特殊処理的ロボット怪獣『メカカナ』登場③


 予期せぬ不慮の事故で生命活動が停止して──歩道に倒れていた菜摘の体に、赤い球体が憑依して救急車が到着する前に、何事も無かったように立ち上がった菜摘がジョギングを再開していたころ──町の地下にあるブロンズ星人の秘密基地格納庫に、横臥して眠っていたメカカナのところにやって来たニャゴ博士が言った。

「起きるニャ、メカカナ」

 眠そうに目をこりながら、起き上がって横座りをするメカカナ。

「なんですかぁ、ニャゴ博士……こんな朝早くから」

「メカカナ、ここから逃げるニャ、こんなところ一分もいたくないニャ」

「どうしたんですか? 急に?」

「どうもこうも、ブロンズ星人たちの会話を偶然に聞いたニャ、連中は地球人が作った怪獣図鑑の作り直しの要求恫喝にメカカナを使うつもりだニャ」

「どういう意味ですか?」

「そうか、メカカナは怪獣図鑑を見たコトがないニャ……図鑑では怪獣も宇宙人も全部まとめて、怪獣扱いで載せているニャ」

「それがなにか?」

「考えてみるニャ、動物図鑑の中に人間も動物扱いで、同じページに並べて掲載されていたらどんな気分になるニャ」

「それは、ちょっとイヤかな」

「妙な箇所のプライドが高いブロンズ星人は、それが許せないニャ。宇宙人と怪獣は分けた図鑑を再作成させるために、出版社をメカカナに襲わせて図鑑の担当者を脅すつもりニャ」

 ニャゴ博士の体が、怒りで等身のネコ化動物サイズに膨れ上がる。


「そんなことをさせるために、わたしはメカカナを作ったんじゃないニャ! ロボット怪獣は侵略の手先で使ってこそ本来の性能を発揮するニャ」

 怒りが少しおさまった、ニャゴ博士の体がイエネコサイズに縮む。

 どうやら、ニャゴ博士の眼帯と白衣コートは、サイズに合わせて収縮可能な素材らしい。

 メカカナが、ニャゴ博士に質問する。

「脱出するってコトは、この宇宙人の基地をメチャクチャに破壊してもいいってコトですか? エネルギー炉にミサイルぶち込んで、キノコ雲級の大爆発させるとか」

「それはダメにゃ、格納庫の上部ハッチだけを破壊しても脱出するニャ……メカカナ、頭のカバーを開くニャ」

 メカカナは上目で、頭の金属パーツを見る。

「これ、開くんですか? どうやって?」

「鎖骨のくぼみを押すと開くニャ」

 メカカナが、鎖骨のくぼみを押すと頭のカバーがパカッと開く。

「わぁ、本当に開いた……脳ミソが見えていたら怖いんですけれど」

「大丈夫にゃ、そんなに心配なら手鏡で確認してみるニャ」

 メカカナが、手にした手鏡で開いたカバーの中を映して覗くと、そこに部屋のような空間があった。

「なんですか? 部屋みたいなのありますよ? ネコ缶の入った段ボールみたいなのも見えます」

「わたしのプライベートルームにゃ、脱出する時のコトも考えて念のために作っておいたニャン、その部屋にわたしを入れるニャン」

 メカカナが、ニャゴ博士を指でつまんで、頭の部屋に入れるとカバーが自動で閉じた。

 メカカナが呟く。

「頭に父親が住んでいる」

 メカカナの操縦室兼居住性スペースの中で、ニャゴ博士が指示を出す。

「さあ、足の裏から炎を出して、格納庫のハッチを破壊しても飛んでいくニャ」

 立ち上がったメカカナの足の裏から炎が吹き出して、メカカナは格納庫の上部ハッチを数枚を破壊して地下基地から飛び出した。

 そのまま、町に着地したメカカナの衝撃で町が破壊される。


 突然、現れた『特殊処理的ロボット怪獣・メカカナ』に向かって、スマホカメラのレンズを向ける町の人たち。

 アイドルになったような気分でメカカナは、レンズに向かって悩殺ポーズをとる。

「なんか注目されていますよ、ニャゴ博士」

 サービスで四つ這い姿勢になるメカカナ、当然のコトだがメカカナも本家サカナカナと同様。

 見えてはいけない体の箇所は、物体や自然物で絶妙に隠されて見えない。

 通学途中の小学生たちが、メカカナを指差して。

「カッパだ! カッパの姉ちゃんだ!」と、いう声が聞こえた。

 すぐに否定するメカカナ。

「カッパじゃありませんカメです! これから、どうしたらいいんですか? ニャゴ博士」

「ちょうどいい姿勢だから、地球人たちへの侵略デモンストレーションで甲羅からバズーカ〔無反動砲〕みたいな砲筒を出して、あの高層ビルを撃ち抜くニャ」

「了解、ニャアァァ」


 四つ這い姿勢から、両足をW字座りに変えて。発射角度を調整したメカカナの甲羅から、砲身が出てきて高層ビルに向かってロケット弾が発射される。

 ビルを貫通するロケット弾。

「当ったりぃぃ! 誰もいないフロアを狙いました」

「いい感じだニャ、この調子でどんどん町を破壊するニャ」

 立ち上がった、メカカナの口からイナズマのような反重力光線が迸り、自動車やトラックを次々と空中に撒き上げる。

 鳴り響くサイレン。

 お約束で、逃げ惑う人々。

 なぜか、火の見やぐらに吊られた鐘が鳴り響く。


 その時、光りの中から。

「カナァァァァァ!」の声と共に、裸体巨大ヒロイン【サカナカナ】が現れる。

「裸じゃありません! こういう模様なんです! えっ、あたしとそっくり?」

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