第24話 3度目の正直っ!
「ダ、ダリルさん──もうちょっと手加減を──って痛っ!」
「ほらほら、ボーッとするなっ! 常に目に闘気を込めろっ!」
俺は絶賛、目に負えないスピードの攻撃を受けている途中だ。
もはや、避ける事すら叶わない。
確かこれは──多数から襲われた際に対応する為の訓練だと初めに聞いている。
ダリルさんは目に闘気を込めろと言うが──この剣撃の嵐の中をどうやって集中しろと言うのか……。
というか……至る所に傷が出来て────正直痛いっ!
死に物狂いで回復魔法を自分にかけている。
この訓練で俺は闘気を纏いながら魔法を使うという荒技をやってのけた。
ダリルさんが、かなり褒めてくれたが────その後はひたすらテンションが上がって切り刻まれている。
曰く、目に闘気を込めたら動体視力が良くなる。
闘気を目に込めて確かめると、いつもより見える気がした。
だが──常に動き回る中、一瞬ではなく、効果が出る範囲で闘気を目に込め続けるのが────かなり難しい。
少し集中力を欠くと解けてしまう。
なので、この連撃を受ける度に痛みで集中なんて出来ない俺は、どんどん酷い状況になっている。救いなのは致命傷だけは避けてくれている事だが……。
……ダリルさん曰く────過去に弟子入りを願った人達は1日で辞めたらしい。
この同時に放ったように見える剣技を受ける度に八つ裂きにされる──
──そりゃぁ、弟子も辞めるだろっ!
いつ殺されてもおかしくないぞ!?
1回目の訓練は変態ギルマスから逃げる為に──
2回目の訓練はカミラさんの為に──
──覚悟を決めて訓練を受けた。
だが、3回目は俺に覚悟なんて皆無だ!
何も目的や目標が無い中──いや、変態から逃げる必要はあるのだが……これだけ虐待されてまで────なんで訓練を受けないといけない!?
よしっ! 訓練を辞めよう──いや、逃げ出そう!
俺は3回目の覚悟が決まった────ダリルさんから逃げるっ!
「訓練辞めますっ! それじゃっ!」
「ったく、まだそんな事言ってやがんのか! ──逃すかっ!」
それから俺とダリルさんの鬼ごっこが始まった────
俺は必死に逃げる──
──が先回りして連撃を放ってくるダリルさん──
そして回復しながら違う方向に逃げるの繰り返しだ。
俺は闘気の使い方が上手くなっているので、継続して動き続ける事が出来ている。
ダリルさんも、わざと捕まえず──あえてそのまま避ける為の訓練を継続している。
もはや、集団に襲われる対処法を学ぶはずだったのだが──
──集団から襲われた時に逃げる為の方法を学んでいる感じになっていた。
「はぁはぁはぁ……」
しばらくして、息切れを起こし──ついに俺の限界が訪れる。
「限界のようだな……たった3回の訓練でここまで成長するとは我が教え子ながら天晴れだっ!」
俺は返事する事もままならないが、褒められた事には素直に嬉しく思う。
だが──それと同時に、全く逃げ切れない事実に落胆する……。
だってダリルさんと同じぐらい強さのギルマスと対峙したら間違いなく────捕まる!
息が少しずつ落ち着いてきた。
「ギルマスから逃げるには後どれくらい強くなればいいんですか?」
正直言って、違う街かどこかに逃げたい……。
だけど、大将から女の子攻略のノウハウを聞いてからがいい。
それまでにギルマスと対峙する可能性もあるが……。
せめて──強さの目安ぐらい知っておきたい。
「そうだなぁ……俺と良い勝負出来たら逃げれるだろ」
──無理だろそれ!?
ダリルさんと戦ったとして────どう考えても一方的にボコられる未来しか見えない……。
という事は──ギルマスには蹂躙されるわけか……。
ギルマスに捕まる想像をし、俺の顔は絶望に染まる。
「俺は──強くなれますか?」
不安になった俺は問う。
「ん? なれるなれないの問題ではない。俺が強くするんだ……だから生き抜け」
「はっ?」
俺は一瞬意味がわからず聞き返す。
「だから生き抜け──お前なら俺について来れるっ!」
「…………」
俺はダリルさんの顔を見た時に悟った……もう逃げられないんだなと……。
「なぁに……何十回か死ぬ思いをするぐらいじゃないか!」
何十回も死ぬような思いをする訓練を行うつもりなのか!?
「ダリルさん……俺──「わかっている! だがな……このままだと彼女を作る前にお前は間違いなく変態の餌食になる」──!? なぜ!?」
「変態が多いからだっ! 貴族とか最悪な性癖持ってるぞ? コウキ──お前は間違いなくターゲットにされる。お前に必要なのは力だっ!」
なっ、なんだってぇぇぇっ!?
この世界って、貴族とかいるのか!? そして、その貴族にも変態が多いとは……どうなっているんだ異世界!?
イケメンで身の危険を感じるぐらいなら……容姿は普通で良かったのかもしれない。
逃げ出さず、強くなろうと固く決意した。
3回目の訓練は逃げ出す決意から────強くなる為の決意に再び変わった。
己の身は己で守るっ!!!
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