電脳暴食怪獣少女【バグウィルス】・男性巨大裸体ヒーロー【カンロミツオゥ〔弟〕】登場・後編

 巨大ヒロイン化して、電脳世界に入った華奈は、背を向けて胡座をかいて電脳世界を千切り食べている怪獣少女に遭遇した。

「この辺りのデータ、味が薄いな。マヨネーズかけてみっか」

 曲刃のような一本角を生やし、背中にも曲刃の背ビレが一本生えている、ひじにはドリルと剣が、それぞれ生えていて。さらには尻尾の先には棍棒状の膨らみがある全身凶器の怪獣少女。

 電脳暴食怪獣少女【バグウィルス】


 変身したサカナカナの大切な部分や乳首は、漂う電脳空間の欠片で微妙に隠されていて見えない。

 バグウィルスは、華奈の存在に気づいて振り返る。

「あんた誰? あたしの食事を邪魔するの?」

 立ち上がって華奈に向き合った、バグウィルスの前面には半円のノコギリが突出していた。

(近づけない)

 電脳欠片を、おセンベイのようにパリパリ食べながら、バグウィルスが言った。

「先に動いた方が負けだ……そっちから、攻撃してこい」


 華奈の中からタマタマンの声が聞こえてきた。

《華奈、カナビームだ!》

 華奈は人差し指と親指で指メガネを作ると、視聴者には見えないように配慮して、背後だけを見せて目からビームを発射する。

「カナビーム! カナカナ」


 バグウィルスの、前面ノコギリが回転してカナビームを弾き飛ばす。

(光線技が効かない!?)

 タマタマンが言った。

《華奈、二つの力を一つに!》


 カードを取り出す華奈。

「天使『青賀エル』……蛮族料理人『カリュード』……二つの力を、一つに」


 華奈の姿が、極彩色の翼と飾り尾羽を持つ、身長を越える大剣を持った鎖ビキニアーマーの『青賀エル』に。


 虹色のアルマジロの皮鎧を着て、どでかい戦斧を持った蛮族料理人『カリュード』の姿が、融合した『エルカリュード』となる。

 大剣と戦斧が合成された武器を振り上げた、華奈は一気にバグウィルスに向かって振り下ろす。

「うわぁぁぁぁ! ちょっと、それズルくない! ぎゃあぁぁ!」

 凄まじい破壊力に、バグウィルスの体は消滅した。

「意外と弱っ」



 平穏な日常がもどった──テレビを観ていたタマタマンは、奇妙なコトに気づく。

「おいっ、華奈……これなんだと思う?」

 タマタマンが指差したモニター画面の一点に、色が抜けた点のようなモノがあった。

「なんだろう?」


 そして、その日の夕方──異変は突如、発生した。大規模な通信障害が起こり携帯電話やパソコンやテレビ画面の隅にあった光点が、一斉に現実世界の一ヶ所へと集結して。

 電脳暴食怪獣少女『バグウィルス』が実体化した……バグウィルスは死んではいなかった。

「あたしの食事を邪魔した、変態痴女はどこだぁ、出てこい!」

 暴れるバグウィルス。


 光りの中から巨大裸体ヒロイン『サカナカナ』が現れる。

「カナァァァァァ!」

「現れたな、変態露出狂の痴女!」

「露出狂の裸じゃありません! こういう模様なんです! 二つの力を一つに」

「させるかぁ! バグウィルスカッター!」


 バグウィルスの背中と頭の曲刃角が、ブーメランのように飛び回って華奈を攻撃する。

「きゃあっ! 危ない近づけない!」

 接近戦も、中距離からの光線攻撃もできない華奈は、バグウィルスの攻撃を避けるのが精一杯だった。

 華奈はタマタマンに助言を求めた。

「タマタマン、どうすればいいのよ」

《しかたがない、助っ人を使うか》

「助っ人?」


 少し離れた場所に光りのスジが昇り。

「アマミィィィィ」

 男の子の声と共に、全裸の男の子が光りの中に現れる。

 華奈と同年代の裸の男性巨大ヒーローの、片方の太モモには、鎖が付いた足輪のようなモノが付いている。

(誰? 見たことあるような、無いような?)


 跳躍して華奈の近くに着地した、裸の男の子の股間はタワーが遮蔽物しゃへいぶつになっていて見えない。

 間近で見る、裸っぽい男の体に困惑する華奈。

 高校生くらいの裸の男の子が言った。

「助けに来たよ……お姉ちゃん、ボクの名前は『カンロミツオゥ』」

「あたし、一人っ子だけれど? あなた誰?」


 ミツオゥは、華奈の質問には答えず、バグウィルスと対峙する。

「ボクが相手だ」

 怪獣少女バグウィルスは、なぜか異性の裸体を前に目のやり場に困り、ドキドキして攻撃できなかった。


 ミツオゥが叫ぶ。

「『飛天ナユタ』……『黒鉄くろがねのビスマス』……二つの力を、今一つに『ナユタビスマス』……硬質棒モード」 


 ミツオゥは影から金属製の棒状武具を引っ張り出す、引っ張り出された武具は、さらにコーティングされて金属の輝きを増す。

 ミツオゥが突き出して伸びた硬質如意棒と、バグウィルスの回転する半円ノコギリが接触して火花が散る。

 ミツオゥが言った。

「月まで届け! ボクの硬質如意棒!」

 グィィィンと伸びた如意棒が、バグウィルスの体を天高く突き上げる、バグウィルスの怪獣体と少女体が分離する。

 華奈は意識を失って落下してきた少女を、胸の谷間でキャッチして保護した。


 バグウィルスはそのまま月面に激突して、光りの粒子になって消滅した。

「リア充きらいぃぃ!」


 華奈は意識を失っている少女を、そっと公園の芝生の上に置くと、ミツオゥの方へ振り返って言った。

「あなた、いったい?」

 カンロミツオゥの姿は、すでに消えていた。


 電脳暴食怪獣少女バグウィルスが倒されて、小一時間後──街の夜景を展望する小高い丘に立つ、甘露蜜子の姿があった。

 蜜子がスカートをめくり上げると、太モモに鎖が付いた金属の足輪があった。

 困惑した表情で呟く蜜子。

「なんなのコレ? 途切れた記憶の間にいったい、あたしの身に何があったの?」


電脳暴食怪獣少女【バグウィルス】登場・後編~おわり~

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