黒の部屋 5
『やっぱり、お前になら見えるのか? 色々』
『アパートに引っ越した事は美香から聞きました。そこで何人亡くなってるのかは知りませんが、そんな部屋初めて見ましたよ。どうせ美香が誰の忠告も聞かず勝手に住み始めた物件なんですよね?』
図星だ。親友だからか、行動が筒抜けらしい。
『角部屋ですか? 二○一号室でしょうか?』
『……あぁ』
よく分かるものだ。
『そうなんですね。条件さえそろえば、よくある事例です。とにかく、ほんの少しだけでもいい。今すぐその部屋から出て。美香が言う事を聞かなかったら、優太さんだけでも出て!』
そこまで親友から強く言われたら、どうしようもない。
「美香、アイス食いたくね?」
「だねー。買ってきてよ」
「お前も来いよ。ついて来たら、ちょっとお高いアイスおごってやるぞ」
むー、と一言。夕暮れで涼しい時間帯なので、そこまで暑くはない。しぶしぶ美香も喫茶店についてきた。
『実行されてないとは思いますけど……定点カメラ付けてます?』
『いや、付けてない。盗撮だろう、そんな事したら』
『盗撮がどうのこうの言ってる場合じゃないんです、その物件。本当に、あり得ないくらいに危険なので。ちょっと私そっちに行きますね。それまでに定点カメラ一台だけでもいいから、付けさせてもらってください』
この言葉には唖然とした。この親友、自分から動いた事がない。あったとしても、金絡み。
「どうしたの、さっきからスマホばっかり見て」
「え、いや。晶とラインやっててさ。ほら、定点カメラ設置させてもらえって」
内容を見せて、とりあえず了承は得る。軽蔑の眼差しを向けられたが。
「プライベート、全くない感じだね」
「一ヶ月の我慢だ。ここでの寝泊りは厳禁だってよ。どうする?」
「それが私の仕事だから、がんばって寝泊りするよ」
でた。一度言い出したら何も言い返させずに一点張り。頑固者。テコの原理クラッシャー。
その日は、自前のカメラを持って美香の部屋へと取りつけさせてもらい、帰宅。帰って、と言われたので仕方ない。とはいっても、ファミレスでずっと監視を続けさせてもらっている。彼女は真面目というか、仕事熱心というか。
スマホで遠隔操作しながら、異常がないか確認。ええい、カメラ目線で手を振るのやめい。
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