第49話 俺は弱いな……
俺達は街を少し遠目から確認出来る距離まで到着すると────
────目の前には大量の魔物が街を取り囲んでいた。門の所では騎士団や冒険者達が防衛している姿が目に入る。
「昼過ぎは大丈夫だったのに……」
俺は1人呟く。
「さて……街の中に入るにはあやつらを殲滅せねば行けん」
皆は大将を見ながら頷く。
「数はおよそ見た感じで────約2000。大型の魔物もおるみたいじゃ。わしの情報によると──これでもまだ一部。普通なら──長い夜になるじゃろう。とりあえず────生きて全員街に戻る事を優先する。コウキは実戦経験が浅い。わしの後ろをついて来い。他はコウキを中心に陣形を組んで進め」
普通ならという部分で何故がドヤ顔の大将……おそらく、自分がいるから長い夜にならないと言いたいようだ。
「「「「「了解(にゃ)」」」」」
「大将、俺も戦えますっ!」
俺も戦えると反論する。
「あそこにはAとBランクの魔物が何匹か混じっておる。お前にはまだ早い」
「なら、エリーさんも──」
「エリーの本職は剣士じゃ。しかもお前よりは確実に強い」
「──なっ!? 回復師じゃ……ない?」
俺はエリーさんを見る。
エリーさんは気まずそうな顔をしていた。
「大人しく指示に従え。従わぬなら──気絶させる」
そこにはいつもの悪ふざけの大将はおらず、1人の猛者がそこにはいた。
「わかり……ました……」
ぶっちゃけ怖い。
悔しいが──従わざるを得ない……。
「では行くぞっ!」
一斉に門に向かって走り出す。
先頭は大将──どんな敵も一刀両断して行く。
その真後ろは俺、その左翼をエリーさん、右翼をリリーさん、後方をクレアさんが担当している。
「鬱陶しい──にゃっ!」
リリーさんは闘気を纏いながら右側から襲ってくる有象無象の魔物の首を容赦なく刈り取り──
「コウキ……大丈夫──私が守るから────【雷光】」
左側にいるエリーさんはダリルさんと同じように雷を纏い──次々と屠っていく。
守るからか────その言葉が胸に突き刺さる。
あぁ、俺は弱いのか──
──そう思ってしまう……。
「風刃──」
クレアさんの方を振り向くと、そこに眠そうな感じはなく──風の刃で追いかけて来る魔物を次々と切り刻む。
今、3人が殺した中にはBランクの魔物もいる。
全員が俺より──間違いなく強い……。
BランクとAランクでもここまで壁があるんだな……。
エリーさんがこれほど強い事にも驚きだ……。
「全員止まれっ!!!」
大将の一声で全員がその場に止まる。
俺はどうしたのかと皆を見ると────全員が空を見上げていた。
いったい何が────!?
そこにいたのは──
獅子の体に鷹の頭────グリフォンだった。
しかも単体ではない……群れだった。
グリフォンの討伐ランクは確か────Aランク。
この討伐ランクは冒険者ランクに比例してはいない。
例外はあるが──討伐ランクAの場合はAランクパーティで相応となる。
──そうダリルさんから聞いている。
大将なら単独撃破は可能だろうが────残りのメンバー全員で1匹が限界だろう……。
それに立ち止まった事により────俺達は囲まれる。
まだ戦闘は始まったばかりだ……。
大将以外の顔が硬直する。
「コウキ──男なら────これぐらい切り抜けてみろ。ここはわしがなんとかしてやる────行けぇいっ!」
足手まといは先に行け────俺にはそう聞こえた。
そして、大将の気合いの入った声と共に放たれたのは火魔法を付与した飛ぶ斬撃。
それが街に向かって道を作る────線上にいた魔物は消炭だ。
頭おかしいんじゃないだろうかと思うぐらい大将の強さにドン引きした。
俺は一礼して走り出す。
しばらく離れた所で、後ろを振り向くと────グリフォンは次々と消炭になっていた。
うん、やっぱり大将は普通じゃないわ。
「コウキっ! よそ見をしないっ! さっさと行くっ!」
「──ごめん」
エリーさんから叱咤を受け、再度走り出す。
しかし──魔物の殺意を身近に感じるとやっぱり怖いな。
なんとかして早く街に入りたいが────
────簡単には行かせてくれない。
大将が消炭にして道を作ったが、また魔物が塞いで来ている。
目の前には次々とリリーさんの刈り取った首が転がっていく。
多少慣れたとは言え────生首を至近距離で拝むというのはキツいな……。
クレアさん、エリーさん、リリーさんも、どんどんゴブリン、オーク、オーガなどの雑魚を殲滅しながら速度は落ちているが、進む。
俺の攻撃手段は闘気のみ。現状では総闘気量的に長期戦は向いていないし、後先考えない戦い方しかしていない俺には厳しい。
ここで力を使い果たすより──情けないが……温存一択だ。
俺は守られながら進んで行く。
後、もう少しという所で──俺達は立ち止まる。
「ガルルルルルッ」
「──ちっ。コウキとエリーは先に行けっ!」
「なんでこんな奴がいるにゃ……」
目の前にはキマイラがいた。こいつも討伐ランクA……。
「ダメだっ! 全員で戻る為にここで迎撃しようっ!」
俺は闘気を込め直し、前に出る。
「バカっ────」
「────がはっ」
エリーさんの言葉と同時に俺は攻撃を受けた。
微かに見えたのはキマイラの爪────それが次の瞬間には胸をエグッていた。
「コウキ──ごめん────」
「うっ────」
エリーさんが俺の体に触れた瞬間に電流が流れる。
継続的に電流が流れてきていて体が痺れ────全く動かない。
そこからは俺では出す事が出来ない速度で────抱えられながら運ばれる。
俺の目にはクレアさんとリリーさんが戦闘に入る姿を映ったまま────その場を離れる。
2人とも無事で────
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