最強最終回怪獣【ゼッタイドン】登場③〔宇宙女剣豪・ガーエル登場〕
マザードンがニャゴ博士に言った。
「さっそく、ゼッタイドンを出撃させて大暴れさせて……」
マザードンが最後まで言い終わる前に、ニャゴ博士のネコ爪がマザードンの顔面を襲う。
「ぶぁかもぅぅん!」
「うぎゃあぁぁ!」
顔面に爪傷が走るマザードンに、ニャゴ博士が言った。
「おまえは何もわかっていニャい……いいか、最終回は怪獣が登場する前には、不吉な予兆とか前兆の予告があってから、最終回怪獣が登場するもんなんだニャ」
「そうなんですか、知らなかった」
ニャゴ博士・2から引っ掻かれたマザードンの顔の傷が、見る間に再生して消えていく。
「こんなコトもあろうかと、最終回を盛り上げる。予兆災厄怪獣を数体用意したニャ……ついて来るニャ」
マザードンとニャゴ博士が、隣の部屋に入ると、そこには三体の怪獣がいた。
ニャゴ博士が言った。
「まず最初は、空の災厄だニャ」
ニャゴ博士が示したのは、空中にフワフワ浮かぶ、風船の集合体のような灰色の怪獣だった。
球根の根のようなモノが生えていて、集合体の中央にはニコニコ笑っている女の子の顔が埋もれていた。
マザードンがニャゴ博士に質問する。
「この怪獣、どんな攻撃するんですか? エネルギーを無限に吸収して際限なく巨大化するとか……体の一部を爆弾みたいに空から落とすとか?」
「何もしないニャ……風任せで空を流されて、雲みたいにどこかへ消えていくだけニャ……次は海の災厄ニャ」
次にニャゴ博士が紹介したのは、苦しそうにヒレを床でバタバタやって
いる巨大なエイの怪獣だった。
「エイですね」
「エイだニャ……大きなエイの怪獣だニャ」
エイ怪獣が、パタンと白い腹を見せると、腹部に呼吸困難に陥った高校生くらいの女の子の顔があった。
苦しそうな表情の女の子が言った。
「み、水……」
ニャゴ博士とマザードンは、地の災厄怪獣のところに進んだ。
地の災厄怪獣は、巨大なナマズにモグラの手足が生えた怪獣だった。
「ナマズですね」
「ナマズにゃ」
ナマズ怪獣が後ろ足で立ち上がると、高校生くらいの男の子の顔があった。
ナマズ怪獣の腹部と男の子の顔には、未開の部族が体に彫っている刺青みたいな模様があった
男の子が弱々しい声で言った。
「いじめないでくださぁい」
空、海、陸のおそるべき災厄怪獣と最強の最終回怪獣──人類のクライマックスは近づいていた。
青い地球を望む宇宙空間に浮かぶ小惑星上──怪獣サイズの女が立って、地球を眺めていた。
極小のチェーンビキニアーマー、剣帯に鞘に入った宇宙剣を提げて、頭の上にノコギリ状の天使の輪が浮かぶ。
宇宙女剣豪『ガーエル』だった。
以前、地球でサカナカナと戦って破れ、女同士の友情が芽生えた女剣豪だ。
ガーエルの後方には、作業服姿の怪獣が数体──疲れた顔で立っている。
ガーエルは、作業服怪獣から渡された、耐熱カプセルに入ったダークネス細胞対免疫細胞を見ながら言った。
「この、免疫細胞を地球にいるキングマザードンの所長に、ぶち込めばいいんだな」
「お願いします、所長がいなくなってから怪獣火葬場は大変な騒ぎで。火葬処理が間に合わない怪獣の死骸でいっぱいです……一刻も早く、元のマザードン所長にもどって帰ってきてもらわないと」
「承知した、なにやら地球にも災厄が迫っているようだからな……華奈が心配だ」
ガーエルは、手にした耐熱カプセルを体のどこかにゴソゴソ仕舞うと、抜き放った宇宙剣で小惑星を真っ二つにした。
ガーエルが乗っている小惑星の断片が地球へと落下していく。
大気圏突入の摩擦熱で、ビキニアーマーのチェーンが溶けて、ビキニアーマーが千切れたガーエルを追うように。
ハート型をしたシリコンシールのような、ピンク色の宇宙生物数枚が地球へと向かっていった。
【空の災厄・風船怪獣】
フワフワと町の上空に浮かぶ風船怪獣は、ただ風に流されていくだけだった。
空に浮かびながら風船怪獣は、ニコニコ笑う顔で。
「もうすぐ、すごい怪獣が来るよ」
そう繰り返して、最終回怪獣の出現を予告して。上昇気流に乗って成層圏まで上昇して破裂して消えた。
【海の災厄・エイ怪獣】
元気に海中から飛び出して海面を跳ねながら、客船の乗客に向かって。
「海~っ、来るぞ! 来るぞ! 最終回怪獣! 手強いぞ、あはははは」
そう言い残して、エイ怪獣は深海に姿を消した。
【陸の災厄・ナマズモグラ怪獣】
ビルの工事現場──地中から現れたナマズの体にモグラの手足がついた怪獣は、気弱そうな声で休憩中の工事現場作業員に言った。
「ボクをいじめないでください……最強の怪獣『ゼッタイドン』が出てきます、逃げてください……お仕事ご苦労さまです」
それだけ言うと、地底怪獣は地中深くに潜って、二度と現れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます