第二話・電脳世界からの挑戦状

電脳暴食怪獣少女【バグウィルス】登場・前編

 未来植物怪獣少女【サカサクラゲー】を倒して、家にもどってきた華奈は上半身ノーブラTシャツ、下半身パンツ〔下着〕だけを穿いた格好で、自分の部屋に閉じこもって。

 大型のヌイグルミを抱えてふて腐れた表情で、目前のタマタマンを睨みつけていた。


「あの、サカサクラゲーって怪獣いったいなんなんですか……逆さになったクラゲに、首から下を白っぽいクラゲの表面みたいな質感の全身スーツを着た女の人が、目元の辺りをクラゲに突き刺さった格好で逆立ちしている怪獣少女……足を開いて回転して竜巻を起こすなんて……変態です」


「まぁ、未来植物の怪獣少女だからな、風を起こして種子を遠くに飛ばす。多少は変わっているんだろうよ」

「それに、いつも変身解除したら裸じゃないですか……裸を隠しながら家に帰ってくるのって大変なんですよ、ある時は落ちていた段ボール箱で体を隠して電車に乗ったんですから……恥ずかしかった」

 華奈は手の平をかざすだけで、公共機関の乗り物に自由に乗れたり。買い物ができるようにタマタマンが便宜べんぎを図ってくれている。

 ちなみに今の華奈の、ノーブラ胸には『タマタの乳』から好意でプレゼントされた。

 透明ゼリー状のシリコン生命体がペタッと乳首に貼りついて、シャツの繊維で華奈の乳首がスレるのを防いでくれている。

 タマタの乳いわく。

「いつも、地球を守ってくれている華奈ちゃんへの、ご褒美とお礼だよ……ノーブラの時にどこからか這ってきて、乳首に貼りつく……お風呂の時とか、邪魔になったら遠慮しないで剥がしてゴミ箱に捨てていいからね」

 華奈は複雑そうな表情で、シリコン生物が貼りついている胸を撫でる。

「タマタマンのお父さんからの、このプレゼント……好意で悪気は無いのはわかるんだけれど……なんか複雑な気分」


 華奈がTシャツの、胸を撫でていると開いていた窓から長い白い布が生きているように入ってきて、室内を飛び回った。

 華奈が言った。

「『帰ってきた』になってから初めて現れた……遅いよ、今までどこで何をしていたのよ」

 布型宇宙生命体・イッタンモメン星人は、すまなそうに華奈に頭を下げる。 

 タマタマンが言った。

「そう怒るな華奈、イッタンモメン星人には、女房と生まれたばかりの子供がいるんだから」

「結婚していたの!? この布キレ宇宙人?」

 部屋の中にミニサイズのイッタンモメン星人が数匹入ってきて、華奈の股間にペタペタと貼りつく。

「イッタンモメン星人のガキに気に入られたようだな、華奈」


 複雑な表情で、子供のイッタンモメン星人を眺めながら華奈は取り出したスマホで、ネット接続をしようとして気づく。

「あれ? インターネットに繋がらない? 電話回線もダメみたい? なんで?」

 テレビのニュースを見ていた、タマタマンが言った。

「全国的な通信障害らしいぞ」

 その日から、原因不明の断続的な通信障害が、一日のうちに何度も発生するようになった。


 翌日も発生した原因不明の通信障害に、華奈は少しイラつく。

「いつになったら、原因が究明されて、断続的な通信障害が回復するのよ!」

「落ち着け華奈、これは怪獣の仕業だ」

「まさかぁ、なんでも怪獣のせいにして……」

「これを見ろ、今日まで断続的な通信障害が発生した時間帯を、折れ線グラフにしてみた。何か気づかねぇか」


 華奈はタマタマンが作成した、折れ線グラフを凝視していて、あるコトに気づく。

「あっ、なんとなく食事の時間と重なっている!?」

「そうだ、食事時間以外は間食が短時間ある……腹が減った時だけ、電脳世界に入り込んで問題を起こしているんだよ」

「電脳世界じゃ、あたしにはどうにもなりませんね。このまま、スマホやパソコンが断続的に使えないのは困るけれど」

「おっ、珍しく怪獣退治に積極的じゃないか。電脳世界になら行けるぞ……電送能力を使えば」

「えっ!? 行けるんですか?」

「昨今の巨大ヒロインは、そのくらいのコトもできないと見向きをされなくなる。

一日だけ待て、華奈を電脳世界に送れる人物を連れてくるから──ところで華奈、おまえ弟は欲しくないか」


「なんですか、いきなり……そりゃあ、一人っ子ですから。昔はアニメを観て弟がいる姉弟の子を、羨ましく思った時期もありましたけれど」

「そうか、弟が欲しいか……ふふふふっ」

 切り口のような口から、二つに割れた舌をチロッチロッ出して笑っているタマタマンに、華奈はイヤな予感がした。


 次の日──タマタマンは一匹の白ネコを連れてきた。

 どこから、どう見ても、普通のネコに華奈は首をかしげる。

「白いネコちゃんですよね? これって、あっこれメスのネコちゃんだ……尻尾が二つに割れている?」

 白ネコは座った華奈に、体を擦りつけて甘えてくる。

 膝の上に乗って、くつろいでいる白ネコの頭をナデナデする華奈。

 タマタマンが言った。

「試験は合格だな、ネコマタ星人が苦手だったら別の方法を考えないといけなかった」

「えっ、ネコマタ星人」

 華奈の顔を見上げた、白ネコが人語でしゃべる。

「よろしく、ニャゴ」

「きゃあぁぁぁ!」

 驚いて、しゃべる白ネコを放り投げる華奈。

 着地したネコマタ星人が、後ろ足二脚で立つ。

「ひどいなぁ、放り投げるなんて」

 ネコマタ星人の姿が、尖り帽子をかぶりマントと、短いベストを着た姿に変わる。

 魔法使いのような姿の、ネコマタ星人が言った。

「あたしは『ドクター・ニャゴ』見ての通りの最強の魔法使いだニャゴ……空間を歪めて、電脳世界への入り口を作るニャゴ」

 ドクター・ニャゴが空中にネコ手で円を描くと、空間が歪んだ。


「これからは華奈を怪獣出現の現場に送るお手伝いをするニャゴ……送るだけで、帰りは今まで通り、露出痴女でバスや電車や歩いて帰ってくるニャゴ」

 その時、通信障害が発生した。

 タマタマンが華奈を指差して言った。

「出番だ華奈! 裸っぽい格好で戦え! サカナカナ!」

 光沢で乳首が見えないように隠していたシリコン生物と、股間の布型生物が避難する。

 早い展開に戸惑う華奈。

「ち、ちょっと待って! 未知のデジタルワールド電脳世界に行く心の準備が……おごっ」

 変身妖精のタマタマが華奈の口に飛び込み、タマタマから透過光の鮮血が飛び散る。


 ドクター・ニャゴが作り出した電脳世界への入り口に向かって、格子線グリッドに変わった華奈の体が頭から電脳空間入り口に流れて吸い込まれていく。

「うげぇ……口の中にタマタマの肉片が。ひぇーっ、変な感じ、気持ち悪い」

 華奈の体は、部屋にパンツを残して電脳世界に消えた。


 ~前編~おわり

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