第5打:悪の役割
業務終了。更衣室に行き、身支度を済ませた。職場を出て、一番近い駅を目指した。4月とは思えない寒さだ。本物の春はいつ訪れてくれるのだろうか。
帰りの電車の中で、読書に耽った。田中光二の『失われたものの伝説』と石川英輔の『大江戸庶民いろいろ事情』を交互に読んだ。
読みたい本がたくさんある。自宅の棚は未読の本でいっぱいだ。読んでも読んでも減らない。読了した本は、なるべく処分するようにしているが、それでも減らない。おそらく、終生の友として、今後もつき合い続けることになるだろう。
職場の休憩室などで本を読んでいると、一部の輩に不思議そうな顔をされることがある。どうやら連中には読書の習慣がないらしい。会話の内容が途方もなくつまらないのは、それが原因ではないかと俺は考えている。又、奴らは差別意識のかたまりでもあるので、俺ごとき虫ケラが、知的な趣味を持っていることが癪に障るらしい。ここまで程度が低いと、最早云うことは何もない。
地元駅下車。駅を出て、公園の方角へ歩いた。園内の桜が照明の光を浴びて、幻想的な景色を描き出していた。何組か、花見グループの姿が見えた。気温が低いせいか、盛り上がりに欠けているように感じられた。見物後、近くにある弁当屋に足を進めた。幕の内を注文し、代金を払った。
帰宅後、ロフトに行き、日課(腕立て伏せ)をやった。浴室に行き、温水を浴びた。体を拭き、服を着た。居室に行き、遅めの夕飯をしたためる。食後、テーブルの上を片づけた。その後、焼酎の水割りを作った。酒肴はチーズ、さきいか、カシューナッツなど。
水割りを呑みながら、先週放送された『松山千春のON THE RADIO』(を録音したテープ)を聴いた。千春流イチロー論は、まことに興味深い内容であった。イチローには「相手投手に対する敬意がない」という指摘は、さすがに鋭い。ただ、仮にあったとしても、表に出すことはしないのではないかとも思った。
洗面所に行き、歯を磨いた。居室に戻り、円盤(DVD)再生機に『座頭市海を渡る』を滑り込ませた。1966年に公開されたもの。二度目の鑑賞である。ライバル剣士は登場しないが、山形勲が凶賊の首領に扮して、座頭市に挑戦する。
活劇の場合、悪役が小さいと、映画自体が小さくなる恐れがある。演者にも、相応の力量が求められる。山形さんならば、その心配はない。〔4月5日〕
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