「魔法、宗教、成功」

 近頃、オレンジ教という名の新興宗教団体が世を騒がせている。彼らはお揃いのオレンジ色の服を着る。彼らはオレンジやみかんを聖なるものだと言って食べる。白米を食べることは教義で禁止されているらしく、代わりに「みかんご飯」を食べる。みかんご飯とは、みかんジュースで炊き込んだご飯であり、愛媛の郷土食というかB級グルメというか、そんなような代物である。


 オレンジ教はまた、「今から53万年ののちに、地球にみかん星人が来訪し、衆生を救う」というどっかで聞いたような雑な教えを説いている。仮にそれが本当だとしてもそれは53万年後で、しかも衆生を全部救ってくれるという話らしいから毎日三食みかんご飯を食べて功徳を積む必要もなかろうものだが、ともかく彼らはそのように信じているのである。


 なんでこんな話をするかというと、俺の家の隣の家に住んでいる幼なじみで18歳の少女、白亜がこのオレンジ教に入信してしまったからである。最初、無理やりにでも脱洗脳させてやめさせようかと思った。でも、別に俺をしつこく勧誘してきたりはしないし、デートで着てくる服が上から下までオレンジ色になって、そしてたまに俺のために作ってくれるご飯のライスがみかんご飯になったことの他には、特に何と言うほどの変化もなかった。


 この教団には上納金とかそういうものすらない。なんか、教祖はもともと金持ちで、その人が道楽で始めたのがオレンジ教の始まりであるらしい。自分が魔法使いであると主張したりもしない。新興宗教がみんなカルト宗教なわけではなく、こういう無害な新興宗教は別に珍しくはない。らしい。


 俺の目下の悩みは、いま検討している白亜へのプロポーズが成功したら、俺は多分一生二度と白米は食べられなくなる、ということだけだった。どうしたもんかな。みかんご飯、嫌いじゃないけど、毎食ってのは、ちょっとちょっとちょっとなんだよなあ。

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