最強最終回怪獣【ゼッタイドン】登場 ④

 オフィス街のとある会社の女子トイレの洗面台──鏡の前に立って化粧直しをしていた女子社員は、自分の姿が映る鏡にヒビが入るのを見た。

「ひっ!?」

 鏡が割れたと思った女子社員は、割れたのは自分が立っている空間だと気づく。

「なに? これ?」

 女子社員の体に亀裂が走り、空間が裂けて出現した異次元空間の中からゼッタイドンが現れた。

 切断面になったビルの空間から出てきた、ゼッタイドンAと繋がったゼッタイドンBが足並みを揃えて歩き出てくる。

 AとBが同時に咆哮する。

 鳴り響くサイレン。

 人々の悲鳴。

 Aが呟く。

「えーと怪獣として、次は何をすればいいのかな?」

 後ろのBが言った。

「お姉さま、消えますよ」

「えっ?」

 Aが振り返ると、そこにBの姿は無かった。

 AとBを繋ぐ馬の胴体の切断面が見えた。

「ひぃぃぃっ!? エグい」

 Bの口がある辺りから、炎がチラッと上る。

 Bが言った。

「お姉さま、頭を左か右のどちらかに避けてください……最終回怪獣登場記念に一発、一千度の火炎球ぶっぱなします」

「ち、ちょっと! 待って! ひっ!」

 Aの頭の横をかすって発射された火炎球が、ビルを貫通する。

「挨拶代わりの火炎球でぃい! お姉さま、両腕を前後に同時に動かしてみてください」

 Aが言われた通りに腕を動かすと、脇から風が起こり建物や車両を吹き飛ばす。

 恥ずかしさに顔を真っ赤にするA。


 その時──三柱の光りが昇り。

「カナアァァァ!」

「ニクゥゥゥゥ!」

「ヤ、サイィィィィ!」

 の、声と共に巨大ヒロインと巨大ヒーローが現れた。

 現れた巨大ヒロインとヒーローを見て、ゼッタイドンがキョトンとした顔で呟く。

「裸?」

 全力で否定する華奈。

「裸じゃありません! こういう模様なんです!」

 最終回怪獣が、一体だけだと思っていた華奈たちに向かって透明なゼッタイドンBから、強烈な電撃が発射される。

「きゃあぁ!? なに?」

「うおっ!? こ、これは?」

 透明化していたゼッタイドンBが姿を現した。

 Bが電撃を浴びせた、華奈たちに向かって言った。 

「挨拶代わりの電撃プレゼントです……どうでしたか?」

 華奈たちが体を震わせながら言った。

「なんだか、きもちいぃぃぃ」

「本当だ、筋肉のコリがほぐれた」

「これって、人間だったら感電死するレベルの電流よね……あたしたちって、スゴすぎない?」


 華奈たちにとって電撃攻撃は、電気マッサージをされているような感覚だった。

 巨体の巨大ヒロイン&ヒーローに人間が、黒焦げになるほどの高電圧の電撃でもダメージは与えられない。

 最終回怪獣との決戦がはじまった。


 熱美の口からリバース光線が発射される。

「うぷっ、うげぇぇ」

 頬をふくらませた、ニクノアツミの口から飛ぶリバース光線は、そのままゼッタイドンAの腹部に開いた、バラ花の口に吸収される。

 両手を合わせて軽く頭を下げるA。

「ごちそうさま、おいしかったです……攻撃耐性のお返しです」

 Aの防具のような両肩が、パカッと開き蜂の巣状に並んだレンズが出現する。

 レンズから閃光が迸り、その光りを見た者の視力を一時的に奪う。

 華奈たちと、Aの後方で、閃光攻撃のとばっちりを受けたBが定番のセリフを発する。

「目がぁ! 目がぁ!」


 華奈、熱美、菜摘の三人とゼッタイドンA・Bとの戦いは続く。

 光線技は、Aの腹部口に吸収されるか、Bの胸部反射鏡で返される。

 直接攻撃はAの左腕の眼で受け止められ、右のごっつい腕で殴られる。


 Bの電撃攻撃、四次元攻撃、敵の記憶を一時的に奪う尻尾フリフリ攻撃……ロボット脚からは、砲撃やミサイルが飛んできて、時々バリアーで身を守り。瞬間移動で華奈たちを翻弄する。


 Bの伸びてくるハサミ腕の攻撃や、植物触手腕の攻撃も厄介だった。

 苦戦している華奈に、華奈の中にいる悪美が言った。

「しゃーねぇな。ワレに力を貸してやるよ……アクゥゥゥ!」

 華奈から分離した褐色肌をした悪美のダークサカナカナが、腰に手を当てて堂々とメディアのレンズ前に立つ。

 四体の裸体巨大ヒロイン&ヒーロー。

 悪美が言った。

「さあ、好きなだけ映せ……自分の体じゃないから、全然恥ずかしく無いぞ! わっははははっ」

 悪美の言葉に悲鳴を発する華奈。

「やめてぇぇぇ!」

 悪美の隠すべき部分には、物体や光りの加減で、どんなに動いても見えないように処理されていた。


 ダークサカナカナが、ゼッタイドンを指差して言った。

「あの、体型タイプ怪獣の弱点ならわかっている……特撮巨大ヒーローは、あの手の体型怪獣には決まって馬乗りする……とうぅぅ!」

 ゼッタイドンのAとBの繋がった馬の胴体を目がけて、空中に跳躍するダークサカナカナ。

 だが、その行動の対策はすでにニャゴ博士の手によって、対処されていた。

 馬胴体部分の背が、三角形に変形して三角木馬の形になる。

 悪美は、鋭角な木馬の上に勢いよく乗る。

「おわぁ! おっおっ!」

 股間にくい込む、三角形……意外なコトにダークサカナカナの顔に恍惚とした悦の表情が浮かぶ。

「こ、これいいぃ……はうぅ、くい込むぅ」

 悪美は、実は隠れ真性マゾだった。

「はうぅぅ……いぃ、いぃ」

 恍惚とした表情の悪美の体にBの植物触手が、巻きつき縛るような形になった。

 Bが言った。

「お姉さま、この日焼けした変態巨大ヒロインをやっつけちゃいます」

 Bは戦意喪失したマゾの悪美を、ポイッと放り投げて捨てた。

 地面に落ちた悪美は、体をピクッピクッ痙攣させて。

「えふっ、最高ぅぅ」

 そう言って、満足そうな笑みを浮かべて気絶した。

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