第19話 これぐらいなら対応可能っ!

 俺とカミラさんの元恋人、そいつを寝取ったCランク冒険者は外に出る。


 呼びにくい……これからは寝取り冒険者と呼ぼう。


 カミラさんは入口から俺達を見守っている。


 周りにも野次馬が群がって来た。



「今、謝って──俺についてくるなら優しくしてやるぞ?」


 寝取り冒険者はそう言ってくる。


 こんな筋肉塊のようなむさい奴について行くかっ!


 俺の返事はもちろん。


「嫌だね。始めるならさっさとしろっ! 迷惑行為で詰所に運んでやるよっ!」


 そう言いながら闘気を纏う。



「舐めやがって──後悔すんなよ」


 寝取り冒険者は剣を抜く──


 こんな人通りの多い所で剣を抜くとか正気じゃないな……。冒険者ってやっぱりまともな人がいないんじゃないのだろうか?


 俺も何が何でも捕まりたくないのでダリルさんから預かっている剣を抜く──



「行くぞっ」


 俺は両足に闘気を込めて──一気に間合いを詰めて袈裟懸けに斬りつけるが、剣を使い受け止められる。


「なっ!? これは──闘気か!? 本気で行くしかねぇな──」


 鍔迫り合いになり、闘気を纏っている事に気付いた寝取り男は先程と違い、雰囲気を変え──剣に力を込めると俺は押し返される。


 これは──闘気……いや、違う──身体強化魔法か!?


 俺は飛び退く。


 一撃では決まらなかったか……。

 だが、ダリルさんとは違って十分対応可能だ。


 速度で翻弄させ、瞬く間に次々と攻撃を当てて、切り刻んで行く。


 闘気凄いな……ポテンシャルは俺の方が上だ。



「ぐぅ……やるじゃねぇか……」


 寝取り冒険者は片膝を着き、そう言いながら睨んでくる。


「今謝るなら許してやるぞ? もちろん俺じゃない。カミラさんにな」


 俺の勝ちは確定だろう……そう思った時──


「武器を捨てろっ!」


 その声と共に振り向くと────元恋人がカミラさんの首筋にナイフを当てていた。



 このカス共が……。


 俺はカミラさんに危険が及ばないよう、剣を足元に転がす。


「舐めた真似しやがって……闘気を解けっ! じゃねぇと女が死ぬぞ? おらぁっ!」


「がはっ……」


 寝取り冒険者は闘気を解いた俺の腹に拳を放ち──俺はその場に蹲る。


 闘気を纏っていていればそれなりに防御力は上がるが──


 ──解けば、そこらにいる一般人と変わりはない……。


 ダリルさんが言っていた言葉を思い出す。


 蹲った俺を更に蹴り続ける寝取り冒険者。


「コウキ君っ! もうやめてっ! 死んじゃうっ! 卑怯者っ!」


 カミラさんは俺の心配をしながら叫ぶ。


「煩いっ!」


 元彼がカミラさんに気を取られている間に闘気を両足に込める──


 苛ついた元恋人はナイフをカミラに突き刺そうとした瞬間────足に集中させた闘気を爆発させる──



「カミラさんを離せ──」


 俺はなんとかカミラさんとの間に割って入って救出する。


 俺の背中に激痛が走る。ナイフが突き刺されたようだ。背中に水滴が滴る感じがする。


 かなり痛いが、我慢出来る。


 俺はそのまま元恋人を闘気を込めた蹴りを放ち、吹き飛ばす。


 元恋人はそのまま気絶し動かなくなった。



「ちっ、まだ動けるのか……だが、その傷じゃぁ──もう戦えないだろう。大人しくついて来い」


 寝取り冒険者は俺が傷を負って戦えないと思っているようだ。


「だから行かないって言ってるだろ? 傷どこにあるんだよ?」


 俺は回復魔法で背中の傷を治してそう言う。


「なっ!?」


「という事で、安心してボコられろっ!」


 その後は衛兵さんが来るまで散々殴りまくっておいた。


 街中で武器を振り回したんだ。きっと捕まるはずだ──


 ──って俺も剣抜いてるじゃん!?


 衛兵さんが到着して事情を話すと、案の定──俺も一緒に連れて行かれかけたが────


 その時に野次馬の人達が俺は悪くないと罵声を浴びさせてくれたお陰で連れて行かれる事なく解放されたが……。


 この時は正直助かったと思った。緩い衛兵さんで良かった。日本なら規則に従って必ず連れて行かれるんだろうな……。



 カミラさんに向けて歩いて近く。


「大丈夫ですか? 首元切れてますね……治します……」


 手をかざして回復魔法をカミラさんに使う。


「どうして──あんな無茶な事を?」


 傷が塞がったので俺は質問に答える。


「カミラさんは笑顔の方が似合いますよ。あんな連中で気に病んでいるカミラさんは見てられません。おっと、そういえば約束守れませんでしたね? 何かペナルティでもありますかね?」


 俺は戯けて言う。



「くすっ、ありがとう……じゃあ……また広場で串焼き食べよ?」


 笑顔を俺に向けて言ってくれる。


 ペナルティが串焼きか……それもいいか……。



「じゃぁ、今から行きましょう」


 俺は女将さんに広場まで行く旨を伝えて、カミラさんと一緒に歩き出す。


 野次馬で集まっていた人達が歓声を上げてくれる。


 カミラさんが無事で安心しているみたいだ。


 やっぱり、カミラさんは人気者だな。


 そう思いながら────照れながらその場を後にした。


 さぁ────アフターケアだな。

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