放課後デート

  「圭くーん」

 手を振りこちらに近づいてくる笑顔の少女は薫だ。

 「ん?どうしたの?」

 「今日ねぇ、カラオケ一緒に行かない?」

 「え?!」

 カラオケか…。カラオケ?!密室男女…不味いだろこれ。

 「だめなの…?」

 上目遣いで訴えてくる薫に負けた俺は、すんなり了承してしまった。

 「鴫谷は誘わないのか?」

 ふと疑問に思い聞いてみると「コナイ ミタイ」と片言で言われてしまった。

 「さ、さぁ行こう」

 薫は手を天に掲げて俺を誘導する。


 「ここか」

 デカデカト看板に『カラオケ』とわかりやすく書かれている。

 「いらっしゃいませ」

 中に入るとかなり広いエントランスが待っていた。

 「何名様ですか?」

 「2名です」

 薫が指をピースの形にして答える。

 「時間の方はどうなさいます?」

 「1時間で」

 「只今カップル割引で30分間無料になっていますがどうします?」

 「…お願いします」

 薫は少し悩んだ挙句カップル割引を頼んだ。

 「202のお部屋です」


 「薫カップル割なんで頼んだんだ?!」

 「?!」

 「何故、驚いた顔している?」

 「カップルじゃないの?」

 薫はまだ不思議そうな顔をしている。

 「カップルじゃないよ」

 「私の事おんぶした!」

 「お前のカップルの基準ってなんだ…」

 「まぁ、なんだ、会計の時に謝るんだぞ」

 「…わかった」

 少ししょんぼりさせてしまった。

 「さぁ、歌おう!薫」

 そう言ってマイクを差し出すと、薫はすんなりと受け取った。

 「歌うね」

 薫は慣れた手つきで予約するタブレットを弄り、曲を予約した。

 

 「君が 好き~」

 そのフレーズの時にこっちに指を向けてきた。

 「よかったよ、可愛かった、最高」

 そう言って褒め殺すと、頬を赤く染め恥ずかしそうに座った。

 そこから1時間経過した。

 店員さんには謝罪し、しっかりと1時間分のお金を払った。


 「ね、また行こうね!」

 「そうだね、また行こ」

 そう言った後、薫は俺の手を取った。

 「温かい…」

 「薫の手も温かいよ」


 そんな二人の光景は鴫谷に見られていた。

 「え…?嘘でしょ…」

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