第2話 異世界は辛い!
俺はひたすら荒野を歩いている。
食べ物は何もないっ!
人も誰もいないっ!
そして────疲れたっ!
子供になったから体力が落ちてるのか?
────いや、元々動いてなかったから、どっちにせよ体力はないか……。
はぁ……休憩しよう。
草って食えるのかなぁ?
そう思いながら、目の前に生えていた雑草に目を向ける。
野菜も緑色のあるし、草も緑色……食えるんじゃなかろうか?
そんな事を考えるが頭を横に振る。
ダメだっ! 俺はまだ人間なんだっ!
ふと視線を上げると、人影が見えた。
これで助かるかも!?
──と思ったが……。
────その人影が近付くにつれて形がはっきりとしてきた。
一応、人の形をしている人影なんだけど……肌が緑色に見える。
さっきまで雑草を食うかどうかで悩んでたからか?
それとも、空腹のあまり視界がおかしくなったのか?
あれが、そのまま現実なら──まるで──
──異世界定番のゴブリンみたいだな……顔も醜悪だし。
もし──もし仮にだ! この世界の住人があんな人だらけなら俺は生きて行く自信がなくなる!
だって、この世界の住人は腰蓑一丁で棍棒を装備しているとか原始時代みたいじゃないか!
腰蓑一丁で荒野を歩くとか────価値観が違いすぎるだろっ! 文明プリーズっ!
仮に──そんな人種がいたとしてだっ! 女性も緑色なら────
俺には生理的に無理だっ!
せめて、話ぐらい通じると良いんだが……。
近くまで、その緑色の人がやってきた。
一応、話が通じるか確認する為に話しかける。
「すいませーん、迷っちゃったみたいなんですが、道を教えて貰えませんか??」
しばらく沈黙した後────返事が来た。
「ごぶっ」
……うん、言葉通じないや!
そもそも、こいつ──
──ごぶって言ったからゴブリンだろ!?
そういう人がいる可能性もあるし、言葉が通じないだけかもしれないが──
俺は直感で「こいつは人じゃないな」と思った。
なんか、俺に対する視線も獲物を見つけたみたいな感じだしなっ!
よしっ!
倒そうっ!
喧嘩とかやった事ないけど、ゴブリンって言えば魔物の中でも最弱のはずっ!
それに俺はブーメランパンツの剣神様に転生させてもらった!
つまり────きっと俺には特別な力があるはずっ!
なんせ剣神様だからなっ!
そう結論した結果、戦うという手段をとった。
「よしっ! かかってこいっ!」
「ごぶぶぶぶぶっ」
お前が? みたいな感じでゴブリン如きに笑われている俺……。
絶対許さんっ!
俺はゴブリンに向かい殴りかかる。
ぺちっ
俺の拳はゴブリンの腹に当たったが────
「ごぶ?」
何かした? みたいな返事をされ、攻撃は全く効果がなかった。
この時、俺は悟った……特別な力はないんだと。
転生させてくれたブーメランパンツ一丁のムキムキの剣神様はサービスはしてくれなかったらしい。
「ごぶっ」
ゴブリンは棍棒を頭上に振り上げ──そのまま振り下ろす。
──ヤバいっ!
冷や汗が流れ、スローモーションのように攻撃が見える──これって走馬灯的な奴?
いや、思い出は何も流れてこないな……そもそも、思い出ってそんなにないからなっ!
──って、これ頭に当たったら普通に死ぬんじゃないだろうか?
異世界に転生して1日で死ぬとか──冗談じゃないっ!
まだ────彼女が出来てない!
「こんな所で死ねるかぁぁぁぁっ!」
俺は心の底から叫びながら────なんとか棍棒に対し、左手を上に出し──犠牲にして回避する。
腕が曲がってはいけない方向に曲がったが、痛くない。
これがアドレナリンって奴の効果なのか!? それとも痛すぎて脳が感じなくなっているのか?!
この際──どっちでもいい!
俺は逃げるっ! 可愛い彼女を作る為にっ!
「ごぶっ!?」
右手で砂を握り──ゴブリンの目に目掛けて投げつけ────走り出す────
◆◇◆
しばらく走ると森の入り口に到着した。
ゴブリンは追い掛けて来ていない。
「はぁはぁはぁ……なんとか逃げれたか? 腕いったいなぁ……」
俺は一先ず休憩する。安心した為か──腕にズキズキと痛みを感じ始める。
空を見上げる────
あー疲れた。異世界1日目にして死に掛けるとかハードモードだ。
というか、このまま人にも会えず、食料確保出来なかったら死ぬな。
魔物もいるみたいだし、その前に喰われて死ぬかも……。
だが──それよりっ!
今は腕が超痛いっ!
「とりあえず──森に入れば、何か食える物ぐらいあるかな?」
俺は空腹と腕の激痛でまともな思考は捨て去り、森の中に入った。
しばらく腕の痛みに耐えながら歩く。
周りを見ると木や草ばかりだ。これだけを見ていると大自然豊かな感じだ。
木と木の間の木漏れ日が降り注いでいる。
さっきまでの慌ただしさとは天地の差がある。
ふと、俺の視界に赤い果実が目に入る。
そして、その下にも何かいた。
『きゅっ』
兎だっ!
白くてふさふさの兎っぽい奴が可愛く鳴いていた。
ぽいって言うのは……角が生えてるんだ額の所に……。
ホーンラビットとか言う奴だろうか?
こいつ食えるのか? 肉だよな?
この際──魔物であろうと動物であろうと構わないっ!
解体する自信も、殺す覚悟もないが──
──ここで行動しなければいつか死ぬっ!
俺の糧にしてやるっ!
「行くぞっ、肉っ!」
俺はたんぱく質を確保する為に腕の痛みを我慢して突っ込む────
『きゅっ!』
ホーンラビットは、そんな俺に向かって角を突き出して特攻してきた。
カウンターだと!?
しかも、めっちゃ速いしっ!?
角が俺に迫る瞬間に俺は運良く、石に躓き────転んで難を逃れる。
後ろを振り向くと、ホーンラビットの角は木に突き刺さっていた。
俺は背筋が冷たくなる。
もう少しで串刺しになるとこだった……魔物怖いな……でも、動けない今なら仕留められるよな?
──そう思った。
俺は近くに落ちていた木の枝を拾い──殴りかかる────
「行くぞ、肉っ! ──がはっ……」
ホーンラビットを殴る瞬間に、後ろから衝撃が走り────吹き飛ばされる。
全身が痛い──
──何が起こった?!
俺は転がった状態で元いた場所を見る。
そこには──
「ぶひっ」
二足歩行の豚がいた……こちらもゴブリンに劣らず醜い。おそらくオークという奴だろう。
────全身痛すぎて動けない……。
異世界辛すぎる。
オークの足音が聞こえてくる。
これ死んだな──そう思った時────
「ぶっひっ……」
吹き飛ばされたような音が聞こえた──
そしてオークは豚のような断末魔を上げ──俺の横に倒れ込んだ。
顔が超近い……そして臭いっ! 動けないから臭いから解放されないっ!
これは、一応助かったのか?
なんで?
何が起こったの?
俺はうつ伏せの状態から体が動かなくて確認出来ない。
「少年、大丈夫か!?」
「うぅ……」
声からして女性だ。俺は声のする方になんとか顔を向ける。
────こっ、これは!?
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