「ドラッグストア、癒着、帰郷」

「ねぇ、知ってる? あたしらみたいの、アメリカじゃドラッグストア・カウボーイって言うんだってさ」

「なんだ、そりゃ」

「24時間営業のドラッグストアの回りにたむろする、行き場のない若者たちのこと。カウボーイじゃないのにカウボーイみたいな恰好のやつが多いから、そう言われるようになったんだって。あたしらはこのブセン-イブレンがたまり場だけどさ、アメリカじゃその同じ役割を担ってるのがドラッグストアだ、ってことみたい」

「なるほどな」


 俺たちは行き場所のない、都会生まれの都会の若者だ。大人たちの支配する上の社会からはつまはじきにされた、かといって愚連隊になるような度胸もない、なんということもない、チンピラにすらなれない、ただ、ダチとダベり合うだけの、無力な子供だ。


「最近、ツヨッチここに来ないね。バンドがうまくいってるのかな」

「逆だよ逆。目が出なかったから、故郷に帰ることにしたんだってさ。こないだキヨミから聞いた」


 故郷。俺らのような者たちに残された、最後の救済。その道の向こうに、本当に救いが待っているのかどうかはさておき。


「あたしたちってさー。十年後、どうなってんのかな」

「十年後どころか一年後だって怪しいもんだ。三年後にはきっとみんなバラバラだよ」

「そんなもん?」

「そんなもんだよ。切り裂かれた傷口が癒着することはあっても、最初から離れている者同士は、そう簡単にひっついてくっついたりしないんだ。俺たち、結局はこの誘蛾灯に誘い寄せられただけの、赤の他人なんだからさ」

「そんな言い方しなくたって、いいじゃん。あたしと二回も寝たくせに」

「む」

「あたしも近いうち、帰郷するかもしれない感じなんだけどさ。クロノ、行くとこないんでしょ? あたしと、一緒に来ない?」

「……考えておくよ」

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