第15話 何が役に立つかわからないね!

 俺は昨日、晩ご飯を食べさせてもらい────直ぐに寝たっ! もちろんダリルさんの奢りでっ!


 そして──今は朝っ!


 気合いを入れて行くっ!


 まずは仕事だっ!


 俺は食事処に行く。



「おはよう」


「おはようございますっ!」


 カミラさんが挨拶してくれたので俺も返す。


「気合いが入ってるわね」


「もちろん! カミラさんを悲しませる奴をぶん殴る為に気合いはMAXですっ! 俺は訓練頑張りますっ!」


「ふふっ、無理しないでね? 私は大丈夫だからね?」


「俺も大丈夫ですよっ! 俺は女の子の味方ですっ!」


 女性の敵は──俺の敵っ!


 カミラさんが前を向いて行けるように俺がぶん殴るっ! 


 ぶん殴る事で解決するかはわからないが──そもそも、自慢しに会いに来るなど性格が悪すぎる。


 それに──相手が男なら別に殴っても構わんだろ! 真実の愛とか糞食らえだっ! 俺は女の子の方が大好きだっ! 


 そいつらに鉄槌をっ!



 そんな事を考えながら、俺は昼まで仕事をこなす。


 お姉さんに話しかけられたり、頭撫でられたり、告白されたりしたっ! 


 めっちゃ嬉しいっ!


 告白とか人生初だっ! カミラさんの視線がちょっと怖かったけど嬉しいものは嬉しいっ!


 その後、おっさんにお尻触られたけどなっ!




 そして、おっさんと言えば────昼からダリルさんとの訓練だ。



 俺達は昨日と同じく、街の外に出て訓練を行なっている。



「さぁ、闘気を動かしてみろ」


「はいっ!」


 俺はここまで、歩きながら闘気の使い方を聞いており、今はそれを実行している所だ。


 闘気の流れを右手、左手、右足、左足などに動かしていく。


 闘気が集中すると──闘気を全体で纏うよりも、その部分のパワーは桁違いに上がる。


 それに──自分で必要な時に必要なだけ使える方が燃費が良い。


 俺はダリルさんから逃げる時に両足に闘気を込めて逃げた。その時は初めて闘気を使って逃げた時よりも明らかに早かった。


 って……見事に逃げる事にしか使ってないな。


 まぁ、そのせいか闘気の移動は既に要領が掴めていて簡単に動かす事が出来た。



「コウキ……普通は闘気を動かすのに早い奴でも1週間はかかるんだが……」


「そう──ですか……」


 そうなの? 俺──実は天才とか?! 


 ……そんな事ないか……闘気も人から──ティナから記憶を代償に得た物……俺の才能じゃないな。



「浮かない顔するな。大したもんだ。闘気は会得するのも大変だが──どちらかというと使い方が物を言う。基本の闘気循環が出来なければ暴走してるのと変わらんし、直ぐに枯渇する……それに下手したら放出したまま死ぬ。だから自信を持て」


 ダリルさんのそんな言葉に少し救われた気がした。


 というか闘気って相当危険な技なんじゃ……死ななくて良かった。


「ありがとうございます。次はどうするんですか?」


「次は──闘気の強弱の練習だ。昨日は全力で垂れ流した状態だったが、今回は闘気の放出を最小限にするんだ……そうすれば持続時間も伸びるし────今の循環を使えば瞬間的に威力も上がる。やってみろ」


 確かに理に叶っていると俺は思った。


「はいっ!」


 勢い良く返事をする。


 目を瞑り──闘気を全身に満遍なく少しずつ放出する……。


 俺は目を開けると──


 ダリルさんは驚愕の表情をしていた。


 俺は見える範囲に視線を動かずと、薄らと白いオーラを身に纏っていた。昨日みたいな荒々しい感じではなく──粘液が纏わり付くような感じだ。


 ダリルの顔を見るに成功しているように思う。



「どうしたんですか?」


「──いや、部分強化は出来るから出来るかもしれないとは思ったが────闘気をそこまで薄く纏うのは──見事だ。ある一定までの闘気量であれば効果はそんなに変わらない……つまり、それだけ放出を抑えられるなら、昨日と同じ効果を得た状態で持続時間は長くなる……」


 俺は自分の体を見ながら思う。


 そんなにすごい事が出来てたのか!? なんで出来たんだろ??


 ────あっ! あれかも!?


 前世で俺は体が弱かった……それで──気功とか太極拳とかを習って──毎日やってたんだった……。


 まぁ、それでも病気には勝てなかったけど……。


 闘気って──日本で言う気の事なんだろうか??


 じゃないと出来た事に説明がつかない。


 前世では役に立たなかった事も、意外と役に立つもんなんだな……。


 なら────も出来るかな? 結局出来なかったけど、必死に練習したあれだ!



「ダリルさん──ちょっと技使いますね? 出来るかわかりませんがやってみます。あの木に撃ちますね?」



 俺は右手を引き──突きの姿勢をとり────闘気を集中させる。


 的は────目の前の数m離れた木だ────



「ちょっ、ちょっと待てコウキっ!」


「えっ?!」


 声をかけられたが、俺は既にモーションに入っていて止まらない。


 拳を振り抜く──



 ズパンッ──


 ──ドゴォォォッンッ



 すると離れた木のど真ん中に当たり────破裂し、木は倒れる。



 俺がしたのはだ……。


 ただ、この結果は予想してなかった……。



「………………使い方には気を付けろよ……これは一応、技の一つではあるからな……」



「…………わかりました……」


 気功やってたら闘気の扱いが上手かった件について…………既に技を会得してたってよ!



 しかし、冗談抜きで簡単に使えない技だな……木っ端微塵だよ……これ人に使ったらヤバすぎるだろ……。



「よしっ、これなら闘気の持続時間も長いし──剣ぐらい振れるだ── 「嫌です!」──ろ?」


 ──闘気を纏って、昨日の続きとか悪夢だ!


 俺は全てを言わせる前に断った。

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