第68話 これが異世界のデートか!?
俺は現在街の外にいる────
──そして──
──目の前には巨大なワイバーンという亜竜がいる。
以前に串焼きを焼きながら聞いた大将の話によると────討伐ランクAの強敵だ。
「ティナさん……何でこんな事になってるんですかね?」
「もちろん、それは金が必要だからだな! そんな事より──ティナと前みたいに呼び捨てにしろっ!」
「ティナ……ドヤ顔だね……」
そんな当たり前な顔をしないでほしい……これ絶対に危機的な状況だよ!
ワイバーンって空飛ぶんだぜ? しかも相当デカいんだ! 空高くにいるのに存在感が半端ない!
なんか鳴き声発して俺達の上を旋回してるんだ!
完全に俺達餌認定されてるって!
しかも、その事をそんな事呼ばわりしてるし!?
こんなもん単独で勝てるのダリルさんとか大将ぐらいじゃね?!
なんで武器屋でデートしてたのに、こんな事になってるかと言うと────
回想シーン
「──すいません。こういうのって俺は自分のお金で買いたいんです」
「そ……そうか……なら────狩りに行こうっ!」
「何故!?」
「剣を買う為だが?」
「何で狩り?!」
「魔物は売れるから?」
「いや、危険無く──地道に稼ぐ事にします」
「いや本当に凄く良い狩場があるんだっ! コウキなら問題無く狩れる! それに私もいるからなっ! 私は今度Sランクになるぐらいだっ! ほらっ、行くぞ────」
────という感じで到着直後にワイバーンが俺達に敵意を向けて来ているわけだ。
ティナは俺の返事は聞かずに担いで運んで来たわけだが、まさか「凄く良い狩場」にいるのがワイバーンだとは思わなかった……。
それに連れ去られながら、「強い所を見せる良い機会だなー」とか呑気に考えたこの時の俺をぶん殴ってやりたい。
討伐ランクAってキマイラと同じだよ? 俺の手に余るって!
強い所見せる前に死んじゃうよっ!
しかも空飛んでる魔物とかどうやって倒せと?
「ティナさんや……あれを俺が問題無く狩れるんですか?」
「そうだが? ドラゴンじゃないから余裕だろ?」
いや、何言ってるの? みたいな顔されても無理な物は無理だぞ?
「俺ってBランクぐらいの強さらしいですよ?」
「ん? 魔技使えるじゃないのか?」
「一応、使えますが──「ピギャァァァァァァッ」──」
「五月蠅いっ!」
俺が話している時にワイバーンが叫ぶと、ティナは大斧を────
────トマホークを投げるように、いとも簡単にぶん投げ────
断末魔をあげる間も無くワイバーンを真っ二つにし────離れた場所に死骸が落ちる。
「…………」
俺は口をパクパクとさせている。
次期Sランクと聞いたが────完全に人外だな……。
「──これで良しっ! それでコウキは魔技使えるんだろ?」
「つ、使えますね」
何事もなかったように話すティナに俺はなんとか返事する。
「大まかにAランクは闘気と魔技の両方の熟練度が高ければなれるから大丈夫だ!」
いや、俺まだ修行してそんなに時間経ってないんですが?!
しかも────討伐ランクと冒険者ランク比例してないって聞いてるから!
「いや、使えたとしても──実戦経験全然無いですからね?!」
「私の本能が大丈夫だと言っている」
なんて説得力の無い言葉なんだ!
脳筋か!? 脳筋なのか!? ここにダリルさんの女性バージョンがいるぞ!?
「ほらっ、獲物が到着したぞ?」
ティナが上を向いて言うので、俺も空を見上げると────またワイバーンが現れる。
ここはワイバーンしか現れないのか!?
「いやいやいやいや、そもそも──例えAランクでも討伐ランクAをソロで相手するもんじゃないでしょう!?」
「私はしていたぞ?」
あんた絶対おかしいって!
