ガラクタでいさせて

西東友一

ミロとエヴァレット

第1話 愛、それは授かるもの

「むきーーーぃ!!」

 私は髪を掻きむしる。煙が出る機材に頭を抱ええる。


「あぁ、またこんなに散らかして・・・」

 エヴァレットが苦笑いしながら私のラボに入ってきて、道具を整理する。

「あぁ、ダメダメ。勝手に動かさないでよ!!もうっ」

「はいはい、ごめんごめん」

 そう言って、拾った道具を置きなおす。


「やるなら、そっち」

 私は指を差す。

「・・・少しは自分でやるようにしないと。僕がいなくなったらどうするんだい?」

「そしたら、鼻で笑ってあげるわ。散々私のことを不健康だ、不健康だって言っておいて、先にお前が死ぬんかーい。わらわらって」

 私が椅子の背もたれに寄りかかりながら話している最中も、エヴァレットは片づけを続ける。

「う~ん、病死以外だってあるじゃないか。例えば交通事故とか、離婚・・・とか」

 

 ガタッ


 私は慌ててエヴァレットを見る。

「そんなの、絶対嫌だからね」

 私の顔を見て、エヴァレットは持っていた機材を置く。そして、微笑みながら私の目の前にきて、しゃがむ。


「君の上目遣いはずるいよ、ミロ。そんな可愛い君を残してなんておけないよ」

 エヴァレットは優しく私を抱きしめる。

「ふふん」

 私はマーキングするように彼の胸の中で、顔や髪を擦り付ける。


「でも、私が死んだら寂しいからすぐに、来てね」

「えー・・・まいったなぁ・・・」

 顔を上げるとエヴァレットは腕を緩め、困った笑顔になる。この顔が大好きだ。でも・・・

「今のは冗談。私が死んだからって後追い自殺なんてぜーーーったいやめてよね。そこまでされたら、ストーカーとして絶交だから・・・」

 私と一緒の人生がいいけれど、私がいない世界だったら、エヴァレットには幸せに生きて欲しい。


「りょーかい」

 私の真剣な気持ちが伝わったのか、優しくエヴァレットは頷く。

「でも・・・、ううん。私が死んで1年くらいしたら、他のひとと付き合ってもいいからね」

 私が見栄を張ったのが分かったのかエヴァレットがコツンと私の頭を小突く。


「心にもないことを言わないの。それに今生こんじょうの別れに今なったとしても、半生くらいは君を忘れられないと思うな」

「そう・・・」

 

 チュッ


 エヴァレットが私の頬にキスをする。

「だから、これからも二人でいっぱい思い出を作って、一生忘れられないくらい君に・・・メロメロにさせてくれ」

「あっ、照れてるし」

「うるさい」

「ここでも良かったんだよ?ニシシシッ」

 私は自分の唇を指差す。エヴァレットはまた、片づけを続ける。頬を赤らめながら。


「研究をしないなら、手伝ってよ。ミロ」

 ちらっとこちらを見るエヴァレット。

「ダ~メ。旦那様の研究中だもん」

「・・・勝手にしろ」

 

 こんな人生がずーっと、それこそ永遠に続くと思っていた———



 

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