第13話 俺が指図したんじゃないんです!
街の外から帰って来た俺は絶賛、宿屋のベットで横になっている。
ダリルさん達は冒険者ギルドに行くと言い、出かけて行った。
「身体が動かない……」
帰って来てから酷い筋肉痛が俺を襲って来ている。指先を動かすだけでも、その振動で全身に痛みが走る。
ベットの上から全く動けない……闘気で無理矢理動かした反動だろうか?? 肉体が追いついていない的な。
「そうだ、これ回復魔法で治せないかな……」
回復魔法を使う────すると全身の痛みが弱くなっていき軽い筋肉痛程度になった。
これなら大丈夫そうだな……。
よしっ!
逃げようっ!
俺は部屋から勢いよく飛び出す────
「どこに行くのかな?」
俺は声が聞こえて立ち止まり──恐る恐る振り向くと────
そこにはカミラさんがいた。
「──ちょっと散歩に……カミラさんこそ、どうしたんですか?? もうすぐ夜ですし忙しいのでは??」
外に行くのは散歩と言っても構わないだろう……逃げる為なんだが……。
それより、カミラさんは何でこんな所にいるんだろ?
「ふふふっ、ダリルさん達から逃げ出さないように見ててくれって頼まれたのよ。ふふっ、その顔は逃げる気だったわね? ダメよ? 明日の仕事も頑張りましょうね?」
なんだと……俺の逃げ道は既に封鎖されていたのか!?
「…………はい……」
俺は項垂れて返事する。
「散歩するんでしょ? お姉さんが案内してあげるわ」
「……はい……」
俺は今日は逃げ出すのを諦め、カミラと外に出る事にした。
俺達は街を歩く。
「これ、食べない? 美味しいわよ?」
屋台の前で立ち止まるカミラさんは気を使ってくれる。明日からの地獄の日々を思うと憂鬱過ぎる……それが顔に出ているんだろうな……。
「お金ないんで遠慮しときます」
「ふふっ、お姉さんが払ってあげるわ。だから──そんなムスっとしないで?」
とりあえず今はこの場を楽しもう。
「じゃあ、頂きますねっ! 奢って下さいっ!」
俺は笑顔で応える。
「おじさーん、これ2つ頂戴〜」
「へい、らっしゃいっ! おっ、カミラちゃんじゃねぇか! ん? デートか? 好きな奴持っていきなっ! サービスで無料だっ!」
「もうっ! コウキ君が困ってるでしょ? でもありがとう……じゃぁ今焼いてるの全部頂戴!」
会話から屋台の店主とカミラは知り合いなのだろう事がわかる。
しかし、無料と言われて──鉄板で焼いてる物を全部とはさすがに知り合いとはいえ、横暴ではなかろうか?
おっちゃん絶句しているぞ? あれは言った事を後悔している顔だ。
「────ええぃ! 持ってけ泥棒っ!」
おっちゃんに二言はないようで悔し涙を流しながら串焼きを包んでくれた。
確かに泥棒みたいなものだな……。周りの人の視線が痛い……。
「戦利品だよ〜」
カミラさんはこっちを振り向き、満面の笑みで俺に声をかける。
いや、なんか俺が指図したみたいになってるんだけど!? 周りの視線が痛過ぎるから!?
「よっ、よかったね」
そう答えるのがやっとだった。
「兄ちゃん、こっち来い」
店主が俺を呼ぶ。
なんだ!? まさか金を払えとか言うんじゃないだろうな!?
俺は恐る恐る店主に近付く。
すると、小声で俺に────
「カミラちゃんの普通の笑顔久しぶりに見たよ。あの子の事頼むな……最近嫌な目にあって、落ち込んでたから……」
そう言ってきた。
カミラさんって落ち込んでたの? 俺には笑顔ふりまいてくれてるから全然わからなかったな。
「はい。仕事で良くしてくれてますからね」
俺はそう答える。
おじさんの目は、さっきの涙目とは違い──真剣な目付きだった。
嫌な目ってなんだろ?
「コウキ君、あっちの広場で食べよっ!」
「あっ、はい」
俺はカミラに呼ばれたので店主にお礼を言い、その場を後にする。
しばらく歩くと公園みたいな所があった。
「ここで食べよっ!」
そう言われ、石で出来た椅子に2人で座り、無言で屋台の戦利品を食べる。
何かお好み焼きや、焼きそばっぽいものがいっぱいあるな。
無言辛い……何か話そう。
「いつも、そんなに買うんですか?」
「買わないわよ! 今日はサービスしてくれたから貰ったのっ!」
「周りの視線が痛かったです……」
「ちゃんとお金は渡したわよ?」
「あっ、そうなんですね」
全然気付かなかったな……近くにいた俺が気付いてない時点で周りも気付いていない気がするから────俺が指図したと思われているのは変わらない気がするけど……。
「おじさんに何か言われた?」
そういや、言われたな。風評被害の事しか考えてなかったから勘違いさせてしまったようだ。
「そういえば──カミラさんは最近、嫌な目にあったから気遣ってやってくれって言われたかな? 何かあったんですか?」
俺は聞かれたから普通に気になった事を聞き返してしまった。
これってあんまり踏み込んだらダメな奴じゃないだろうか? 聞き返してから気付いた。
「…………」
カミラさんは俯き──沈黙がその場を支配する。
やっちまったぁぁぁぁっ!
まともな人付き合いしてこなかったからストレートに聞いてしまった!
「──すいません。あまりそういった事を聞くのはマナー違反ですね。他の話を──「あのね……」──」
他の話をしましょう────そう言おうとした時、カミラさんが話し出す。
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