第4話やっと会えた
前々から異動の話は出ていた。
うちの会社の部署には居酒屋とたこ焼き屋のチェーン店もある。
そこの店長にと言う話。出世コースの奴らは行かない部署。
営業以外ならもう少し成果出せたんだけどなあ。これも言い訳。俺は世渡り下手だと思う。プライドだけは高いダメなやつと思われている。
そして俺は左遷組になった。
「九州なら行きます!」
俺の最後の悪足掻き。
当時アキラさんは九州の大学に行っていてSSSバーガーでアルバイトをしていた。就活の話をした時に彼はそのままSSSバーガーのフランチャイズに就職すると言っていた。
少しでも近くに居たい。貴方を捜したい。
会えるか解らないけれど同じ県内に居たら・・・。休みの度に近隣のSSSバーガーを探すのも良いかもしれない。
あの日の事を謝りたい。
そして本日、左遷先のブルーローズショッピングモールに来ました!
従業員入口の場所だけは聞いてたけれど。
中に入ってガチ迷った。
此処はどこ!?
俺は3階に行きたいんだぁ!!
ウロウロしたが結局上に上がる階段を発見出来ず適当にスイングドアを開けるとそこは・・食品売り場だった。
何処だよここ。いや、食品売り場なんだけどね。
もー知らんわ。エスカレーターで上がろ。そもそも3階のフードコートの場所も解らん。
3階をウロウロしているとやっと見つけたフードコート。
広いなあ。
おっ!我がたこ焼き屋発見や。
その隣にSSSバーガーか。此処にもあったんだ。
ドクン・・・ドクンッ・・・。
嘘。居る。
アキラさん!!!!
間違える訳ない。会ったのは1度だけだけど。
アキラさん。アキラさん!!
やっと逢えた。
フードコートの入口から中へ1歩、また1歩と客席へ。
フードコートの中央まで来て足を止めた。
俺に気付くかな。
違う。謝らないと。
どうしよう。もう俺の事なんて忘れているかもしれない。
やっと逢えたのに。
彼が俺を見た。目が合う。
「アキラさん・・・。」
優しい笑顔。天使かよ。
あぁ。フードコートに舞い降りた天使の様なアキラさんの笑顔に泣きそう。
良し!行こう。
挨拶しなきゃ。
「いらっしゃいませ。」
アキラさんにそう言われて言葉に詰まった。
おっ・・・覚えているよな?!
深呼吸して挨拶をした。
やっぱりアキラさんだ。5年たって更にカッコ良さが増してる。
自然と顔が綻んだ。
そしてアキラさんも挨拶をしてくれて優しい笑顔をくれた。
電話がかかってきた様で話はここで終了。
謝ろうと決めたのに突然出会うとは思わず本当に一般的な挨拶しか出来なかった。
これは運命?
そんな錯覚しそう。
俺は改めて自店舗へ。
アルバイトやパートの方へ御挨拶。
夕方迄は引き継ぎ業務や店舗業務を覚えるのに案外忙しかった。
研修でもやったし学生時代はタコパは日常だったから仕事は大丈夫だな。
お好み焼きも焼けるし。
それにしてもフードコートの店舗って狭い。休憩室なんて座るスペースだけだ。アキラさん所もそうなのかな。
店長業務はフードコートで前の店長はノートパソコン持って行ってやってたそうだし。
さてと。
「今日は帰ります。お疲れ様でした。」
「店長、お疲れ様でした。」
初出勤完了っと。
アキラさんまだいるだろうか。
あー。話したい!!
それと・・。俺、従業員入口に辿り着ける自信が無い!一緒に帰れないかなあ。
勇気を出して隣に足を運んだ。アルバイトの子かな?
可愛い女の子ばかり。アキラさんの趣味?じゃないよな・・・。まさかね。
5年で女に乗り換えたとか?
何かモヤモヤしながら1人の制服の違う子に話しかけた。
「隣の店長の大濠ですが、西山店長いらっしゃいますか?」
「あー。こんにちは。いや、こんばんはか。ちょっとお待ち下さいねー。」
少々、ポやっとした子だな。
社員なんだろうか?
暫く店を眺めて待っているとアキラさんが出て来た。
目が合った瞬間の笑顔。くぅぅ!!素敵過ぎる。
「ごめん。まだ仕事・・?」
かなあ・・・。
アキラさんは戸惑っている様にも見えた。でも快く一緒に帰ることを引き受けてくれて。優しい所、全然変わって無い。
俺、普通に話せているよね?
暗がりの迷路の様なバックヤードを一緒に進む。
本当にゆっくり冷静になると何と無くだが店舗との道筋が解ってきた。
そう。俺は冷静さに欠けている。
そして、変なとこプライド高くて意地っ張りなのは自分でも良く解っているつもり!
謝るタイミング・・・掴めない。
喫煙所で仲良く一服する事に。
変な会話はペラペラ出るのに。あーもー!!!
変に蒸し返して気まづくなりたくない!
今日は保留だ。聞かれたら答えよう。
でも今更謝ってもだよね?調子良すぎな俺の思考回路。
無事に従業員入口に着いた俺達はそこで別れた。
アキラさんは車で帰宅。10分くらいの所に借りてるらしい。
俺は徒歩。本当にモールの近所にワンルームのアパートが空いていて通勤が非常に楽だ。
明日から頑張ろう。
どうかアキラさんに彼氏が居ませんように。
そしてもう一度チャンスを下さいと苦しい時だけする神頼みをしながら帰宅した。
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