第6話 全力で逃げ出したい!
俺はしばらく1人で外を歩いて少し落ち着き、冷静になる。
そして、ふと気付く。
金がない……。
そしてさっきご飯が食べれなかった────空腹が俺を襲ってくる。
そして、外を見て歩いた感じ……大きな街だ。外観は日本と全然違うが、綺麗な家々が立ち並んでいる。
普通はこういう街って──ラノベとか読んでたら……門番さんがいて、身分証明がなかったら入れないのんじゃなかったか?
ここでの俺の扱いはどうなっているんだ?
不法侵入者?
──ヤバいんじゃ……。
俺は思考をフル回転する。
おそらく、俺はこの街に運ばれた時は、きっとレンジって人か、ダリルさん達が保証人になってくれたんだろう。
ティナもダリルさんも冒険者だった。そして命の危険は付きまとうが──金は稼げるし、身分証明も解決する。
問題は俺が戦えるかどうかだ。
──そういえば……ティナとキスした時は何を得たんだ?
俺は────記憶を遡る。
────そうだっ!
闘気だっ!
俺は生命力を使って身体強化する技────それが闘気。爆発的な力で身体能力を上げる──そうティナが言っていたな。
これで戦う事に関しては解決したな。
しばらく立ち止まり考えて──出た結論は冒険者登録をして身分証明を作って金を稼ぐ事だった。
俺は再度歩き出す。外はもう真っ暗だ……早く行かなければ────
すると少し歩いた所で、丁度タイミング良く、目の前に剣と盾の看板が見えてきた。
あれが冒険者ギルドだろう。
ついに────俺は異世界で冒険をする事になるんだな。
さっきまで散々だったけど────今この扉を開けたら……俺の異世界の生活──
──いや! 冒険が始まるっ!
魔物のいるような異世界だ! 強ければモテるはずっ! 目指すは無双っ!
俺はこれからの覚悟を決めて扉を開ける。
ギィイ
扉を開けると────ダリルさんが叫んでいた。
「野郎共おぉぉぉぉっ! 金髪の坊主だっ! 必ず探し出せぇぇぇっ! 奴を捕まえたら────報酬を出してやるっ! 金貨1枚だっ! なぁに簡単なお仕事だ。だが──必ず無傷で連れて来いっ! わかったな。お前ら!?」
「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ」」」」」」
ダリルさんは金髪の坊主なる者を探す為に報酬を出すと大声で言うと、冒険者ギルドにいた──暑苦しい男達が雄叫びを上げる。
扉をソッと閉めて俺は思った。
それ俺じゃね?
というか────俺の冒険は始まる前に終わったぞ?
これ逃げないとヤバい奴じゃなかろうか?
おかしいなぁ?
俺はこれから冒険者になって生きて行く覚悟を決めたが────今は逃げる覚悟に変わったぞ?
…………いやいや、それより何でダリルさんが俺を探してるんだ!?
バンッ
勢い良く扉が内側から開かれる。
「ん? お前金髪で坊主だな。ダリルさんが言ってた奴か?」
俺は冷や汗が流れる。
「確かに俺は金髪だけど、その辺にいっぱいいますよね? さっき走ってた金髪の同い年の人があっちに走ってましたよ?」
なんとか俺は嘘八百を並べる。いや、金髪の人はいっぱいいたから全て嘘ではない。
「なんだとっ!? あっちだな!」
俺は真剣に頷いて応える。
男は俺の示した方向に走り出して行った。
脳筋で助かった……どう考えても普通見つけたら連れて行くと思うが……。
ホッと胸を撫で下ろした時────
「おいっ、あそこに金髪の坊主がいるぞっ!!!」
そんな声が木霊する。
俺も全力で闘気を使い────走り出す────
人生初の闘気を俺は戦闘ではなく逃走に使った────
俺は捕まったら何をされるかわからない恐怖から、がむしゃらに走る。
しばらくして──俺は息切れを起こし立ち止まる。
ここまで逃げれば大丈夫かな?
視線を周りに向けると、夜なのに明るくて色々な人が行き来している。
どうやら繁華街らしき場所に来たみたいだ。
「ねぇ、そこの君〜迷子なの?」
後ろから女性の声が聞こえて来た。呼び込みの人かな?
振り向くと、寝巻きのような服装をしている女性がいた。
異世界の呼び込みは寝巻き姿が普通なのか?
──いや、周りを見ると露出の高い服装ばかりだ。
きっと、子供の俺がこんな時間にいるから心配してくれているんだろうな。
女性と目が合う。
「やっぱりっ! 私好みの可愛い子だわぁ」
うん、この人はショタだな。
俺は発言から断定する。
「すいません、急いでるんで──「金髪坊主いたぞっ!」──!?」
話している途中で冒険者らしき人達に見つかる。
強面の顔で暑苦しい人達が近づいて来る。
異世界怖いぃぃぃっ!
そう思いながら俺はそのまま細い路地に向かい走って行く──
「あそこだっ! 見失うなよっ!」
「「応っ」」
声から察するに男3人追いかけて来ている。
そして──走り続けた結果、袋小路に入り────行き止まりで立ち止まる。
「これで逃げ場はねぇな。広がれ────」
男は仲間に指示を出し、逃げ場を塞ぐ。
「これで今夜は飲み明かせるな」
「さっさと捕まえてギルド戻ろうぜ」
「あら、この子──可愛いわねぇん」
各々好き勝手に言っているが────最後の奴! ヤバい匂いがぷんぷんするぞ!?
それとお前はさっき振り向いた時いなかったぞ!?
「────見逃してくれるって言う選択肢は?」
俺は微かな望みをかけて質問する。
「「「「ないっ(わん)」」」」
1人だけ語尾がおかしい……。
そして舌を舐めずり回している。ボーズ頭で青髭────そして唇に何か塗っている……。
ダリルさんは確か────無傷で連れて来いと言っていた。
だが、こいつに捕まったら──色々と終わる気がする。
「お前らみたいな変態に捕まるかっ! 俺の純潔は必ず────守るっ!」
「「「ちょっと待てっ!」」」
「あらーん? 純潔だったのん? 嬉しいわぁん♪」
俺は冷ややかな目で男達を見る。
「「「ちょっと、お前黙れっ! ──ってあんたはっ!?」」」
「さぁん、始めましょう……ジュル……」
俺は前世と今世を合わせて経験した事ない鳥肌が襲ってきた。
しかも、男達からの言葉から────この変態は只者ではないらしい……。
異世界マジ半端ない……。
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