「突破、裏切り、恋愛」

 いちいち全部倒してはいられない並み居る魔王軍のモンスターたちを突破して、俺たち勇者パーティーは魔王城の城門の前に辿り着いていた。門は開いていた。というか、俺たちを迎え入れるかのように内側に向かって開いた。


「待っていたぞ、勇者クロノ。だが、お前たちはここで死ぬのだ」


 と、涼やかな声で魔王ハクアが言った。先代魔王の娘さんで、年は十六、種族は魔族である。それくらいの情報は下調べしてある。


「魔王ハクア!」

「なんだ、勇者クロノ」

「俺と結婚を前提に付き合ってくれないか?」

「は?」

「正直に言う。一目惚れだ。お前に惚れた」

「……えーとその。はい。えーと。あなたが魔王軍に入ってくれるなら、そういうのもいいでしょう。入りますか?」

「入る」


 俺は茫然としている仲間たちに剣を向けた。恋愛のための裏切り。勇者としてはやってはいけないことだと思う。だが、愛に勝るものなどどこの異世界にだろうとありはしないのだ。

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