第2話
「今日は転校生が来ました。」
そう先生が言うと、教壇にいる女の子は
「秋月薫です。」と言った。
その女の子は顔が整っていて、肌だけでなく、髪まで白く、目はくっきりしていて青かった。
「席はそこだ。」
そう言って先生が指さしたのは僕の隣の席だった。その転校生が教壇からこっちの方向に歩いてくる時に目が合うと、僕は恥ずかしくて目を逸らした。
よし、今日は昨日の代わりにしっかり天体観測しよう。そう思って日が暮れるとまた裏山へと向かった。
昨日の女の子はいるのかななんて期待をしていつもの場所へ行くと誰もいなかった。少し残念に思ったが空を見る準備をしていると後ろから声をかけられた。
「あの、すみません。」
「うわっ!」
いきなりで驚いてしまった。
振り返るとその女の子は今日学校に来たあの転校生だった。
「あ、あれ今日転校してきた...」
「隣の席の影山君だよね?」
「う、うん、そうだけど。どうしてこんなところに?」
「月の光を浴びに来たの。」
「どういうこと?」
「私、月の光を浴びないと生きていけないの。影山君、昨日もここにいたよね?」
「え、うん、そおうだけど...もしかして昨日ここに居たのって秋月さんだったの?」
「そうだよ。この山は月当たりがいいの。」
「そうなんだ。」
月の光を浴びないと生きていけないってどういうことなんだろう...なんか聞きにくい。そんな風に思っていると、
「私、変な病気にかかっちゃって、私にとって月の光はみんなにとっての太陽の光で毎日浴びないと体が弱っちゃうの。太陽の光を浴びて体に必要な物質が生成されたりするのは知ってる?」
「うん...聞いたことあるような?でもなんか大変そうだね。」
「まぁね、でももう慣れちゃった。それに月の光を浴びてる時間、好きになったから今はそんなに大変だと思わないわ。」
「僕もここで星を見るのが好きなんだよね。」
「そうなんだ。影山君は星を見にきたんでしょ?」
そう言うと秋月さんはぐっと僕の腕を引っ張った。
「ちょっとこっちに来てよ。」
「ど、どこ行くの?」
「まぁいいから着いてきて。」
そうしてしばらく歩くと着いた所は木の影がほとんど当たらない、空が一面に見える場所だった。
「どう?ここ、綺麗でしょ?さっきまで空がしっかり見える所探してたら見つけたの。」
「うん、凄い。こんなひらけた場所があったんだね。」
「ここで一緒に星見ようよ。」
そしてそこで僕たちは地面に寝そべった。
「星のこと教えてよ。」
「もちろん。天の川にあるあの星、あれがアルタイルで左にあるのがデネブ。もう少し上に行くと、ベガっていう星があってこれを結ぶと夏の大三角。七夕だとベガは織姫でアルタイルは彦星だよ。」
「へーそうなんだ。綺麗ね。」
そう言うとだんだん秋月さんの体が光り始めた。東から月が出てきたのだ。
光ってる秋月さんが綺麗で僕がぼーっと彼女のことを見てると
「何?私、変に見える?」
「いや!全然むしろすごく...」
「すごく?」
「き、きれいだよ...」
「...ありがとう。」
そうして空を眺めながら小一時間過ごした。
「もう夜遅いし、帰ろっか。」
秋月さんがそう言って麦わら帽子を被って立つと光は段々薄くなっていった。
「明日もいる?影山君。」
「うん、毎日いるよ。秋月さんは?」
「私も。」
そうして明日も会う約束をして、山を降りるまで2人で帰った。
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