剣神に哀れまれイケメンに転生!彼女が欲しいけど【ロストメモリー】で台無しに──変態に狙われ何故か強くなる事に──
トロ
第1話 プロローグ
振り向くと街が見える──
今まで世話になった街だ──
たくさんの人達と知り合いになれた……。
楽しい事、悲しい事もあった……。
大事な人達も出来た……。
何度も死にかけたけど……。
そして、色々な事を教えてもらった……。
本当に色々だ──特に────
「さぁて、行くか──」
「──はい……大将……」
「コウキ……これからお前は強くならねばならん────全てを覆せるぐらいの力を手に入れろ……」
今、話しているのは俺の……剣と──恋愛の師匠だ。つい、この間────正式な弟子になった。
出会った時に大将と呼ぶように言われてから大将と言い続けている。
「いや、大将の訓練とか鬼畜過ぎて嫌なんですけど!?」
この人の訓練はまともじゃない……元剣聖と言われている人に教えてもらえる事は嬉しいが────ぶっちゃけると状況が許すなら俺は全力で逃げ出している所だ。
だって──必死こいて稼いだお金で買った新品の剣を……木の棒で折る人だからな。
正式な弟子になった事で、今まで以上に酷くなると思うと憂鬱になる。
「はぁ……情けない……近くの街に行く間に──女性の撃墜率を上げる方法でも話そうかのぅ……」
大将は恋愛講座の時だけ、少し年寄りみたいな話し方になる。
「是非っ!」
さすが大将はわかってるぜっ!
「とりあえず──好きな気持ちを伝えるんじゃっ!」
「えっ?! それだけですか!?」
「コウキよ……人は──受けた好意には出来るだけ好意を返そうとするもんなんじゃ……人から好きと言われたらお主はどう思うんじゃ?」
「そりゃー、嬉しいですが……──!? 確かに悪い気はしないですね!?」
「つまり──気になってもらう事が大事なんじゃ。最初に言った通り────これはあくまで撃墜率を上げる方法じゃ」
「しかし、大将……それって告白するって事ですよね?」
「まぁ、玉砕覚悟で挑むならそれでいいんじゃないかのぅ?」
「それ失敗したら終わりじゃないですか……」
「別に告白なんぞせんでも──親しい人からさりげなく伝えてもらっても効果あるぞ? おっと、コウキに親しい知り合いなんぞあんまりおらんか……そもそも、コウキの力で台無しじゃしのぅ……」
ぐっ……確かにそうなんだが……もう少しオブラートに包んでほしい。
俺の力か……。
歩きながら地平線を眺めながめ──転生した時を────ふと思い出す。
◆◇◆
俺の名前は三浦光輝。
最後の記憶は────病院の天井だ。
幼い頃から体が弱く、病院の入退院を繰り返していた。
学校にもちゃんと行けなかった俺には友達もいなければ、恋人なんてもちろんいない。ラノベと漫画、アニメが友達────いや恋人だった。
だから、そんな俺に見舞いに来るのは身内だけだった。体の弱い俺は迷惑ばかり、かけていた記憶しかない。
そして、確か死んだのは──20歳の誕生日を迎える3日前だったはず。
俺は最後に思った……彼女ぐらいほしかったと。
そして──
──俺の目が閉じ……命が尽きた後、神様と会ったんだ……。
だけど……女神様じゃなかった。
筋肉をアピールした──
────上半身裸でブーメランパンツ一丁の通報されてもおかしくないような見た目の男の神様だ。
その神様は──
『童貞のまま死ぬのは辛かろう……わしが異世界に転生させてやるっ! 転生はわしの管轄じゃないが────童貞のままなど可哀想過ぎる! なんとかしてやる!』
そう言いながら男泣きし、ハグされた……。
泣きながら言うぐらい同情された事実に傷付いたが────夢にまで見た彼女が作れるかもと期待を同時に抱いた。
俺は聞いた。
「彼女作れますかね?」
『いや、無理だろ。鏡見てこい』
ひどっ!?
あまりのストレートな物言いに俺のハートはブレイク寸前になった。
確かに……確かに────俺は男前とは言えない……むしろ不細工だっ!
だけど、人を傷付ける発言はいかがなものだ!? さっきまで俺に同情してたんじゃないのか?
俺は心にダメージを受けながら、更に言葉を続ける。
「なら転生しても意味ないじゃないですか……」
『そこは────剣神である俺がなんとかしてやるっ! 格好良くなってやり直せっ! だから気にせず旅立って来いっ! そして彼女作ったら俺を崇めろっ!』
はぁ!? お前剣神なの!? 管轄違い過ぎるだろっ!?
それより──格好良くしてくれるの!? 異世界転生と言えば──ラノベみたいに無双とかできちゃうの!?
「えっ!? ちょっと待っ……」
もっと詳しく聞きたくて、ちょっと待ってくれと言おうとした瞬間に俺の意識は暗転した。
◆◇◆
そして──何も説明されずに、転生させられた俺は荒野で1人、景色を眺めている。
気が付いたら荒野で寝ていたのだ。
心境は捨て子だ。
俺は転生と聞いた時に子供からやり直すもんだと思ったが、どうやら違うようだ。
「此処が異世界か〜、何もないなぁ」
俺は立って呟きながら、視線の高さが違う事に気付いた。
自分の体を触ったりしていると……だいたい中学生ぐらいかな?
確かあの神様言っていた──管轄が違うって……なんせ────剣神だもんな!
慣れない事したから年齢間違ったんだろうな…………って納得出来るかっ!!!
しかも、どんな異世界なのかの説明もないしっ!
慣れないにしてもアドバイスぐらいほしかった……。
服装は────まぁ普通の中世とかで着てるような服に靴だな。なんか囚人みたいだな……武器になるような装備ぐらいほしかったな……。
それに魔物とかいるような異世界だったら最悪だなぁ……喧嘩すらした事ないのに戦うとか無理だろ。
戦えるようにしてくれてるんだろうか?
まぁ、せっかくの異世界だ────異世界のラノベやゲームみたいにステータスとか表示されるんだろうか?
「ステータスオープン」
俺の独り言は木霊する。
何も起こらず、少しずつ恥ずかしい気持ちが込み上げてくるが、ムキになり色々と声に出したり、心で念じたりと──
──しばらく、その場で厨二病を発症し続けた──
──その結果。俺の結論はステータスのない世界という事で落ち着いた。
この虚しさをなんとかしてくれ……。
あー人恋しいな……話し相手がほしい。
少し時間が経ち、落ち着いた俺は平常心を心掛ける。
まぁ、先行きが不安だが────彼女が作れるかもしれないと思えば希望も出てくるな。
そうだっ!
俺は────第二の人生で彼女を作るんだっ!
夢にまで見た彼女をっ!
「彼女作るぞぉぉぉぉぉっ!」
俺は叫んでみた。
誰もいない荒野に声は響き渡る。
さて、行くか……。
1人はやっぱり、虚しいな……。
とりあえず人探しをしよう。このままだと野垂れ死ぬ!
こうやって俺の異世界生活はスタートした。
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