都市伝説 4

「あ、亜歌音……いるの?」



 返事はない。一歩も動けなかった。進む事も、この部屋から出る事すらも。



「ね、ねぇ、亜歌音……?」



 携帯電話を鳴らしてみる。着うたが辺りに響いた。アイドル歌手たちが盛大に盛り上げてくれているのに、この部屋の静けさは異常すぎる。


 勇気を振り絞り、一歩、また一歩と友人の部屋を歩く相坂。床が抜けそうだ。そういう物理的な恐怖もあり、もしかしたら一万円未満の物件なのかもしれない。


 短い廊下の奥には、一つの部屋。そこに、布団が敷かれてある。テレビは砂嵐が流れていて音声はない。


 しなる木の廊下。


 首を覗かせると、亜歌音の姿があった。ただその顔は、何か恐ろしい物でも見たかのように大きく歪んでいる。



 死んでいた。



 隣で小さく笑っている男の子の人形は、当時の相坂てへぺりょに気付かれる事はなかった。

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