黒の部屋 4

「はっ? え。あの、冗談ですよね? 私は止めていただきたかったのですが……」


「本人がここに住む気満々なので、仕方ないです」


「……かしこまりました。では、こうしてはいかがでしょう? アルバイト、という形で、この物件に一ヶ月お住まいになられるというのは。お給料は三十万円ほどで、引っ越し費用もこちらで負担させていただきます」



 元々お金を出して住もうとしていた美香にとっては、願ってもいない話だった。引っ越し費用だけでバカにならない。力強く頷いている。



「ただし、何が起きても、絶対に最初の一ヶ月はこの物件に住んでください。一日でも泊まりに出かけてはいけません」


「友達連れてきてもいいですか?」


「原則、ここは一人暮らし専用なのでお一人でお願いします。昼間でしたら大丈夫です」


「はーい!」



 元気な挨拶と共に、物件紹介は終わった。




      2




 それから、数日が経った。段ボールを開封し、様々なものを部屋にちりばめる。もちろんその時は優太も一緒に。面倒くさそうな顔をして、ワンルームに置いていく。



「これでいいのか?」


「うん、ありがとう! おなかすいたでしょ? 今ごはん作るからね」


「あぁ、悪い」



 酒も入り、悪乗りして二人してスマホで写真を撮る。それを地元に残った親友へとメール送信した。スマホを置いた瞬間、ラインの音が鳴り響く。



『はい?』



 一言だけ。本当に、ただそれだけ送られてきていた。続けて更にラインが来ている。



『大宴会ですね。直ちに、そこから逃げてください。少なくとも、そこで寝泊りだけは絶対にしないで!』



 由緒正しい御家柄の霊能者の言葉。素人目からしたら、一体どこに何が映っているのか分からない写真。

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