第二話・パンツ儚い人生

命短し暴れろ乙女①〔薄幸美少女型宇宙人・カゲロウ星人『ウスバ』〕登場

 その日、制服姿の華奈は不機嫌そうな顔で自分の部屋に居座っている、等身の巨大ヒーローとゴスロリ幽霊を眺めた。

 額にサイのような角を生やした巨大ヒーロー『タマタマン』は、床に胡座してコミック本を読んでいて。

 三角の布を額に巻いたゴスロリ幽霊の『悪美』は、華奈のベットを占領してセンベイを食べながらスマホをいじくっていた。


 華奈が遠慮気味に二人に言った。

「あのぅ……すみませんが、室内着に着替えたいので部屋から出てもらえませんか……幽霊とヒーローの方」

 悪美が「はあぁ?」と、いったバカにしたような顔で華奈を見る。

「ワレ、ドタマ悪いんか。何度も言っているだろう、幽霊なんていないんだよ! これは、おまえが脳内で見ている幻だ!」

「いやぁ、だからそれって完全に幽霊の自己否定ですって」


 タマタマンが、コミックを読むのを一時中断して言った。

「着替えたければ、着替えればいいだろう。おまえにしか見えていないんだから、我々のコトは気にせずに堂々と」

「着替え……本当に見ないでくださいよ」


 華奈は、タマタマンと悪美に背を向けて学校の制服を脱ぎはじめた、下着姿になった華奈は、胸の谷間にある。金属的なカラータイマーを撫でる。

 タマタマンの声が、カラータイマーから聞こえた。

「下着は交換しないのか?」

 振り返ると、タマタマンと悪美が華奈の着替えを観察していた。

「しっかり、見ているじゃないですか!」


 ラフ着に着替え終わった華奈が銀色のヒーロー、タマタマンに質問する。 

「あのぅ……前々から気になっていたんですけれど、巨大ヒーローって何か着てますよね? 裸じゃないですよね?」

「んっ!? オレは、ずっとスッポンポンだが」

 華奈が部屋にいるヒーローが、全裸だったと知って顔を赤らめる。


「何も着ていないかったんですか!! だって、そのぅ……裸なら殿方の本来あるべきモノが股間に……見当たらなくて」

 コミックを読むのをやめた、タマタマンが口から二股に割れた赤い舌を、ペロペロさせながら言った。

「もしかして、巨大ヒーローが哺乳類だという先入観で今まで見ていたのか……オレは、体温が恒温のハ虫類型種族ヒーローだ」

 巨大ヒーローの意外な事実を知って驚く華奈。

「恒温のハ虫類!? あっ、でもそう考えたら 。

肩にウロコがあったり、飛ばせるトサカがある、あの赤い巨大ヒーローの特徴にも納得が……寒さにあの巨大ヒーローが弱かったのも、完全な恒温ハ虫類に進化していなかったから」


「オレの体をよく見ろ、乳首やヘソの穴が無いだろう……卵生の証拠だ、背中には背ビレもあるぞ、性器が露出していないのは体の中に収納されているからだ……押し出せば出てくるぞ、見るか?」

「け、結構です」

 華奈は別の質問に移る。


「あのぅ……あの光線なんとかなりませんか、キングマザードンを倒したあの必殺光線……体のあんな場所から発射されるのは、ちょっと」

「あんな場所って、どこだ? はっきりと、口に出して言わないとわからないぞ……ほれほれ、言ってみろ」

 タマタマンの誘導に引っ掛かった華奈が、赤面しながら答える。

「あのぅ……座り込んで開脚した、女の子の大切な 真ん中部分の……はっ!? 言えるか!!」

 悪美が「ちぇっ」と、舌打ちする声が聞こえた。


 タマタマンが頭を描きながら華奈に言った。

「必殺光線が出る場所なんて、体のどこからでもいいんだぞ、目や口や胸やヘソから光線出してもいいんだぞ……光線の名称が変わるだけだ」

「そうなん……ですか」

「ヒーロー仲間の中には、ハゲ頭から光線出すヤツや、尻から出すヤツもいたな……脇の下とか、足の裏とか、踏んばってイメージすればどこからでも光線なんて出せる」

「そういうモノなん……ですか」

 華奈は今まで抱いていた巨大ヒーローのイメージが、崩れていくのを感じた。


 タマタマンが、どこに穴が開いているのかわからない、鼻を指でほじくりながら華奈に質問を促す。

「この機会に、巨大ヒロインになった自分の体のコトで、知りたいコトがあったら聞いてみろ──答えられる範囲の質問なら答えてやる……

あっ、男のオレに巨大化したヒロインの、生理周期とかを質問されてもムリだからな」

 華奈が、赤面でモジモジしながら質問する。

「それじゃあ……あのぅ、裸で怪獣と戦うのをなんとかしてください……恥ずかしいです」

「はぁ!? どこが恥ずかしいんだ? この世のすべてを風呂場だと思えば恥ずかしくないだろう」

「そんな、露出狂女のような発想の転換できません!」

「世話がやけるヤツだなぁ……地球人ってのは面倒だ」


 今度はタマタマンは、どこに穴が開いているのかわからない耳の穴に、耳掻きを突っ込んで耳垢をほじりながら言った。

「特別サービスで『モノ隠し』してやるよ、それなら巨大化しても恥ずかしくないだろう」

「『モノ隠し』って? なんです?」

「巨大化して局部とか乳首が見えないように、ビルの陰とか、光線の加減でどこから見ても見えないようにしてやる……人の広げた手とか、木の繁った枝とかで……それなら、堂々と怪獣と戦えるだろう」

「はぁ……わかったような、わからないような」

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