甘いのは砂糖のせい

 鴫谷『今日の夏祭り一緒に行かない?』

 

 突然携帯が鳴ったと思えば、鴫谷しぎやからメッセージが来ていた。

 なんだこれ?俺は今デートに誘われているのか?

 

 三井『もちろんOKだよ』


 気がついたら了承の返事をしていた。やはり深層心理はデートをしたいそうだ。

 

 鴫谷『やった~!浴衣きてくね~』

 可愛い猫が赤面しているスタンプが送られてきた。


 鴫谷『待ち合わせは。学校の校門前17時にね』

 追記で鴫谷からメッセージが送られてきた。17時か、待ち遠しいな。



「早く着きすぎたな」

 腕時計で確認すると時刻は16時半、早く着きすぎたな。

「「あっ」」

 そこには着物姿の鴫谷の姿が。


「やぁ!三井君」

「やぁ、鴫谷さん」

 挨拶を済ませた二人は夏祭り会場に歩き始めた。


 会場に着くと辺りは騒がしく屋台の匂いが漂ってきた。

「わあぁぁぁあ!」

 鴫谷は目を輝かせながら周を見渡している。

「何する!?食べる?遊ぶ?」

 楽しそうに話す鴫谷の姿に見とれていると、鴫谷は視線に気づいたのか恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「そうだな、小腹空いたし…何か食べる?」

 少し緊張も晴れたのでお腹が鳴った。

「私もお腹減ったー食べよ?」

 意見が一致し、近くのリンゴ飴の出店へと向かった。


「ふふ、お二人さんね、一つおまけしとくわ…二人で仲良く食べるのよ。うふふ」

 出店のおばさんは何故か意味な笑い方をして、おまけしてくれた。ってかそう考えても二人で分けるって困難じゃね?こんなに硬いリンゴ飴をさぁ。

「おいしい!」

 鴫谷はこんな一大事分け方問題の時も幸せそうにリンゴ飴をペロペロしている。

「おばさんから貰ったリンゴ飴も食べる?」

 既に食べ終わった俺は、もう一個のリンゴ飴を差し出した。

「駄目だよ!!二人で食べてってお店の人言ってたじゃん!!」

 少し不機嫌そうに鴫谷はリンゴ飴を舐めた。


「ふふ。隙あり~」

 鴫谷は俺が持っていたリンゴ飴に飛びついた。

「うふふ。油断してるからだよ~」

 まってくれ。これを二人で分けるのか?この子舐めて食べているぞ。

「ほら三井君も食べなよ~!」

 そう言って彼女は俺の持っていたリンゴ飴を奪って、俺の口元にそれを近づけた。

「はい、あーん」

 ちょっと待って。これって間接キスじゃん。ヤバいって。

「間接キスになるぞ!!」

「それでいーの」

 彼女は俺の発言に動じなかった。これは食うしかないな。

「はむ」

 俺は鴫谷が舐めたリンゴ飴を食べた。

「えへへ。間接キッス~」

 何でそんなに嬉しそうな顔するの?勘違いしてしまうだろ。


 初めて間接キスの味は甘酸っぱいようなリンゴの味だった。

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