特殊処理的ロボット怪獣『メカカナ』登場④ラスト


 距離を開けて立った華奈に、メカカナは丁寧に頭を下げて挨拶する。

「はじめまして、あたし『特殊処理的ロボット怪獣・メカカナ』と言います」

 つられて頭を下げる阪名華奈。

「これは、ご丁寧に」

「突然ですが、あなたは敵のロボット怪獣が目から発射したビームを、片方の目で吸収して反対の目から発射するコトはできますか?」

「いやぁ、さすがにそれはムリだと思う」

「そうですか……それじゃあ、思いきっていかせてもらいます!」

 メカカナの両目から、ビームが発射される。避けた華奈の背後のビルが溶ける。

 メカカナに怒鳴る華奈。

「危ない! いきなりなにするのよ!」

「いきなりじゃありませんよ……最初に目からビーム出すって言いましたから。それじゃあ、こんなのはどうですか」


 メカカナの片方の腕の手首から肘にかけて、半円形の回転ノコギリが出てきて回りはじめ。

 もう一方の腕が火炎放射器に変化して、さらに大型の銃のようなモノまで腕に現れた。

 脇腹と両肩が開いて、蜂の巣状の多弾ミサイル発射口が現れ。

 戦艦の砲台のようなモノも体に二基出てきて。

 両膝には回転ドリルが回る。

 回転ノコギリが回る腕の拳に電流が走る。


 物騒なメカカナの姿に華奈は悲鳴をあげる。

「ひぃえぃ! 全身凶器! こんなのと、どうやって戦えって言うのよ!」

 後退りをはじめる華奈の背後で、光りの柱が昇り。

「ヤ、サイィィィィ!」

 の、叫び声と共に裸っぽい巨大な男性が出現した。

 華奈の親戚のお兄ちゃん『阿栗菜摘』だった。

 驚く華奈。

「菜摘お兄ちゃん? どうしたの、その姿?」

 裸体巨大ヒーロー【アグリナツミ】が、自分の胸を押さえて言った。

「阿栗菜摘は、もういない……オレのこの胸の中で生きている……意識が仮死状態になって。

これからは、オレが菜摘お兄ちゃんだ。よろしくぅ」

 菜摘の股間を隠すように、体の動きに合わせて菜摘の顔シールが移動する。

 股間に貼られているように見える処理をされた、笑顔の股間菜摘に華奈言葉を失う。

 華奈の背後に爽やかな、菜摘お兄ちゃんの姿が回想イメージで浮かぶ。

「菜摘お兄ちゃんが……あの、優しくて爽やかな菜摘お兄ちゃんの顔が股間に」

 華奈がイメージしていた菜摘の姿が、鏡にヒビが走るように崩れていく。

「いやあぁぁぁ! こんなの菜摘お兄ちゃんじゃない!」


 無視されたメカカナが、回転ノコギリとドリルの回転数を上昇させて自己アピールをする。

 華奈の細胞から作られたメカカナにも、菜摘の記憶は残っていた。

「あのぅ……菜摘お兄ちゃん、今あたしと本家華奈が交友を深めている最中なんですけれどぅ」

 メカカナを指差して、キザなポーズを決めるアグリナツミ。

「五分以内に倒す、さあっ、おまえが犯した罪の数だけ懺悔しろ」

「はぁ!?」

 菜摘の体が、サッカー選手のようにスライディングする。

 吹っ飛ぶ民家とアパート。

 メカカナのスネに菜摘の足がヒットして、転倒したメカカナの足をつかんだ菜摘は、メカカナをジャイアントスイングで振り回してから空に向かって放り投げた。

「でぃあぁ!」

「ひぇぇぇ!」

 ハート型に組んだ手から発射された光線が、空中のメカカナに命中して爆発する。


 メカカナを倒した菜摘は、華奈に近づくとそのまま華奈の体を、裸にビルの壁に押しつけるような体勢に入った。

 ビルの壁を背にした華奈に迫る、菜摘の顔。

 ビルの窓際には、巨大ヒーローから壁どんされている、巨大ヒロインを見学する社員が集まっている。


(ひぇぇっ、ビルどん)

 華奈の顎先を、顎クイして菜摘が言った。

「巨大ヒロイン続けてくれるかな? 華奈」

 大好きな親戚のお兄ちゃんから、裸同然の姿でビルどん、されてからの顎クイで悲鳴を発した華奈は菜摘を突き飛ばして逃げ出した。

「いやあぁぁぁぁ 違う! いつもの菜摘お兄ちゃんじゃない!」

 逃げていく華奈の後ろから巨大化した、イッタンモメン星人が追っていった。


 一方、菜摘にぶん回されて空中で爆発したメカカナは、等身サイズに変わって地上に落下して。

 気絶を示す渦巻きグルグル目で伸びていた。

近くには、同じようにグルグル目で意識を失ったニャゴ博士もいた。

 

 数日後──メカカナは、メカ少女好きが集まるマニアックなメカメカ喫茶店に、メカコスプレイヤーたちに混じって店員として勤め──華奈たちの味方になった。


第四話・カッパじゃありません!カメなんです!

~おわり~

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