客か否か feat.アキラ

第21話プチ喧嘩

ゴールデンウィーク3日目の出来事。


今日は特にイベントが無く天気も良かった為それ程忙しくは無かった。


お陰でお客様1人1人に気遣い出来た・・・筈だった。


あーーー。またしても返答に困る様な些細なクレーム。

勿論、ジュンの所にも来た。


いい加減にして下さいとモール事務所で怒られてしまった。


物凄く!気配りをし神経すり減らすくらいの対応しているのに。

身に覚えが無いと言えばちょっと横着かもしれないが本当に無い・・・。

クレームと言うものは1度は店で不機嫌な態度を出すものだ。

その場で怒れない人や謝罪に不満を持った人がモールへの『御意見』を出す。それが通例。

うちの主婦マネージャー達もそう言ってたし。


それに、字や書き方が2店舗共に似ている。同一人物説がやっぱり俺の中で浮上していて。


つい考えたくは無いけれど・・俺の元彼?と頭を過ぎった。


もしくはヒロさん・・・。


ビビり過ぎかもしれないが5年前にジュンと音信不通になってしまった原因。


共通にクレームを受けるのが不思議だし。


考え過ぎかな・・・。


元彼は地元企業に就職した筈、ヒロさんは東京だ。


でも、ジュンに「もしかしてアキラさんの元彼とかじゃないよね?」

と言われて自分でも思っていた事もあってイライラして。

俺は「ヒロさんじゃないの?」何て言ってしまいお互い不機嫌に。


「須佐さんは態々こんな田舎にクレーム書きに来る人じゃないよ。」


庇った?


「元彼?確かに陰湿だったけど。流石に今、やってたらストーカーでしょ?」

と俺も何故か庇う様な言葉を発してしまった。


「あっそ。じゃあ誰だろーねー?俺、帰るわ。」

「はぁ?何だよそれ!」

無視してジュンは従業員通路から店舗内に出ていき帰りは別行動。


その日の夜は電話もアプリでの連絡もお互い取らず・・・。

モヤモヤしたまま朝を迎えた。


まあ、個人的クレームなら十中八九、元彼の潮見先輩だろう。

そうだろうと解っているけど!


俺って案外意地っ張りだったんだな。


今日、ジュンに会ったら謝ろう。そう思いながら出勤した。



ゴールデンウィーク4日目。


夕方の電話を取るのが少し嫌になって来た。


「お疲れ様です。モール事務所の北川です。」

彼女は40代くらいのベテラン事務員さん。

あー。またかぁ。

またですよ!と文句を言われ。


店を出るとジュンが居た。


目が合うとやっぱり?と口がそう言っている。

「そうだよ。いよいよ犯人探しかな。」

「対応ミスは無いんだよね。本当に。」

しかし、お互いそれっきり事務所まで無言。



事務所でも北川さんにはブツブツ文句は言われたが。

北川さんも少し可笑しいと思ってくれた様だ。


「今日のはですね。丸っきり内容が同じなんです。」


北川さんは机に2枚の御意見を並べてくれた。


『たこ焼き屋店長?まじ最悪!』

『SSSの店長?まじ最悪!』


「字が同じと言うか内容も被りますね?」

遂に名指し来たかと思えた。


「何かしました?」

少し心配そうに北川さんは俺達に聞くが。


「クレームに繋がりそうなお客様と応対していないんですよ。」

俺がそう言うと北川さんも難しい顔で頷く。


「あの。これって何時に回収しているんですか?」

ジュンがそう聞いた。


「開店前と15時に行っています。この御意見は毎日15時の分ですね。」

そうか1日2回。

しかも朝から15時までの間ってことか。


「本当は謝罪コメントを書いて貰う所ですが・・ちょっと様子見ます?明日も・・・来るか?」

その好意は受けたい。


「そうさせて下さい。字を照らし合わせたいし。」

「宜しくお願いします。」

2人で頭を下げて事務所を出た。


帰りの従業員通路でジュンはムスッとした顔で考え事をしている様に見えた。

「昨日はごめん。」

ボソッと呟いた。


「うん。俺もごめん。」

ジュンも呟く様にそう言った。


「あの。うちの店のマネージャー達に相談してみるよ。」

何かアイデア貰えるかもしれないし。


「何て話すの?俺達の関係?」

何故そうなる!?

うーん。また不機嫌な顔だなあ。


「それは言わない。長年このモールに勤めている人達だから何か良い考えがあるかもしれないだろ?」

現に主婦達の1番の古株の人は勤続20年だし何かあると何時も頼りになった。


「・・・2人で解決しようよ!」

ジュンは不機嫌そのものでそう言った。そりゃあそうしたい。


「実行は2人で。でも、アイデアは貰う!現に連日、気配りしていても誰か全くわからなかっただろ?」


ジュンは黙ってしまった。


「ごめん。店に戻るよ。」

「うん・・・。」


またー!!険悪になってしまった!


いや、でも。でも、じゃない。


どうにかして仲を修復する為には犯人探しをしないとどうにもならない。


「ただいまー。お疲れ様です。」

店に戻るとマネージャー達が心配そうに声を掛けて来た。


そう。うちの店は黙っている訳にもいかないんだよねー。

秘密に出来ないんだよねぇー。


「大丈夫じゃなかったです。」

溜息混じりに言うと主婦マネ達にマネージャールームで囲まれた。


うん。予想通りの展開。


店の為に何かしたい!お客様の為に頑張りたい!

そんな人達だし。

何よりもお節介おばちゃん気質が全員強い。


「店長!今日の内容は何だったんですか?」

「店長。やっぱり変なクレーム?」

「毎日ってのがやっぱり可笑しいですよ。」

3人の主婦達は口々に喋る。


仕方ない。アイデア貰おう。


「今日の御意見の内容はね・・・。」


主婦マネ達も眉間に皺を寄せて深い溜息を付いた。

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