第2話 愛、それは神が作るもの
「ねぇ!!返事をして!!エヴァレット!!」
私は彼の鼻を塞ぎ、彼の口に息を送り込む。
「こん、な、キスが、最後、なんて、絶対、いや、だから、ね」
私は心臓マッサージをしながら、エヴァレットに話しかける。しかし、返事はない。
また、息を送り込む。
しかし、気のせいであって欲しい。さっきより彼の唇が冷たい気がする。
「やだぁ、やだぁよぉおお。エヴァレットォオ」
私は泣きながら、彼の胸の上で泣く。
———数刻前
私とエヴァレットは町にビジネスに来ていた。
「んふうんっ」
私はどや顔をする。
「ほんとうに、君って子は・・・」
「子じゃない、レディーよ」
「はいはい、ミロ婦人」
「そうそう、私はあなたの婦人よ。おーっほっほほ」
「世の中、理不尽だな。あんなものであんなお金がもらえるなんて」
「あんなものって何よ、素晴らしい画期的な発明品よ。自動人形:マリオンヌちゃん。ある程度のことは指示通り動いてくれるわ」
「あれってどういう仕組みなの?ミロ」
「そ・れ・は、ひ・み・つ~」
「え~っ。ケチ」
「てぇい」
「いたっ」
私は軽く、エヴァレットのすねを蹴る。
「知識がお金になる。だから、あなたも教師として知識を糧に働いているじゃない」
「う~ん。まぁ・・・その言い方はあんまりだと・・・思うけど」
「さっきのマリオンヌちゃんよりも、マリオンヌちゃんを作る知識、ノウハウの方が高いのOK?」
私はウインクしながらエヴァレットを見る。
「・・・わかったよ」
「それで、ゆくゆくは自ら考えて人のために動いて貰って私を楽にしてもらって・・・」
「僕は・・・その考えは好きになれないな」
「なんでよ、楽にできるって幸せじゃない?」
「・・・そこに愛はあるのかい?」
神妙な顔をしているエヴァレット。
「う~ん、ないよ。ないない。あっても困るじゃん。愛がなきゃやってもらえないとか不便じゃん」
「・・・そうかい」
「でも、そうだなぁ。愛があるかぁ。愛も取り組むなら、私の魂を機械に入れて、疲れ知らずの体になろうかなぁ。それもいいかな」
「それは嫌だ」
「えっ」
あまりきっぱり断言をしないエヴァレットが珍しく強い口調で否定するのでびっくりする。
「それに僕は愛を注げない」
「なんでよ?魂は私よ?」
「人の心を作るのは神の所存。君が作ったモノなんてそれは君じゃないよ。ミロ」
「怒ってるの、エヴァレット?意味わかんないしっ。人格とかだって解読すれば作り出せるかもしれないし」
「神の・・・そして、人への冒涜だよ。ミロ。人は人を創り出せない。」
「私は天才だもん造れる!」
「無理だね。神が命を授けるんだ」
「できる!!」
私が嫌いな言葉、それはモラル。
普通・常識でいられない私。普通に世界を見られないから奇抜なアイディアが生まれる。生きづらいのを埋めるために私は天才でなければならない。
無能な私も、私のようにできない人でも楽にできる世界。それを受け入れてくれたから私はエヴァレットが好きなんだ。
なのに、今日はやけに・・・常識的だ。
「僕はミロ。君が好きだ。これは、運命だと思っている。だから、有限のこの瞬間を君と一緒に過ごしたい。いいじゃないか、一緒に生きて行こうよ、ミロ。そして、天国に行って、また———」
「その運命ってのは神様が決めたの?」
「・・・」
「好きになったのは自分で決めったって言ってよバカ!!」
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