第9話 誤解は解けた!?

「すまんっ!」


「ごめんなさいね」


 絶賛俺は現在、ダリルさんとテレサさんの2人から謝られている。場所は宿話の食事処だ。


 エリーさんは近くで俺を睨み付けていた……。


 この空間にいるのが辛い……。


 というか、ダリルさんが面倒見てくれるそうだが……エリーさんがずっとこのままなら俺はここに居たくないんだが……。


「もう、いいですよ。傷も治しましたしね」


 もちろん自分で治したさっ!


「あんた、さっさと出て行きなさいよっ! 何戻って来てるの?」


 戻ってきたのは──そこにいるダリルさんが冒険者を煽ってまで俺を探した結果なんだが……。


 俺はダリルさんを見る。


「コウキ、本当に済まない。少し時間も経ったから大丈夫だと思ったんだが……。エリーもうやめなさい。テレサ──ちゃんと説明したのか?」


「したわよ……けどエリーはコウキ君を治した事どころか──初対面って思ってるみたいで、どうもこうもないわね」


「あー、そういやそうだったな……コウキ、話していいのか?」


「ここだけの話にしてもらえるなら……」


「安心しろ。俺はの1人。その名にかけて洩らす事はないと断言しよう!」


 ん? 九刃? なにそれ?


「何の話かわからないけど──の名にかけて私も秘密は守るわ」


 爆裂姫? なにそれ怖い!?


「エリーはどうする? お前に関係のある話ではあるが──コウキはこう言っている。秘密を守れないなら、ここから出て行け。これは軽はずみに聞いて良い話じゃない」


 そんな大袈裟な話なの??


 バレたら面倒臭いな〜、ぐらいの気持ちなんだけど!?


 ダリルさんの目がめっちゃ怖いんだが!?


 そんな事を考えているとエリーが返事する。


「わかったわ……誰にも言わない──親の名にかけて」


 エリーさんは回復魔法使ってたから治癒師とか言ってくるかと思ったんだどな。違うのか?


 ────だが、俺は今──凄くファンタジーを感じている。


 まさにこれは異世界でしか体験出来ない事だっ! ここが日本だったら二つ名とか厨二病になるな!


 なんか物語の主人公になった気分だな……。


「コウキ、何を呆けている。お前から話すか?」


「あぁ、すいません。凄いなぁと……話でしたね。俺からします」


 周りに人がいない事を確認してから話し出す。


 キスをすると何故か相手の俺に関する記憶がなくなる。その代わりにキスした相手の能力を使えるようになる。それをエリーにキスをされた際に確信した事を簡単に説明した。


「なるほどねぇ〜、エリーが真逆の態度取った意味がわかったわ……」


 俺の話を聞き終わり、テレサさんがエリーさんの不審な態度が納得いき発言する。


「じゃぁ……貴方がキスしたんじゃなくて──本当に私がキスしたの?」


 俺は頷く。


「だから、ずっとそう言ってるでしょ? 貴方が一目惚れしたって……」


「確かに顔は好みなんだけど……」


 テレサさんの言葉にエリーさんは落ち込みを見せる。


 一目惚れされてたんだ……それも今となってはわからないけど。


 しかし、これで誤解は解けたよな?


「まぁ、そういう事だ。コウキをこのまましばらく面倒を見るつもりだ。最悪な事に──ここのギルマスに目を付けられた……」


「「ご愁傷様」」


 いや、そんな大事なの!?


 テレサとエリーは一気に暗くなり、気の毒そうな表情をされる。


「そういうわけで、コウキがせめて──あの変態から逃げ切れるまで訓練を行う事にする──」


「ちょっと良いですか?? 訓練を行なって貰えるのはありがたいんですが……俺一文無しなんで、働きたいんですが……」


 俺はダリルさんの言葉を遮り、生活する為の手段を手に入れたいと伝える。


 ダリルさん達がいる間はお金の心配はいらないだろうけど、いつかは此処から離れるのは間違いない。


 なんとか生活の基盤を作っておかないとダメだと思うし──


 ──頼りすぎるのも嫌だ。


 それに、よく考えたら────冒険者ギルドに行かなかったら問題ないよな? 


 扱きとか耐えれる自信皆無なんだが!?


 出来れば訓練はやりたくないな。


「魔物狩ってたら、金には困らんぞ? なぁに、その辺の魔物ぐらいなら──群れ単位で狩れるようにしてやる。気にするな」


 いや、気にするよ……なんでそんな危険な事をせないかんのだ……。


 それに依頼受けに冒険者ギルド行ったら変態ギルマスに会う事になるじゃないか!


「出来れば、安全な仕事をしたいですね」


「安全に魔物狩れば良かろう?」


 良かろうじゃねぇよっ!


 安全に魔物を狩れる気がしねぇよっ!


 俺ゴブリンにも勝てないからっ!



「はーい、料理持ってきたよ〜、それと──話は聞かせてもらったよ。うちで働くかい? 丁度、従業員が辞めて困ってたんだよ」


 声のする方向を見ると、他のお客さんに女将さんと呼ばれていた、恰幅の良いおばちゃんが料理を運んでそう言う。


 これで、俺の生活は安泰だっ! 生活出来るなら、わざわざ冒険者やる必要もないし、変態ギルマスに会う事もなくなったんじゃないのか?! 


 つまり訓練も必要ない?!


「本当ですか!? ありがとうございますっ!」


 俺は満面の笑みを浮かべてお礼を告げる。


「ちょっと待て、コウキ。丸一日は許容出来ないぞ? 半日だけにしてもらえ──じゃないと訓練出来ん」


 ですよねー。

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