第67話 金の心配が半端ない!

 チュンチュンッ



 朝だ……朝が来てしまった……鳥の鳴き声は日本と変わらないんだな……。


 朝早くに起きてから俺は現実逃避をしている。


 金貨3枚しかない状態で今日乗り越えられるのか? 


 日本円で約30万相当だが────防具とか高そうだぞ?


 絶対無理だろ……不安過ぎて短時間しか寝れなかったんだけど!?



 例によってどこで待ち合わせなのかもわからないし────


 バアァァァァンッ



「コウキ、迎えに来たぞー」


 ティナさんがドアを勢いよく開け────ドアが板屑と化した。


 闘気を使っているのか? まさか素の力?


「……あぁ、迎えに来てくれたんですね……」


 俺はなんとか引きつる顔を隠し、返事をする。


「もちろんさっ! 楽しみにしてたからなっ!」


 物凄い笑顔だな。そんなに楽しみだったのか。


「そっ、そうですか。じゃあ──行きましょうか。そういえばどこに行きます? 防具屋って前に言ってましたけど……」


 たぶん、行き先に変わりは無いだろうけど、一応聞いてみる。


「コウキの武器を買おうっ! その武器はもう使えないだろ?」


 俺は部屋の隅に置いている剣を見る。ダリルさんから貰った剣は既にボロボロになっている。


 確かに剣は最低でも欲しいな……買えるかわからないけど。


「じゃあ、武器屋に行きましょう。場所わからないんですが、わかりますか?」


「それぐらいならわかるぞ? 付いて来いっ!」


 俺は壊れたドアを尻目に、歩き出す。


 途中カミラさんとすれ違い、謝ったら────「後で請求しますね」────と言われ視線が凄く痛かった……。


 ……お金の心配が半端ない。



 しばらく歩くと──


「ここだな」


 ティナさんが立ち止まった場所には剣と槍が十字に交差している看板のある店だった。


「へぇ〜、ここが武器屋なんですね」


 異世界には魔物がいる。


 武器屋は需要があるんじゃなかろうか? どんな武器があるんだろう?


 そんな事を思い浮かべているとティナさんから声をかけられる。



「さぁ、中に入ろう!」


 俺達は中に入ると──


「いらっしゃい」


 ──寡黙そうな親父さんがいた。


 俺は店の中を観察する。


 短剣、長剣、大剣、ナイフ、槍、斧、弓…………色々な武器が所狭しと置かれている。


「うわぁ〜凄いなぁ」


 俺は感嘆の声をあげる。


 店主は満足そうに頷き、ティナさんは誇らしい顔をしていた。


 俺も男の子だから武器を見るのは好きだ。特に日本ではお目にかかれないだけに凄く嬉しい。


「コウキは剣だよな? あの辺にあるし──ちょっと見てみようぜ?」


 俺は頷き、剣の置いている場所まで進む。


「おぉ〜色々あるんですね!」


 本当に作りが様々な剣が置いてあるけど────刀はないのかな?


 日本人ならやっぱり刀だよな〜。異世界のラノベとかで刀で無双する話とかあった気がする。


 俺もしてみたいなぁ。無双は出来ないかもだけど……。


 というか────めっちゃ高いな……目の前で最低の値段が金貨5枚か……。


 金貨5枚からが普通なのだろうか? それ以上に安い物になると……ナイフや短剣ぐらいか……。


 短剣は金貨3枚だし買える事は買えるが────量産品だと魔技に耐えられるか心配だな。


 ダリルさんから貰った剣はいくらなんだろうか? 一応短剣だよな? ここに置いてある奴よりもしっかりとした作りなのは素人の俺でもわかるぐらいだ。


 目の前に並んでるのより高いはずなのにダメにしちゃったな……。


 明日は訓練だし──謝ろう。


 というか手持ち金貨3枚で買えるのって量産品っぽい短剣ぐらいなんだけど……。


「コウキ、これとか良さそうだぞ?」


「どれどれ────っ!? 金貨100枚!?」


 日本円で約1000万円相当……。高すぎるだろ!?


 今の手持ちで買えるわけがないな……。


「それはミスリルソードだ。魔法付与がしやすく、魔法剣士にお勧めの剣だな」


 上客と思ったのか寡黙な店主が勧めてくる。


「さすがに手持ちがないですね」


「私が払おうっ! 店主包んでくれ!」


「ちょっと待って! そんな高価な物は貰えないですっ! おっちゃん買わないから包まないでっ!」


 豪快な買い物をしようとするティナさんの声に店主は剣を包もうとする姿を見て、急いで止める。


「気にするなっ! これでも金はちゃんと稼いでいる!」


「俺が気にするんですっ! それに──そこまでしもらう義理なんかないっ!」


 少し強い言い方になってしまったが、こんな高い物を買ってもらうなんてダメだ!


「…………すまない……」


「──すいません。こういうのって俺は自分のお金で買いたいんです」


 謝るティナさんに俺は理由を簡単に話す。


「そ……そうか……なら────」


 一先ず納得したティナさんは提案してきた────



 その内容を知った時、ティナさんは脳筋なんだなと納得してしまった。

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