なんでAランクパーティー推奨の魔物を単独で倒してるんだよ!?
キマイラの悪魔が蘇るぜ……。
しかし──ここで格好良い所をなんとか見せたい……デートと言っても武器屋に行っただけだったしな。
根性だ──
──ただ、根性でなんとかなるとはとても思えないけど、根性でなんとかするしかない!
それに危なくなったら助けてくれる事を祈ろう。
「逝って来ますっ!」
「強くなったコウキを私に見せてくれっ!」
腕を組んで仁王立ちするティナは参戦するどころか、観戦する気満々だった。
本当に頼むよ! もうすぐSランクになるティナさんや!
俺は闘気を纏い、いつでも対応出来る様にする。
奇声を発して特攻してくるワイバーン────
段々と距離が近付いてくる。
────ん? 相当デカいような……。
うん、デカいな……軽く10mぐらいあるんじゃなかろうか?
あんな質量に突っ込まれたらミンチになる自信しかないっ!
こっちに来る前に勢いぐらい削げないかな?
「とりあえず────喰らえっ!」
俺は雷魔法を発動すると──掌から白雷がワイバーンに向かって放たれる。
デカい的の為──轟音と共に直撃するが──
────無傷……。
一応、ティナがいる安心感から落ち着いており、余計な事を戦闘中に考える。
普通さ……雷が当たったら──生物って死ぬと思うんだよね……Aランクの魔物は生物じゃないのか?!
それとも────俺の威力が弱いだけ?
そんな事を考えているうちに至近距離まで迫ってきた。
俺は体当たりを避け──ダリルさんから貰った剣に雷を付与して斬りつける。
────硬いな。
ワイバーンの表面に傷をつける程度で俺の攻撃は終わる。
まだ地上に近い場所にいる間に決着をつけたい。
だが──雷技だけじゃ無理だな。
向き合い、雷光を発動する。
バチバチッと俺の周辺は帯電する。
今の俺じゃ────雷光を使っても威力が足りない。
────そうだ! 風魔法使ってみよう。更にブーストして速度を上げて──剣にも付与したらかなり良い感じなんじゃないだろうか?
ぶっつけ本番になるけど……やる価値はあるな。
──剣を左後ろに引き下げた後ワイバーンに向け────雷技と風技を同時に使う。
「これが俺の──渾身の一撃っ! 【疾風迅雷】」
考え付いた言葉を言い放ち特攻する。
俺は雷光だけの速度より、更に早く駆け抜けワイバーンに近付き──
──間合いに入った瞬間に────
左後ろに引き下げた剣を速度に乗せて──左斜め下から右斜めに向けて右切り上げを放つ。
もらったぁぁぁぁっ!
────ガキンッ──────
「へっ?!」
えっ?
────剣が折れたぁぁぁぁぁっ!
ワイバーンの前方に剣の刀身が食い込んだ所ですっぽり折れていた。
ただ、技の衝撃波でワイバーンは吹っ飛んでいく。
その先を呆然と見詰めると────その先の木の上に大将がいた。
その顔は驚いているように見えた。
あんな所にいたのか……。
俺と大将は視線が重なると────大将は口を三日月状にした。
ん? 何か投げてる?
「「「ピギャァァァァァァッ」」」
…………傷を負ったワイバーンと……更に追加で3匹が空を飛んでこちらに向かって来る。
うおおぉぉぉぉいっ!
ワイバーンのトレインとか洒落になってねぇぞ!?
(格好良い所を見せてみろ)
そう、大将の口が動いた気がした。
俺は口パクして返事する。
(鬼っ!)
大将が遠くで笑っていた。
「おっ、腕が鳴るなぁ〜! コウキ楽しくなってきたなっ!」
ティナがワイバーン4匹に気付いてそんな事を俺に言ってくる。
全然楽しくないっ!
普通のデートを所望するっ!
こうして、バトルデートが継続される。
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