第22話主婦陣強い・・

「え?何その御意見。店長、何か恨み買った?」

と、ちょっと元ヤンぽい主婦マネの旭さんが言い。


「店長に限ってそれは無かでしょー?」

生真面目でお客様第一主義の主婦マネの大野さんがクスっと笑い飛ばし。


「こら!冗談言っている場合じゃなかよ!真剣に対応考えて行かなきゃダメよ!!」

と最年長の式見さんがピシャリと言い放った。


「はーい。」

「ほーい。」

何だかんだと良く纏まった主婦マネージャー達。本来は後2人いて総勢5人の強者達だ。


色んな店舗を経験したがこれ程、仲良く若者達と隔たりが無い店ってなかなか無い。


「式見さんどうしましょうか。明日も来ますかねー。」

彼女はこの店の母親役。年もその位。


「見張る?お客様の御意見BOXの前に張り込みましょうか?」

旭さんがそう言った。


「流石にそれはねぇ。」

大野さんと式見さんは顔を見合わせる。


俺を置いて・・・何か話が進み出したぞ。


「あ・・。そうだ!店長が店に出なきゃ良いんじゃないですか?」

大野さんがポンと手を叩いて良いアイデア出たと言う顔をした。


「個人的クレームならそれも良かかもねー。」

式見さんが納得したので多分そうなるんだろうな。

まあ、ゴールデンウィークに休めるとは凄く嬉しいのだが。


「店長、明日は厨房から一切出ない方向で行きましょっか!」

あっ。休みでは無いか。


「確かに良いかもですね。お客様が居ないオープンで出勤して15時の御意見回収まで一切、表に出ないって言うのを試して見ますか。」

うんうん。もし、元彼やヒロさんだとしたら俺の姿が見当たらないならクレームは来ない筈だ。


問題はジュンだな。裏方に回れるだろうか。


「あっ。旭ちゃん、下の警備で監視カメラ見せて貰えるか交渉出来るね?」

式見さんが旭さんにそう言った。


監視カメラ?!見せて貰えるもんなのか?

「あー。多分、大丈夫っすね。」

旭さんは楽勝と親指を立てる。


「旭ちゃんだもんねー。」

「警備と仲良くしとくもんやねー。」

式見さんも大野さんも何か納得している。


旭さん・・・やっぱりちょっと謎な人だ。


俺は夜のシフトに入り主婦マネージャー達は明日のシフトの計画に入った。


何とも心強い。


店が引いた隙に隣のたこ焼き屋へ顔を出した。

ジュン居るかな・・・。


「すみません。大濠店長は?」

パートさんに聞くと今日はもう帰ったそうだ。


珍しく・・・ジュン帰るって挨拶、無かったな。


やっぱり怒っているんだよね。


内容は本当に大した事ないクレームだけど毎日あるとストレスが溜まる。


直接のクレームはその場で対応出来るのに顔の見えない相手って言うのがね。


「明日は店長はずっと厨房で外から見えない位置にしましたからね!」

帰り際、主婦陣達が嬉しそうにそう言って帰って行った。


「ありがとうございます。」

本当に頼りになる人達だ。



と言う事でその日の夜勤務を終えてモールを出た。


ジュン・・・。


メールや電話じゃダメだ。

行こう!


まだ大丈夫だよな?


寝てませんように!


ジュンの家に車を走らせた。


多分、車停めたので気づいてると思うんだけど。

部屋を見上げると明かりはついていた。


ピンポーン。


・・・待つこと数十秒。


「いらっしゃい。」

ジュンはフッと笑ってくれた。

「うん。どうしても会いたくてさ。」


顔見たら安心した。

「直ぐに帰るから。ちょっとだけ。」

「良いよ。お茶でも飲んでってよ。」


突然来ても散らかって無いなあ。

俺は散らかしがちだけど。


この空間落ち着く・・。


「どうぞ。」

座る様に促されてお茶も出してくれた。


「ありがとう。」

ジュンはちょこんと隣に座った。


「昨日も今日もごめんね。」

悩まず自然と言葉が出た。


「ううん。何か俺もアキラさんも振り回されてストレス溜まってたね。」

ジュンがフフっと笑う。

「連日忙しい中でのクレームだからね。」

本当に初日からずっと頭の片隅から御意見が離れ無いわ忙しいわで疲れとストレスのピーク。


「それで?ナイスアイデアは出たの?」

ジュンが聞いたので主婦陣の話をした。


「表に出ないか。なるほど。店に居なくてもクレームが来るかって事か。」

ジュンもそれは良いかもと頷いてくれた。


「個人的クレームなら来ないかなって思ってさ。後、監視カメラ見せて貰える様に手配して貰えそう。」

「は?!あの警備の?」


まあ、普通は事件でも無いと見せてくれないもんだよね。


「明日も頑張ろうか。頑張ろ。」

ジュンが安心した様に。そして甘える様に持たれかかって来た。


可愛い。押し倒したくなる。


「あー。早くゴールデンウィーク終わって欲しい!」

ジュンを抱き締めた。


「今日はキスで我慢しよ。」


キスすらも久しぶりで。


甘くて切なくて。


優しい唇。


これ以上やるとヤバいので帰る事にしたがあと2日でお互い休み。


「明日、犯人捕まえよう。」

「うん。俺も裏方に徹するから。」


お互い、明日はお客様とは一切接さない。


どうなるか・・・。楽しみになってきた。

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