第11話 これは訓練なのか!?
現在俺は街から出て、しばらく歩いた見通しの良い広場にいる。
テレサさんとエリーさんは近くに魔物を狩りに行き、今この場にいるのは俺とダリルさんのみ。
「さぁ、訓練するぞっ!」
「はいっ!!!」
「なんだ!? 昨日の夜と顔が違うな────まるで戦地に赴く戦士の顔をしている」
そりゃそうだろっ!
アルバイトしてたら、男共にお尻とか普通に触られたんだけど!?
男が寄ってくると身の危険を感じたんだぞ!?
力だ────俺には逃げる力が必要だっ!
「変態共から俺は絶対逃げ切る力を得ますっ! 俺に逃げる力をっ!」
「覚悟の決まった男は強くなるっ! 絶対に俺が力を与えてやるっ! だが、逃げるんじゃなくて戦う事も必要だっ!」
「全力でお断りしますっ! 変態と相対などしたくないっ!」
それに俺は平和に生きたいんだっ! 進んで戦闘なんかしたくないっ!
「まぁ……お前の気持ちもわからんではないが……時には戦う覚悟も必要だと覚えておけよ?」
とても大事な心得を教えてくれているのはわかるが、今は早く逃げる力がほしいっ!
「はいっ! 早く訓練をっ!」
俺は急かす。
「わかった──とりあえず、闘気を使え……そうだ……そして──そのまま維持して限界を知れ」
俺は言われたまま闘気を出し、維持する。
確かに限界を知らないと、いざという時に使えない可能性もあるな。
さすがだ!
……
…………
……………………
「うっ……」
十分ぐらいだろうか? 俺は胸を押さえて片膝を着く。
「ふむ、では解いて良し。それが今のお前の限界だ。闘気を使って動けばもっと早く限界が訪れる……使い方にもよるが────だいたい半分ぐらいの時間になるだろう」
という事は五分か……。
短い──それにかなり身体に負担がかかっているのがわかる。
「わかりました……仮に──このまま使い続けていたらどうなりますか?」
俺は気になったので聞いてみる。
「────闘気は生命力を元に使う技だ。身体の出来上がっていないコウキでは後少し使うだけで──死ぬ」
マジか!? それでこんなに胸が苦しいのか!?
「どうすれば────持続時間が増えるんですか?!」
「体力をつけるのと──使い方だな。それしか言えん……。だが──仮に使いこなしたら────こんな事が出来る────」
斬っ
ダリルは手に闘気を集めて──そのまま振り下ろし────斬る動作をすると、地面に亀裂が入る。
凄い……俺は絶句する。
「まぁ、これは応用技ではあるが──訓練で使える。これからは闘気の循環と基礎体力作りを主に行っていく。ちなみにコウキは使いたい武器はあるのか?」
「わかりましたっ! 武器ですか……ダリルさんは剣を使うんですよね? 教わるなら──剣が良いですっ!」
「わかった────なら、その訓練も行おう。どうだ? 少しは回復したか?」
「はい、もう大分マシになりました」
「では、これを貸してやろう──ほれっ」
「──!? これは剣……ありがとうございます」
普通の鉄剣だろうが、しっかりとした作りで凄く重みを感じる。俺は剣を握り感動する。
異世界と言えば剣と魔法だろっ!
「良しっ────ひたすら組み手だっ! なぁに殺しはしないっ! 闘気を使わずに俺とひたすら戦うだけ────お前は回復魔法が使える、その訓練もすると思って限界を超えてかかってこいっ!!!」
…………?
さっきまでの理性的なダリルさんは何処いったの??
急に脳筋になったんだが……回復魔法使うぐらいの怪我はさせるって事だよな??
回復してまた戦うの繰り返し?
何──その地獄ループ……。
しかも、剣を渡されたから素振りでもするかと思ったら全然違うし?!
組み手って真剣でやるもんなの??
普通は木の枝とか棒とか殺傷力の低い武器でやらないか!?
俺はダリルさんと剣を交互に見る……。
「何してる? かかって来ないなら俺から行くぞ? ほれっ」
そんな俺にダリルさんは斬りかかる。
「──いったぁぁっ!?」
肩辺りをスパッと斬られ──出血する。
俺は直ぐに回復魔法を使い、肩の痛みが引いていく……。
「はっはっはっ、回復魔法は中々良い感じで使えるじゃないか──次いくぞ〜」
笑いながら剣を振り下ろすダリル。
目の前に剣が迫ってくる。
俺は何とか剣を使おうと持ち上げようとするが──当然、剣を使うのが初心者な俺は重たい剣を振れるわけがなく──
──胸を斬られ先程よりも出血する。
俺は痛みを堪えながら、また回復魔法を使う。
「おー、その調子だぞ? ほれ次だ〜剣使わないとどんどん斬られていくぞ?」
いや、ちょっと待てよっ! 剣重くて持ち上がらねぇよっ!
幾度と無く斬られ──回復する────魔力が尽きるまで、ひたすらそれを繰り返した。
もちろん他の訓練など行えなかった。
回復魔法だけは昨日より遥かに上手く使えるようになった気がする……。
人間──死ぬ気で頑張ればなんとかなるもんだなぁと思いながら、身体の力が抜け──
──剣が俺の腹に突き刺さったのを確認し──
──意識が途絶えた。
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