体が色が着いた液体が見える。
「そこに座れ」
私は男が指示したところへ椅子へ座る。
男も椅子に座って、先ほど渡したマッサージ機を興味津々にいじり、さっそく足に使おうとする。
「あっ、それでそっちの、そうそこをにぎにぎすると、膨らんで圧をかけるので、お好みで圧力を調整していただいて、圧力を逃がすにはそこを引っ張ってもらうようになります」
私は指を差しながら、彼に使い方を教える。
「おぉ、おぉおおっ、これは・・・面白い」
男は急に少年のように明るい声を出すので、私は思わずびくっとしてしまう。
「ふぅーん、君も面白い考えをお持ちのようだ・・・改めて、僕の名前はフランコ。よろしくお嬢さん」
フランコは手を差し出す。すっきりとした顔とは異なり、その手はかなり荒れていた。皮が剥げている部分もあり、私は唾を飲み込んだ。
(私に怖いものなんてこの世にあるものか)
私は強くフランコの手を握る。そうすると彼はにやっと良い笑顔をした。
「さて・・・こんな素敵なプレゼントをいただいたとすれば、僕も何かをお返しなければならないかな」
「はいっ!!」
フランコは目を丸くする。
(しまった、焦りすぎた)
「はははっ。正直なお嬢さんだ。だが・・・僕はこれに見合うものしか・・・」
「はい、等価交換ですよね?フランコさん。そして、噂ではあなたは錬金術師と言われていますが、本当ですか?」
フランコは私を2つの瞳でじーっと見つめる。
「大事な人に何かがあったのかね?」
フランコは目を細めて私を見つめた。
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