進展させたいんだ! feat.アキラ

第5話今度こそ

昨日はドキドキやらモヤモヤやらで帰宅してから寝付き悪かった。

ベッドに入って目を閉じると脳裏にジュンの笑顔。

やっぱり!ジュンは最高に可愛い!


夢にまで見てしまった。


夢の内容は思い出さない様にしていた5年前の出来事だった。


思い起こすと!

ジュンと連絡が取れなくなった原因。

ゲイバレした30%、知らないうちに嫌われる発言をした70%な気がする。


そう言えば可愛いとか言っちゃったり身長とか思わず聞いた気がする・・。


想像より遥かに小柄で可愛くて。男に可愛いとか言われても嬉しく無かっただろうし。それに身長はコンプレックスだったんじゃないかなと・・・。


と言う訳で。

もし上書き出来て友達に戻れるならやり直すと言う方針で行こう!


本当は何故だったの?と聞きたいけれど。もう少し仲良くなってから。

うんうん。友達になる事から始めるのだ!

勝手に納得して出勤。


「ジュンの家、何処なんだろうな。」

昨日は駐車場前で別れた。彼の家はモールから徒歩圏内らしい。

仲良くなれたら行きたい。妄想が広がってしまう。


本日の勤務は11時から19時。だいたいうちの店は3パターンの勤務体制だ。

お店のオープン業務、昼と夕方ピークシフト、お店を閉めるクローズ業務に分かれている。


基本的に主婦や夜間学生、通信高校生が朝から。大学生やフリーターが夜に働いてくれている我が店舗。

店長は1ヶ月のマネージャー達の希望シフトの空きや人員の少ない時間に入る様にしている。


今日はマネージャーの休憩出し2時間だけはガッツリ働いて後は時々忙しい時だけ店に入って。後はぼちぼち衛生検査のプランもやらないと。


これが毎年面倒なイベントの1つだ。

フランチャイズと言えど大手企業の看板を背負っているSSSバーガーはこう言う本社からの衛生検査的な事が年に3回はある。


ストレスが溜まる。


でも、隣の店にはジュンが居るんだよなあ。そう思うと仕事も楽しい。



それから週末まで休憩も仕事上がりも被らず・・・。

挨拶くらいしか出来なかった。


話したいんだけど忙しい。お客様優先なのがサービス業。


しかしチャンスは日曜日の夜にやって来た。

夜ご飯のピークを終えた21時過ぎ。


フードコートのお客様も疎らになって閉店へ向けての業務を少しづつ始めた時間だった。


ダストボックスの上に溜まったイートイン用のトレイを回収しにフードコートに出たらジュンがまだ仕事中だった。


今日は夜勤だったか!やった!


急いで店にトレイを置きに戻りいそいそと隣へ。


「お疲れ様。」

話しかけるとジュンはちょっと驚いた顔をした後にニッコリ微笑んだ。

「お疲れ様。今日は夜勤務だったんだね?」

「お互いね。」


あー。どうしよう。誘いたいなあ。

先ずは確認。

「ねえ。明日って仕事、何時から?」

ジュンはニヤっと笑って

「やっと休み!!」

と言った。俺も!!とテンション上がるのを何とか抑えて。


「ねえ。閉店後、そこのファミレスでも行かない?小腹満たしに。」

行くと言ってくれぇー!


「うん。何かデザート食べたい!行こう!」

「じゃあ、閉店後にね!」

よっしゃっ!!と言いたい気持ちを必死に抑える。


やった!1週間ぶりくらいにまともに話せる。


デザートとか。可愛いなあ。

似合う・・・。何て言ったらまた気を悪くさせそう。気をつけなきゃ。


テンション上がるー。

さあ、閉店まで頑張ろう。

閉めたレジのお金を纏めて翌日のレジ金を作って金庫にしまう。


そして少しづつ使わない機器を洗って貰う。

SSSバーガーは分担業務のシステムがきっちりしていてそれは閉店業務もだ。

レジ閉めやお金管理、納金、売上報告をするマネージャー業務。


厨房の片付け担当、全ての洗い物担当、カウンターの掃除や翌日の補充担当。

皆でそれぞれ仕事を進める。


そうすると余程、閉店ギリギリまで忙しく無い限り30分で帰れる。


と言っても他店よりうちはギリギリまでお客様来るんだよね。


でも、運良く今日は普段より暇だった。

22時過ぎには終わった。

「お疲れー。」

「店長、お疲れ様でーす。」


アルバイトは先に帰してパソコン入力で本日の業務は終了する。


「アキラさーん?居る?」

店の方からジュンの声が聞こえた。

「居るよー!」

ちょっと大声で叫んだ。

もう終わったのか。早いな。急がないと。


「お疲れ様。勝手に入ってきたよ?」

「良いよ。誰も居ないし。」

マネージャールームにジュンが入って来た。


「あっ。うちより広い。」

「そうなの?」


たこ焼き屋の休憩室はこの狭さより狭いらしい。


この空間に2人きり・・・。

手を止め無いようにパソコンの画面を見詰めて急いで入力。


「終わったよ。行こうか。」

「うん。何か仕事してる姿。良いね。」

ジュンにそう言われてちょっと顔が赤くなりそうだった。


店を出ると何処の店舗も閉店、もしくは閉店作業中。


フードコートの明かりも薄暗くなりモール内もシーンと静かだ。


何時もは賑わって煩いくらいのゲームセンターもほぼ薄明かりで朝とはまた違う光景に見える。


「何か1人でバックヤード通るの恐くない?」

ジュンが営業している時間よりも暗く感じる従業員通路でそう言った。

「確かに閉店後は静か過ぎるよね。」


オバケ出てもジュンとなら。何て不純な思いでニヤケそう。


「お疲れ様でした。」

「お疲れ様です。」

従業員入口の警備のお兄さんに挨拶して俺達は駐車場に向かった。

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