第19話
15年前に起きた高校生殺人事件の目撃者3人はいずれも事件のあと住んでいたマンションから移転した。
それぞれ別の場所に暮した後緑ヶ丘住宅に来た。
このことは偶然なのか、それとも3人で息を合わせるようにして引越してきたのか。何故同じ住宅地に越してきたのか。
その事件で第1の被害者杉原理恵は殺された高校生の父親に執拗に攻撃された。
逃げるようにマンションから去ったあと、殺された高校生の母親は自殺した。
では、杉原理恵を殺したのは高校生の父親なのか。
第2の被害者も目撃者のひとり奥山奈津子だった。
明らかにふたりの殺人事件の関連性は明らかである。
高校生の父親の合田博幸を重要参考人として任意の事情聴取をしなければならない。そんな思いが高速道路から見る都会の夕暮れの景色と交差していた。
深津たちは、石橋薫の家に向かっていた。
捜査員が石橋の会社で待機して、石橋を家まで送って家の前で待機している。
どうしても石橋薫から事情を聞かなければならなかった。
緑ヶ丘住宅3丁目の石橋の家のまえには西三郷署の捜査員たいが待機していた。
「お疲れさまです」
「石橋薫はいつ戻った」
「5時に定時退社して6時には家に入りました」
「分かった。ご苦労」
深津と生駒は石橋の家に入った。
石橋薫はリビングのソファに座って呆然としていた。
「何故私が保護されるのですか」
意外な言葉だった。
杉原と奥山が殺されたのだから誰よりも恐怖を感じていなければならないのが石橋本人のはずだ。
それが何事もなかったようにしている。
とぼけているのだろうか。
それとも、事件に何らかの関わりがあるから平然としているのか、深津には理解できなかった。
「分かりませんか。おかしな話えすね。杉原さんと奥山さんが殺されているのですよ。あなたはショックは受けなかったのですか」
「そうですか、その件で私が疑われているのですね」
この言葉も深津には理解できない言葉だった。
何故自分が狙われると思わないで、自分が犯人と疑われるという発想になるのだろうか。
「何故あなたを犯人として疑わなければならないのです。そのことのほうが私には分かりません。教えていただけますか」
「警察の方だからもうすべてのことはお調べになっているのでしょう」
「15年前の事件の目撃者としてあなたたち3人はつらい目に会っていたんでしょ」「・・・・・」
「杉原さんは殺された高校生の父親に酷いことをされたという話を聞いています」「そうですね」
深津はどうも石橋の反応に疑問を持らざるおえなかった。
「事件後あなたたちは時期は違いますがそれぞれ別の場所に転居していますね。それからまたこの緑ヶ丘に越してきた。これは何なのですか」
「どういう意味ですか。私は杉原さんも奥山さんともお付き合いはあのあと一切していません。同じところに住んでいることも知りませんでした」
「おかしな話ですね。偶然ということなのですか」
「そうですね」
「その話は承服できません。偶然にしては出来すぎですよ。事件の関係者3人とも転居の果てに同じ住宅地に住んでいるなんていうことがあり得ますか」
「私に言われてもどうしようもありません」
「あなたは杉原さんと奥山さんが殺されたことについてはどう思いましたか」
「お気の毒と思いました」
「それだけですか」
「そうです」
深津は早々に席を立って家の外に出た。
捜査員はこの家に張り付くことになっているようだった。
捜査本部に帰った深津は、幹部たちに石橋の様子を含めて報告した。
「それはどう考えてもおかしい、石橋薫を任意で引っ張るか」
管理官がつぶやいた。
「まだ時期尚早でしょ。もう少し周辺を捜査しましょう」
県警本部の捜査1課長が発言した。
「15年前の高校生殺人事件が関連しているのであれば、ガイシャの父親を当たらなければならない」
「すぐに所在確認をかえましょう」
合田博幸は現在東京都在住だった。
所轄の北中野署に頼んで現住所に向かってもらった。
数時間後に合田の住所に向かった刑事からの報告が入った。
その情報に捜査本部にいた全員が驚きの表情になった。
#20に続く。
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