お客様?それとも? feat.ジュン

第23話俺って現金なヤツだよなぁ

今日は早出!

昨日までのイライラがキスだけで落ち着いた。

俺って現金なヤツだ。

クレームなんかに負けないぞ!と元気に歩いて出勤!


それにしてもアキラさんが家に来るとは思わなかったなあ。顔ニヤケそう。

俺も本当は会いたかったしゆっくり話したかったんだ。

気持ち通じているって感じが凄く良い!!


さて、本日は完全に裏方に回ります。

うちの店はSSSバーガーより狭いし隠れる場所が少ないんだけど。


焼きそば係やね。うん。


後は暇だったら休憩スペースに引っ込んで業務報告でもしよう。


最初はSSSバーガーの主婦達を頼ると言ったアキラさんに何故?!と少しイラッとしたけれど。

なかなか納得出来る提案だった。


主婦やら女子大生、女子高生とアキラさんの店は女性が多いんだよねぇ。何かアキラさんは興味が無いと解っているけど嫉妬してしまう自分がいる。


みんな仲良しだし。


従業員入口に到着。入店許可証を出してっと。


「おはよう。」

凄く大好きな声が背後から聞こえた。


「アキラさん!おはよー!」

振り向くと彼も笑顔だった。


「一緒に出勤なら泊まれば良かったかなあ。」

アキラさんがクスっと意地悪そう耳元で囁いた。

「もー!ゴールデンウィーク明けにね!」

入口で誰も居ないからってイチャイチャも楽しい。


「行こうか。」

「うん。」

まだモールも開店していない8時。お客様に会うことも無い。


お互いイライラしていた感じが今日は全く無く逆に幸せ気分で店に着いた。


「15時迄は店外には出ない様にね。」

「そうだね。」

アキラさんと暫しの別れを告げて店内に入った。


モールが開くまでに準備を済ませ無いとな。

アルバイトは9時から来るからそれ迄にっと。


俺はアキラさんの元彼と言ったけど。ヒロさんの可能性も無いとは言えないんだよなあ。

5年前のあの日。

須佐さんがお客様だからそして少し怖かったから従った後。

正直、自分のした事も須佐さんの事も嫌になって担当を変えて貰った。


だけど何度か俺に担当を戻せと電話がかかって来てたんだよね。理由は知らん!!聞きたくなかった!


まさかねー?


もう、元彼も須佐さんもどちらも俺達を恨んでそうで。


でも全然違うかもしれない。


何かアキラさん所の主婦マネージャーの1人が監視カメラ見せて貰える様に頼んでいるそうだし。


今日で犯人が解る。


多分・・・。



店が開店。

「そう言う訳で本当に今日は一切、表に出ないから。申し訳ない!」

アルバイト達に断りを入れて了解を得た。

「良いですよ。去年と同じなら今日はそう売れない筈ですよ。」

「前の店長は全然!!店に入ってくれなかったんですよ!焼きそば係でも皿洗いでも何でも助かります!」

パートの主婦さんが頼もしい。

と言うか・・前の店長は何してたんや?そんなパソコン業務する事ないで?


それは置いといて。


お昼は確かにパートさんの言う通りそこ迄忙しくは無かった。

でも、通常の日曜日くらいのセールスだ。


俺はコソコソと隠れながら焼きそばを作る。


外から見えないがお客様で知り合いの声はしない。

元々、九州にアキラさん以外の知り合い居なかったし。


本当に須佐さんや元彼だったら俺かアキラさんが気が付くよね?


遠目で見てるなら解らない?


フードコートはうじゃうじゃだし。

フードコートの外からでも店に俺が居るのは普段は見えるし。


14時には昼のピークを終えて店の奥に引っ込んだ。


パソコン業務やろう。


本当に今日は周りから見たら俺は不在だ。


しかし・・・15時30分頃だった。


取りたくない電話が鳴った。


「はい。お電話ありがとうございます・・・。・・・解りました。」


事務所からの電話。やっぱりお客様からの御意見。


「とりあえず休憩兼ねて事務所行ってくるよ。」

パートさんやアルバイトの子にそう言うと酷く心配してくれた。


店を出るとアキラさんと?

「やっぱり?電話あったんだね。」

「うん。えっと。お疲れ様です。」


主婦?SSSバーガーのマネージャー服を着た少しヤンチャそうな女性。

あー!例の人か。


「お疲れ様です!旭です。事務所行く前に警備室に行ったが良いかなーって思って。」


「あっ。宜しくお願いします。」

ペコっと頭を下げた。


本当はアキラさんと2人が良かったんだけど。仕方ないかぁ。


「ん?2人っきりが良かったか?」

クスクスと俺の顔を見て旭さんはそう言った。鋭い!!!

え?何で?俺達の関係は言ってないよね?


「旭さん。相変わらず口悪いですね。」

「いやー?これでも気を使ってるけど?」

アキラさんは俺への会話を逸らす様に旭さんに話し掛けた。

何かこの女・・苦手かも。


くそ。仕方ない。クレーマー捜す為だ。


従業員通路では特に会話も無く旭さんは鼻歌歌いながらノリノリで先を歩いて行った。


楽しんでんのか?

ムッとした顔が出そうになるのを抑えつつ1階従業員入口の警備室に着いた。


「お疲れでっす!やっぱ来たけん見せて!」

警備員と防犯の腕章をした人が数人いる警備室のドアをバタンと堂々と開けて旭さんはそう言った。


「おー。旭ちゃん。モールの店長にバレたら怒られるんだよー。」

「まあ、旭さんの頼みだからなあ。」

警備員さんも防犯の腕章の人も何時も凛々しい顔して笑顔も無いのに・・・。

何だこのフランクな態度は!?


「すまんね。ちょっと失礼するよ。ほら店長達。」

急かされて中に入った。


「旭さんて?警備員さんと仲良しなんですね。」

アキラさんがそう聞いた。


「あれ?言ってなかったっけ?私、元刑事だよ?」

旭さんは振り返ってケラケラと笑った。


えーーー?!!!元ヤンの方では無かったの!?


「まじですか。俺、元ヤンだと思ってましたよ。」

アキラさんは仲良しだから言えるのか正直にそう言っていた。


「そう見えるよねー?旭ちゃん悪そうだもの。これでも結婚前は東京で刑事さんやってたらしいよ。」

「旦那さんの転勤でこっちに来たんだよね。」

警備員さんが笑いながら教えてくれた。


「結婚を機に警察辞めた後はSSSバーガーに勤める前にうちの防犯に・・万引きGメンをね。やってたんですよ。」

防犯の腕章を付けたおじさんがニコニコ笑いながら防犯カメラに案内してくれた。


元刑事で元万引きGメン・・・。


で、犯人捜し。


そりゃテンション上がるわな。

鼻歌も出るわな。


旭さんが何か苦手なタイプから頼れるタイプに昇格した。やはり俺は現金なヤツだ。


「はいはい。昔話はこの位で。さっさと見せて!」

防犯カメラを見る小さなテレビが何台も並んだスペースの中央に彼女はドンと座った。


「お客様の御意見の見える位置のカメラ。これの朝から15時まで見たい。」

旭さんが急かす様に防犯のおじさんに訴える。


テレビには斜め上から丁度その位置が見えた。


「凄い。こんなハッキリ見えるんだ。」


今は書いている人は居ない。


時々、通るお客様の顔も結構判別出来る。


防犯のおじさんは今日の録画を巻き戻し始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る