帰ってきたサカナカナ〔最終章〕『カナ五つの違い』

やっぱり裸じゃありません!こういう模様なんです! 〔熱帯大型暴風雨怪獣少女『アハ~ン』・飲酒大宇宙怪獣人妻『ベロスター』登場〕

 暴風雨の中──ひざ下まで海に浸かりながら巨大化した『サカナカナ』は、裸体にも見える姿で熱帯大型暴風雨怪獣少女『アハ~ン』と戦っていた。


 暴風の中で海上に浮かび、頭部のクラゲのような部分を回転させている、怪獣アハ~ンが快感に悶絶する。

「アッハ~ン」

 葛飾北斎が描く高波のような波と飛沫が、華奈の股間と胸を視界から隠す。

 全身濡れながらアハ~ンに立ち向かう華奈。

「力を貸してください……風神姫『天龍未完みかん』……北の魔女皇女『イザーヤ・ペンライト』今、二つの力をひとつに」


 華奈の姿が未完とペンライトの力が合わさった、超科学の錫杖を持った部分的に緑色コスチュームの姿──『ペンライト未完』に変わる。


「風には風を! ウナギ風竜巻!」

 ウナギの蒲焼きの匂いを含んだ、竜巻風がアハ~ンを天高く吹き上げる。

「アッハ~ン」

 空に上がったアハ~ンに向かって、錫杖からの冷気がアハ~ンを凍結させる。凍ったアハ~ンは落下して海中に沈む。 

「なんとか、勝った」

 華奈の姿が光りの粒子になって消滅した。



 数日後──裸身の胸と股間をイッタンモメン星人で隠した、華奈が疲労困憊こんぱいした顔で自分の部屋に帰ってきた。

 部屋で横臥してテレビ番組を観ていた、タマタマンが振り返るコトもなく言った。

「ごくろうさん」

 お土産の干しイカを机の上に叩きつける華奈。


「こっちは大変だったんですからね! 漂流していたのを漁船に救助されて、この格好で電車に乗って帰ってきたんですからね! 電車の中で『痴女じゃありません、露出狂じゃありません』って変な目で見られるたびに、弁明するのって大変なんですからね!」


 座り込んだ華奈は、スナック菓子を食べる。

「近年の温暖化で怪獣少女が勢力を増して、巨大台風化しているんじゃないですか……他の怪獣少女も強くなってきているし、いつまで怪獣退治続くんですか?」

 タマタマンは答えずに、テレビ番組を観て呟く。

「この『こんな所に誰が住む?』って番組おもしろいな……アポなしで生突入して、放送できない現場に放送中断するのがおもしろい……あれ? 今回の廃屋、三丁目のあそこじゃないか?」


 放映されている生放送には、廃屋に扉を蹴破って突入する撮影クルーの姿があった。

 侵入した部屋の中に人がいた……酔っぱらった女が一人、仰向けで倒れで気持ち良さそうな顔をしていた。

「酒持ってこーい、あっなにあんたたち? 『こんな所に誰が住む』あの番組の撮影なの? 毎週観ているうぅぅ」

 インタビューに答える、酔っぱらい女は家ではキッチンドランカーで最近は、家での飲酒を家族から禁止されているので、この場所で隠れて飲んでいる……とのコトだった。

「あらしらってぇ、家で飲みたいらぁ……でも家族は飲ませてくれないらぁ、酒持ってこ~ぃ」

 酔っぱらい主婦の声に、呼び寄せられるように光球が飛んできて主婦と合体する。


 廃屋を破壊して巨大化する酔っぱらい……主婦の姿は、脇にムササビのような皮膜を広げた、頭に一本角がある宇宙怪獣と融合した怪獣主婦の姿となった。

 タマタマンが言った。

「飲酒大宇宙怪獣人妻『ベロスター』だ、華奈! 出撃だ!」

「イヤです」

「ドクター・ニャゴ先生お願いします」

 丸くなって寝ていた白ネコが、後ろ足で立ち上がると、ネコ手で円を描いて移動魔法円を作り出す。

 掃除機の吸引のように、魔法円に向かって吸い込まれる華奈。


「イヤだ! イヤだ! イヤァァ……おげぇ」

 口の中に飛び込んできた、変身精霊のタマタマを華奈は口から鮮血を撒き散らして、食べて魔法円の中で叫ぶ。

「カナァァァァァ!」

 

 飲酒大宇宙怪獣人妻ベロスターは、腹部ヘソ出しの格好で片手に酒ビンを持って暴れていた。

 口から吐く、基準値を越えた酒気が周辺に被害を拡大させている。

「酒持ってこ~い、飲み足らねぇぞ……うげぇ」

 ただの、酔っぱらった迷惑な酒乱人妻だった。


 光りの中、現れる裸体巨大ヒロイン『サカナカナ』

 母親に手を引っ張られ、防酒気マスクをして逃げていく子供がカナを指差して言った。

「あの、お姉ちゃん裸だぁ」

 すかさず、子供の言葉を否定する華奈。

「お姉さんは裸じゃないよ、こういう模様なのよ」

 体の部所を指差して、裸体で無いコトを強調する華奈。

「ほら、ココとココと……五ヶ所違うでしょ、五つの違い」


 ベロスターは、酒ビンの口をおヘソの穴に突っ込んで、酒を飲みはじめた。

「うぃ……ヘソからも酒が飲めるぅ……すっごい」

 ベロスターの口から吐き出される酒気を浴びて、気分が悪くなった華奈が片膝を地面につく。

《しっかりしろ、サカナカナ!》

 飲酒が法律で禁止されている未成年で、絶体絶命の華奈。


 その時──光りの中から。

「アマミィィィ!」の声が響き。

 裸体巨大ヒーロー男子『カンロミツオゥ』が現れた。 

 ミツオゥの片方の太モモには、鎖が付いた足輪のようなモノが付いている。

 大切な部分が遮蔽物しゃへいぶつで隠された、ミツオゥが言った。

「華奈お姉ちゃん、ボクに任せて……赤い竜人『カプトドラコニス』……白と黒のツートンカラーのワイバーン『ジャジャ』今、二つの力を一つに……『ドラコジャジャ』」


 片方の肩に赤い竜人型宇宙人が、もう片方の肩に翼を広げたツートンカラーのワイバーンが付いた『ドラコジャジャ』の姿になった、ミツオォの肩の竜人が口から火を吐き、ワイバーンが起こす突風が火力を強化する。

「アンギャァ……酒ぇ」

 炎に包まれる怪獣、炎の中に倒れる怪獣。

 怪獣ベロスターと酒乱人妻の肉体は分離して、ベロスターは消滅した。


 華奈とミツオゥの姿も光りに包まれて消えた。

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