命短し暴れろ乙女③ラスト

 華奈はタマタマンの。

「虫けらを……」の言葉に首をブンブンと横に振る。

「できません、そんな酷いコトは」

 巨大化した華奈の体が、シュウゥゥと空気が抜けるように萎み、等身でカゲロウ星人と向かい合う位置で屋上に立つ。

 華奈が、ウスバに言った。

「裸じゃありません、こういう模様なんです……あたし、変態裸女じゃありませんから。

地球侵略みたいなコト、やめてもらえませんか………穏便に解決したいので」


 華奈の言葉を聞いていたカゲロウ星人は、美少女の姿で口元を手で押さえると。

「ゲホッ!」

 と、咳き込み。指の間から吐血のような、赤い液体を滴らせた。

「わっ!? なんか赤いモノ吐いた?」

 それを見て慌てるタマタマン。

「バ、バカ! 説得なんて通じる相手か! カゲロウ星人に、幼体逆行する隙を与えたじゃないか! 逃げろ華奈!」

「へっ?」

「おまえの頭の中に入れた『怪獣図鑑』で、カゲロウ星人のページを調べてみろ!」


 華奈がタマタマンから強制インプットされた頭の中の、怪獣知識を検索する。

「ピピピッ………『カゲロウ星人、短命宇宙人、寿命が自然に尽きる前に一回だけ、アリジゴク幼体に逆行する……アリジゴク幼体になったカゲロウ星人は、成体の時よりも強い』え────っ!?」


 カゲロウ星人の体が光りに包まれ巨大化する、同時に頭部に二本のクワガタムシのような角が生えて、容姿も短スパッツにタンクトップ姿の健康体美少女に変わった。


 巨大化で崩れたビルの真ん中で、幼体カゲロウ星人はスリ鉢状の巨大なアリジゴク穴を作り出して、周囲のモノを次々と穴の中心に引き寄せて粉砕を開始した。


 咄嗟に巨大化した華奈は、アリジゴク穴の縁にしがみつく。

「ひいぃぃぃ!」

 絶体絶命のピンチに、華奈の体の中にいる悪美が言った。

「情けねぇ野郎だな、あたしが表に出て、華奈の評判落とす計画だったけれど………今回だけは助けてやるよ、あたしと交代しろ」

 華奈が悪美に交代の意味を訊ねる前に、華奈の意識がスゥーッと華奈中に入ってきて。

 憑依されたように華奈の体が悪美に乗っ取られた。

 華奈の目尻が吊り上がり、体が黒い裸体ヒロインにチェンジする。

 華奈に憑依した悪美が高らかに笑う。

「あはははははははっ、あたしの名は残虐非道の【ダーク・サカナカナ】あははははっ………ワレ、覚悟しいや!」


 アリジゴク穴の中に、自ら滑り込んでいったダーク・サカナカナは、カゲロウ星人幼体バージョンの顔面に、素足で連続足蹴りをする。

「おらっ、おらっ、おらっ」

 華奈の心の声が響く。

(ひえぇぇ、女の子の顔を蹴るなんて非道な………あたしじゃありません! あたしの体を乗っ取っている悪美がやっているんです!)

 

 悪美は、ひるんだカゲロウ星人の角をつかむと、穴から引っ張り出して上空へと放り投げて言った。

「ワレ、地獄に堕ちろぅ!」

 ダーク・サカナカナの口から、連続発射されるミサイル弾──カゲロウ星人の体が空中でバラバラに飛散して落下する。

 中継を見ていた子供たちは、ダーク・サカナカナの狂暴な姿に怯え、テレビの前で泣き叫んだ。

 華奈は、自分の口からミサイルが出たコトに白目点で惚ける。

(あたしの口からミサイル出た………あたしの口からミサイル出た)


 ミサイルで爆発されて地上に落下したカゲロウ星人の肉体の一部が、意識を失った薄羽の人間姿にもどる。

 高らかに笑いながら、アリジゴク穴から飛び出したダーク・サカナカナは、両手を腰にメディアのカメラ前に裸体を晒す。

「わははははっ、さあ好きなだけ撮影しろ! どうせ、あたしの体じゃないから恥ずかしくないぞぅ!」

 ダーク・サカナカナから、通常バージョンのサカナカナにもどる華奈。

 我に返った華奈が、裸体を両手で隠す。

「やめてください、撮さないで! いやぁぁぁぁぁ!」

 光りに包まれ、裸の巨大ヒロインの姿は消えた。 


 こうして、カゲロウ星人のカラーなタイマーを使った侵略は裸体巨大ヒロインの活躍で阻止できた──だが、我々人類は忘れてはいけない、虎視眈々と地球を狙っている宇宙人たちの存在を──こんな、しょーもない人類だらけの地球でも、狙う物好きな宇宙人はいる。


 そして、カゲロウ星人が抜けた薄羽は、ウザいほど健康な美少女になった。



第二話~おわり~



次回………第三話『酔っぱらったお姉さんは好きですか?』

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